メモというカタチで

 また久しくブログの更新を怠っていた。今年も残すところ10日のようだ。1年がどんどん早くなるということを1年ごとに痛感する。帰国してから約半年間の間に色々なことを経験してきたのだけれども、メモとしてしか残せないのはもったいないなと思うけれど、今更後悔してもしかたがない。

 帰国後に最も大きな活動としてあげるのは当然、DESIGNEAST04のマネージャー参加だ。昨年は大人たちの悪ふざけ粋な計らいで帰国ファンドが立ち上がり、参加することができたので、その恩返しも含めて、刺激的な時間を求めて参加を決意した。これまでは来場者、野良実況、公式実況委員会として参加してきたもののスタッフとしての参加は初めてだったので、これまでとは全く違う過ごし方となった。*1プログラムの調整、ホスピタリティ、ボラスタの運営など実行委員メンバーから学ぶことがたくさんあり、同時に、メンバーと自分の距離を痛いほど身に染みた。歯を食いしばり、今できることをしよう。今も日々を思い出しては身震いするほどだ。

 DESIGNEAST前後では、留学経験の話しを学内外でする機会を得た。名古屋の「Uzmin」、大阪の「The Place」で、留学経験を内在化することができた。大阪で開催された「おみやげ話 vol.1 〜ヨーロッパ編〜」では、欧州と日本の差異について議論するというよりは、共通点を見出す時間となったことがとてもよかった。話は飛躍するが、欧州のデザインが生活レベルで根付いているように日本では質の高い食事が生活に根付いている。ただデザインを消費するのではなく、料理(クッキング)を参考にデザインを生活レベルで考えられるようになるためにできることがあるだろう。参照先は海を超えた先にだけあるのではなく、自分たちの生活を見つめ直すことことでも見つけられる。出来るのであれば客観的に日本を見る時間があってもいいだろうと僕は思う。

 夜から朝まであれほど建築の話をしたのは帰国後初めてかもしれない。同世代の建築関係者が一同に浜松に集合し、UmakiCampを議論の中心に据えて建築のこれからについて議論し合った浜松建築ミーティング。(議論の内容はAARにてまとめられている。)参加者がそれぞれUmakiCampについて質問、意見をぶつけるということは、それだけ多様な評価箇所があるということにほかならない。建築の懐の広さを実感し、自分自身が建築に期待することを表明する機会となった。

 今はもっぱら修士研究に時間を費やしているのだけれども、自分の足りなさから不甲斐なくなることが多い。なんて知の世界は広く深いのだろうかと。この半年間を振り返るとともに改めて自分を奮いたたせる機会にしようと、決して現実逃避ではなく(笑)久々のブログ更新。あと2ヶ月間を有意義に過ごせるよう気を引き締める。

それでは、2014年もよろしくお願いいたします。少し早いですが良いお年を。

*1:来場者、ゲスト、メディア関係者、そしてボランティアスタッフ。ご参加いただいたすべての方々に改めてお礼を申し上げます。

名古屋での生活

帰国してあっと言う間に一ヶ月が経った。ゼミへの参加や家業の手伝いをしているため、名古屋と関西を毎週行き来している生活をしている。金銭的な理由で青春18切符を駆使し、ゆっくりと3時間かけて向かう。インターネットとデバイスさえあればちょっとした作業ができるのであまり苦にはならないが、その日の夜に食事の誘いと移動があるとなかなかつらいところがあるが仕方がない。

帰国の挨拶周りもある程度落ち着き、名古屋と関西それぞれで時間を取れるようになってきた。かれこれ7年ぶりにお盆を実家で過ごしている。周囲の同級生は働いているし、僕は関西にいるのでなかなか会うことができなかったが、今年は友人たちに会うことが出来る。友人の中には結婚し、子どもを授かった者もいる、ここぞとばかりにお互いの近況報告ができて嬉しい。あまりにも実家近辺の友人らと会わないと死んでいるらしいとかおかしな噂がたつので困る(笑)また東海を故郷とする方々にもお会いし、お互いのこれからについて少しばかり話を交わすことができた。

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そんな中、8月から始まったあいちトリエンナーレを見に行ってきた。お世話になっている事務所の方が、ヤノベケンジさんの作品である結婚式場が展示されている愛知文化芸術センターで結婚式を挙げられ、そこに参列させていただいた。太った女性のような姿をした更衣室から二人は現れ、シャンデリアの周りをゆっくりと歩き、サン・チャイルドの前に現れた。この会場では実際に複数組の方が結婚式を行うそうで、お二人はこけら落とし結婚式を執り行う。たくさんの報道陣がいるなか、お二人の堂々たる振る舞いに感動した。会場に居合わせた来場者からも祝福され、とても幸せに満ちた空間だった。

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文芸から近くにある広小路ビルで藤村龍至さんが出展している「あいちプロジェクト」がある。中京都都庁舎+東海州州庁舎案の作成をしながら、公共建築の設計プロセスを在り方を問うこの展示は、人を変え、模型を作り続け、延々と変化をし続ける実験的な作品だ。最終成果物そのものよりも見立てに意味がある。行政と市民と建築の関係を、あの展示空間につくられた見立てから読み解くことが出来るだろう。政治的なプロセスをベタに、積極的に設計手法に取り込む姿勢がソーシャル・アーキテクトと呼ばれるこれからの建築家たちに求められる資質なのだろうか。鶴ヶ島プロジェクトから続く活動をここでさらに発展させることが出来るのか、非常に興味深い。

小豆島「観光から関係へ」は未来のデザインミュージアム

27日に日帰りで小豆島へ大学の友人ら四人で行ってきた。僕は往復3,300円のチケットを購入し、夜行フェリーを神戸港から乗り込んで高松経由で坂手港についた。雑魚寝スペースは意外と明るいし、ジャンボフェリーの歌がうるさいので(歌を覚えちゃう)アイマスクと耳栓がある方がいいかもしれない。翌朝、フェリーから降りるとヤノベケンジの作品が迎えてくれる。観光案内所でうまいことレンタカーを借りることができ、朝便で来る友達を待ってる間に島をドライブ。祖父母は小豆島を観光地として捉えていたようだが、両親や僕ら世代はそうでもない。むしろ、最近の直島のほうが認知度が高い。やはり観光客は減少しているのだろう、ドライブ中に廃墟と化したホテルがいくつかみつかった。

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[観光案内所とei cafeのある建物外観]

友人らが到着する頃、坂手港の観光案内所にもどる。瀬戸内国際芸術祭2013の出展プロジェクト「観光から関係へ」から、UMA / design farm + MUESUMが手がける観光案内所とCreators in Residenceの展示とショップが一階に、そして二階にはアーティストの活動スペースとei cafeがある。これまでの参加クリエイターらの活動は、一階に写真で展示されている。(もしかしたら別のものもあったかもしれない、というのも、ショップも手作り感が溢れていたので。)ヨソモノの視点で地域の人を観察し、つぶさに拾いあげていく。外からコンテンツを持ち込むのでなく、中からよいものを発見し、コンテンツとして仕立てていく。そこにこのプロジェクトの面白さがある。

http://relational-tourism.jp/wordpress/wp-content/themes/frame/image/title.gif
http://relational-tourism.jp/
ー観光から関係へ。
名所をめぐるだけの一度限りの「観光」ではなく、
人と人が出会うことで生まれる「関係」にこそ、
新の豊かさへのヒントがあるのではないでしょうか?
(序文より)

僕らが回った箇所では、どこも地域住民がスタッフとして誇らしげに"プロセス"と展示を語る姿が印象的だった。工繊で教えていただいた岡田栄造先生と清水久和さんのオリーブのリーゼントを見ていると、まっくろに日焼けしたおっちゃんが作品と作家らの話を教えてくれる。聞いてもいないのに、「岡田は今度家族で泊まりで来るぞ!泊まるのはそこの家や。」と(笑)それは家族が増えた義父母のようだ。新しい家族を迎え入れ、親戚と話しているような関係がここにあるように感じる。他の作品でも同様に、スタッフとして地域住民の方々がしっかりと話を聞かせてくれる。きっと、また秋には沢山の新しい話を聞かせてくれるのだろう。

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[umaki campを境内から]

先述したように、小豆島の「観光から関係へ」で示されてる展示は、作品を外から持ち込むのでなく、中にあるコンテンツを丁寧に拾うことで作られている。デザインミュージアムがない日本でこの眼差しから"デザイン"が発表されていることがすでに奇跡的だ。5年は先ゆく仕掛けだと思う。フィンランドで帰国前に「未来のデザインミュージアム」に関する展示がされていた。歴史採集だけではなく、未来の掲示もデザインミュージアムに課された仕事であるという。フードデザインや新素材を文化や持続可能性から、アクティビズムやコミュニティを強度の指標として展示されていた。残念なことにまだデザイミュージアムは日本にないが、なんと、ここ小豆島に未来のデザインミュージアム的な展開が起きている。

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[島民とstudio-Lによる醤油倉の展示]

grafと醤油通りの展示からは民藝運動の系譜を強く感じるが、UMA / design farm + MUESUM、studi-Lからは工芸品だけでなく工芸的なものとして島民の生活をともに展示しているところが民俗学的でもあるように感じる。ここでデザインが意味するところは何かと考えると、発見→理解→更新→共有の手続きを民主的に進めるための道具(Tool kit)ではないだろうか。つまり、デザインをすることで知の資源化と共有化を図る。その点からここにあるデザインは最終成果物ではなく、記録的成果物、置き石のように過去/未来をつなぐ関係となっている。島民も観光客も参加者として、デザインを通して合理的に新旧の情報を統合し、小豆島との関係を構築していく。ただの広告とは大きく違う。時代の転換期に新たな実験的実践は地方から始まっている。この場所で、これからのデザインの価値を感じることができるに違いない。

関連記事:23: ヘルシンキ: スオメリンナ島、デザインミュージアム、建築ミュージアム - ケンチククラブ

25 日本へ帰国しました

約一ヶ月に渡る帰国前旅行を終えて、帰国しました。これから卒業までは修士論文の執筆や研究室の活動や個人活動に従事していこうと思います。ただ、修士号取得後は海外での活動を目標にしたいと思っています。まずは目下、大学への提出資料作成を済ませる予定です。

この旅行でお会いしたすべての人に「ありがとう。」と伝えたいです。

24 タリン: 旧市街地をぐるり

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ヘルシンキから高速フェリーで約2時間、朝市は予約できなかったので9時半発のフェリーに乗り込みタリンへ。下調べをほとんどせずに来てしまったので、船の中で旧市街地を中心に調べてみる。結果として、ウロウロしながら観るのにちょうどいいサイズだと判明。マップを頼りに歩きまわることにした。

http://instagram.com/p/bd3ZbXqe34/
街中では中世の民族衣装を着た人たちが迎えてくれる。女性の衣装がとても可愛い。アーチェリーを出来るところがあって、そこの女性らはまるで妖精エルフのようだった。中にずんずんと進んでいくと、この日は子ども向けのワークショップをたくさんやっていて写真のように木工をするところ、鉄を叩いて釘を作る、絵を描いて旗を作る、羊毛フェルトを使った小物、コスプレやフェイスペインティングをしているところに出くわした。たくさんの観光客と少しの現地の子どもがいてとても賑やかだった。

http://instagram.com/p/bd3f7bqe4B/
高台まで行くと街を一望できるところもある。街中にこうした組積造の建物に寄生するような形で木製の階段やはしご、廊下があるのが面白い。一部荒廃したところもあるが、概してそのままの姿を残そうとしているように見える。それは建物だけでなく、衣装や食事、その作法も含めてだ。やはり植民地支配されていた歴史があるだけに観光資源の「保存」だけでなく、自立の意味もあるのだろうか。