自作 水タバコ(シーシャ)をつくろう #shisha
2014年12月、太陽が6時間しか顔を見せない真冬のフィンランドを抜け出し、太陽を求めて向かったエジプトの海浜リゾート地ダハブ。日中の気温は26度ほどになるけれど、乾燥しているので過ごしやすい。ヨーロッパからも寒さを避けるように人びとが訪れるまちダハブで出会ったのが水タバコです。紙巻タバコとは異なり、水をフィルターにすること、煙草の葉ではなくさまざまなフレーバーを楽しむこと、それが1時間程度続きます。ゆったりまったりとするにはもってこいの嗜好品。
(参照: 水たばこ(シーシャ) | JTウェブサイト)
ダハブでは、午前中にスキューバダイビングの講習を受け、お昼を受講生たちと近くのサンドイッチ屋で食べ、午後からはカフェで本を読んだり水タバコを吸っているとネコが膝に乗ってくる。猫をなでながら水タバコをくゆらせ、波の音をBGMがわりに日本の家族に向けて絵手紙を描く。なんとも贅沢な時間の過ごし方をしていたな〜と仕事に追われる今、あの日のことが思い出されます。滞在中はほとんど毎日楽しんでいた水タバコ、帰国前に道具とフレーバーを一式を購入し、フィンランドへ持ち帰りました。
(写真はレストランでお茶をしながらシーシャを楽しんでいた私 Photo: Satomi Koyanagi)
日本へ帰国してからは修士論文の執筆やフリーランスとして活動し始めたこともあり、忙しい日々に追われてほとんど出番がありませんでした。ある時、ふとその存在を思い出したのですが、フレーバーは古くなっている。そこからシーシャカフェを探し、仕事終わりなどのタイミングで2週に1度くらいで通うようになりました。お店の方にミックスしてもらい、行くたびに少しずつフレーバーを変えているので飽きることなく半年くらいお邪魔しています。そんな折に、ふと「原理は簡単だから自分でもつくれるのかな…」と思うようになり、仕事の合間に情報や部品を集めること1ヶ月。ようやく試作品が出来上がったので公開します。
もちろん水タバコもあなた、副流煙によって周囲の方の健康を害する恐れがあります!また、未成年は喫煙できないので、絶対にマネしないように!
街へ関わるきっかけを探る「ごえんの投票」
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「多数決を取ります」なんていうフレーズを最後に聞いたのはいつごろだろうか。社会に出てからは30人程度が参加した会議で多数決による決定というタイミングはほとんどない。そこには意思決定者である社長や代表がおり、その人の判断に委ねられるため提案と調整で進行していくからだ。100人が反対しようが経営判断で実行に至ることもあれば、その反対もまた然り。その結果によっては意思決定者の首がすげ替えられることもザラだ。
社会に出てから私が最も身近な「多数決」は選挙だろう。(家族間や友人間での多数決は人数が少ないので割愛する)。大きな声で繰り返し叫ばれた名前と政治家としての良し悪しなど分かるはずもないのだが、なんとなく良さ気な人を選んで名前を記入して紙を箱に入れる。年々下がりつつある投票率は置いておいて、関節民主主義を掲げる我が国では、なんとなくの票と思いのこもった票と無関心な表にはならない意思表示が入り乱れる。「清き一票を!」という叫び声に対して、「この一票がなにかを変えることはないだろう」という半ば諦めムードが漂うのだが、他にやることもないなと投票しないのもバツが悪いかなと投票所へ向かうのだ。
1票を投じることに虚しさを感じてしまうのは開票速報を見ている時だろうか。私自身はアルゴリズムで判明した思想が似ている政治家に投票することにしているのだけど、その人の顔も経歴もわからないけれど1票の行方を少しだけ気にしてテレビを見ている。そしてまったく別の名前の人が当選したところで「まあ、そんなもんか」と切り替えて当選した政治家の行方も大して追わず、選挙でわずかばかりうるさかった非日常から少しだけ静かになった日常にまた戻っていく。
このように不特定多数の利害関係者同士による政治的な意思表示として選挙はほとんど機能していない。首がすげ替えられても代わり映えしない状況という雰囲気はただカウントされるボタンを1度押しているだけにすぎないと感じてしまうからだ。なんとなく1を押す回数が多いボタンのカウンタは多く回り、ボタンを押す私たちは結果や過程に介入することはできない仕組みとなっている。なんとなく辛いてなんとなく楽しい日常を、少しだけ楽でもう少しだけ楽しくするために、どうしたら私たちはボタンを押すことができるのだろうか。
そんなことを考えながらARIMATSU PORTAL; PROJECTで制作したのがこの「ごえんの投票」だ。この投票箱は地域のお祭が開催されている期間中に、通りに面して設置され、まつりの来場者や地域の住民によって投票が行われた。項目は非常にシンプルだ。「わたしが有松でしたいことは」に対して、「暮らすこと」「働くこと」「紹介すること」「遊ぶこと」という4つ項目のいずれかに投じてもらう。投票に参加することで意思表示がまちの方向性を方向づける(ほどのちからはもちろんないのだが)きっかけになるかもしれない。また、この投票箱はお祭りが終わった後も継続して1週間程度設置され続ける。投票結果を見る人たちは、有松という地域に対する期待と自分たちの日常にどのような折り合いをつけていくことができるのか判断しなければいけないことが突き付けられる。問うことで問われる構造を持ったこの装置は、観光戦略を掲げる行政に対する不満を解決することは不可能で、市民対市民の利害関係の調整が必要であるということを露わにする。その時に、エリア内外の市民たちはどのような意思表示をするのか、この結果はどのような行動を引き起こすことに繋がるのかを考える小さな社会実験だ。
この掲示板を貼った背景のひとつには、有松というエリアが重要伝統的建造物群保存地区として選出された*1ことがある。かつて産業地帯だった有松が今では観光都市として転換を迫られている。諸手を上げて喜んでいる人もいれば、このエリアで日常を過ごしていた人からは不満の声も少なくない。また、有松がある緑区は名古屋市においてベッドタウンで現在も人工が増え続けているエリアで、日常を過ごす人がとても多い。そうした中で非日常的な観光都市化を市民らが本当に迎えられるのかは未だ判断がつかない。
さて、実際に2日間に設置していたところ、投票数だけを見れば「遊ぶこと>暮らすこと>紹介すること>働くこと」の順番となった。お祭りだったのでなんとなく想像通りだろうか。一方で僕はこれだけ遊びたいというニーズがありながら、遊ぶ場所は現在の有松に多くないなかで働きたいという意思を持つ人がこれほどいたことに驚いた。需要と供給のバランスを考えるとビジネスチャンスはあるのだろう。
さて、このような結果となったのだが街で暮らす人々はどのような判断をするだろう。高齢化によって暮らしにくくなった古民家を次の住民や事業者に貸すことなどはできるのだろうか。あるいはこのニーズに応えるサービスを提供する事業者はでてくるのだろうか。あるいは愛着が高まり手放すことを考え直すだろうか。今年の秋には重伝建に選ばれたことで式典も予定されていると聞くこの有松で、どのような意思表示をする人々が出てくるのだろうか。この小さな実験が意思決定にどのように作用するのか、主体的に街へ関わることを選択する人が出てくるのだとしたら楽しみでならない。
事務所のこと、有松のこと
続「仕事をしない日」シャツが出来るまで。
「え、パンチくんって2コ下だったの!?3歳くらい年上だと思ってたわ!」今年に入ってからこのやりとりが3回ほどありました。老け顔の星に生まれた私は、思い起こせば、中3の15歳から社会人と間違えられ始めたのです。大須や矢場町へ買い物に出かけると「今日はお仕事お休みですか?」とショップスタッフから声をかけられ、「いえ、まだ学生です。」というやりとりに慣れはじめた頃、まさか『仕事をしない日』と刺繍されたパーカーを来て過ごす将来が訪れるとは予想だにしていなかった。そして今回、パーカーに続いて『仕事をしない日』シャツが届いたので報告をしたい。
「仕事をしない日」パーカーの反響
「仕事をしない日」というテキストが浮かんできた理由は前回のブログでも書いたように、大学院で働く場所の研究をしていたことやフリーランスというライフとワークが曖昧な生活をしていることが影響して浮かんだものだ。UNIQLOの素晴らしいマスカスタマイゼーションサービスをブログにまとめたところ、Gunosy砲*1とFacebookのシェアが影響してPVが大幅に増えたことに驚きました。何人かの人は文面をそのままとり「フリーランスの仕事は大変?」や「そのパーカーを着る日なんてあるんですか?」などと聞かれたり、さらには「仕事は選ぶな。」というありがたいご批判も頂戴しております。
僕は仕事をしない日パーカーは仕事をしている日にも着ています。仕事をしない日パーカーを着て打ち合わせをしたり、仕事をしない日パーカーを着てドキュメントを作成していたり、仕事をしない日パーカーを着て午前5時まで展示の設営をしていたり。もちろん仕事をしない日に仕事をしない日パーカーを着ていることもあります。先日、久屋大通公園のフリーマーケットに出向いた時は、「今日は仕事がお休みなんですか?」と待ってましたと言いたくなるようなコミュニケーションを取ることも出来ました。仕事中に来ていることは労働時間が伸びがちな日本の労働環境へ皮肉を込めているとはいえ決してひとりデモやプロパガンダのたぐいではなく、NEW YORKとかBROOKLYNと書かれたスウェットと同じような感覚で着ています。
パーカー、そして、シャツへ
パーカーが出来たことやPV数が伸び、作りたい欲求がむくむくと膨れ上がってきました。ワークキャップやネクタイもいいかなと考えていたのですが、まずはもともと考えていたようにオックスフォードシャツでつくってみようと。今回は自分のためだけにつくるのではなく、周りで「欲しい!」と声を上げてくれた人の分もつくることにしました。4人の先輩・友人が手を上げてくれたので、自分の分も含めて6着を注文。(注文の仕方は前回の記事を御覧ください。)
そして今日到着をしたので、シャツ(ブルー・ホワイト)と前回のパーカーを一緒に並べてパシャリ。写真ではわかりにくいけれど、微妙にフォントの太さが異なっていて、シャツのほうが少し太いのが気になる。もしかしたら素材が違うから太くなっているのかもしれないし、発注先の工場が異なるから微妙に刺繍の設定が違うのかもしれない。フォントはどちらも楷書体なので、ほとんど全く同じような刺繍が出来上がるだろうなと想像していたので思わぬ発見だった。
マスカスタマイゼーションの限界
先のパーカーとシャツでの刺繍されたフォントの違いのように、マスカスタマイゼーションは企業の見えない権力に制約される。用意された選択肢の中から選び、発注することしか出来ないので、『仕事をしない日」』シャツに適した刺繍の調整をすることが出来ないことが課題として上げられる。その分コストが抑えられているとはいえ、システムにデザインが委ねられてしまい、創造性を伸ばすことが出来ない。その点では無印良品の刺繍サービスの方が良く出来ているかもしれない。
もう少しフォントを細くしたいとかニッチなニーズ(デザイナーとしては当たり前の欲求だと思うけど。)への対応は結局できていないので、もう少しものを作っていくなら刺繍マシンを使える環境を手に入れるか、柔軟に制作の依頼を受けてくれる業者を探すほうが良いのかもしれない。何より作り手の顔が見えるので、刺繍ミシンをすんげー使いこなすおばちゃんがいたら僕は「ああして。こうして。」と相談できるおばちゃんに頼みたい。でも、見つける・出会うのが難しい…。
次は別のサービスへ!?
2つ目の仕事をしない日シャツが手元に届くと、やっぱり続編をつくりたくなってくる。先に上げたワークキャップの他に、日めくりカレンダーもつくりたい。そして、出来る限り既存の仕組みに相乗りするかたちで、小ロットのものづくりをお願いしたいと考えている。個人のものづくりではどうしてもイニシャルで出せる予算はわずかだ。また、わずかでもお金がちょこちょこと入ってくるような仕組みをいくつか持つことを考えているので、欲しいと手を上げてくれ人の分だけ制作することが出来るというのはとても心強い。さて、次は一体どこで何をつくろうか。
「仕事をしない日」パーカーが出来るまで
「仕事をしない日」パーカーとは、読んで字のごとく胸元に刺繍で「仕事をしない日」と入れているだけのパーカーだ。このパーカーを着ているだけで仕事をしない日を宣言できるので、ビールをそこいらで飲んでいようが、お店に遊びに行こうが、友人と会っていようが誰にも文句を言われない。モバイル機器の発達によって誕生した小忙しい現代人にとっては必要なオフを察してもらうコミュニケーションツールとして制作した、なんてことはまったくない。実はコレ、ユニクロで作ったものなんです。
「仕事」という言葉について
刺繍ミシンで『仕事をしない日』ってシャツの胸元に入れたいんですよね…
— ynbr/pnch (@ynbr) 2014, 9月 23
そもそものきっかけはこのツイートなんですが、「仕事」という言葉と刺繍に着目したのには理由がある。話はさかのぼるが、このツイートをした時期も僕は「小豆島建築ミーティング vol.2」へ参加するために小豆島に渡っていた。同じく、アート小豆島・豊島2014のプログラムで滞在していたデザイナー 吉行良平さんがあるTシャツを着ていた。白いTシャツの胸元には、彼のデザイン事務所の名前でもある「吉行良平と仕事」と刺繍が施されていた。うーん、かっこいい。「仕事」という言葉になんだか惹かれていた。「仕事」という言葉への愛が屈折するかたちで、「仕事をしない日」へと結びついていった。
刺繍はユニクロで
「仕事」という言葉からはホワイトカラーがイメージされ、シャツに皮肉ぽく刺繍を入れようと考えていたのだけれど、どこで刺繍を入れたらいいのかわからない。町工場で野球とか作業着に社名や名前を入れているところをテレビで見たことがあったけれど、自分の生活圏で刺繍をやっているところなどまったく知らない。インターネッツで「個人 刺繍 名古屋」と検索してみたところ、持ち込みができるところもあったけれど、ロット数が必要みたいだったり、よく分からなかった。そういえば、無印でレーザーカッターとかコンピューターミシンとかやってたなぁ、と頭をよぎった頃、友達から「ユニクロ・カスタマイズ」というサービスを教えてもらった。
ユニクロ UNIQLO CUSTOMIZE|トップ -ユニクロカスタマイズ[customize.uniqlo.com]
あの世界的なファストファッション企業・UNIQLOが手がける、自社製品をオーダーメイドでデコすることができるものだ。プリントや刺繍などをUNIQLOで販売するものに施し、なんと1つから商品を購入することが出来る。
デザインの選択肢が少ない
画面右上にある「DESIGN デザイン作成」をクリックすると、刺繍やプリントから選ぶことが出来る。今回は当然刺繍だ、間髪入れず「刺繍」をクリックするとまずは素材となる商品を選ぶ画面となる。パーカーが可愛い。シャツも皮肉で面白いけれど、ゆるめのパーカーにしようと数秒で心変わりをし、赤色の「刺繍する」ボタンをクリック。(まだ刺繍ができるのはシャツやカーディガンに限られているが、いずれはパンツとかアウターにも出来る日が来るのだろうか。)
すると刺繍のバリエーションを選ぶ画面となる。テキストのみを刺繍する「ワード」とワンポイントイラストと短いテキストを入れる「ワンポイント」だ。もちろん、「ワード」を選び、10文字を2行まで入れることの出来る「小・小」をクリックし、ようやく画像のような入力画面となる。
変更できる要素は、テキスト・フォント・文字色の3項目のみ、場所は左胸に固定されているので、1行目か2行目のいずれかに入れることで上下するくらいしか出来ない。僕は一行目に「仕事をしない日」と入力し、和文フォントの「楷書体」で、文字色は「ブラック」を選択した。「このデザインで注文する」をクリックし、スマートにカードで支払いを済ませ、発送先を入力する。
加工賃はロット数によらない
注文から到着まで約10日間かかるが、焦る必要はない。気長に到着を待つばかりだ。刺繍の加工賃は+¥1,140で、これは商品数を1個だろうが100個だろうが変わらない。もともと小ロットを想定しているのだろう、個人ユーザーにとってはとても嬉しい。刺繍は名入で¥500のところもあるので、10文字でこの値段は良心的なものだと思う。また、UNIQLOというプラットフォームを使っているので、サイズもSMLと選ぶことが出来、値段も変わらないのが嬉しい。ただ、この刺繍はどこでどうやって制作されているのかわからない。この値段で制作できるのはなんでだろうか、コンピュータなのか人力か…。
しっかりとしたクオリティ
UNIQLOの製品クオリティをもったまま、刺繍のされたパーカーが届いた。ぱっと見の印象は悪くはない。ほつれていたり、ずれていたりとすぐにダメだなと思うほどのものはまったくない。ここのクオリティー管理もUNIQLOがやってるのだろうか、興味深いところだ。お試しで制作してみたのだけれど、これならシャツに刺繍入れてもよいかもしれない。
オリジナルのテキストが刺繍で入っていると、パーカーの紐やカタチがUNIQLOのものだとわかるようなものでもなかなか気が付かれない。どこのブランドですか、どこで売ってるんですか、いくらですか、と聞かれるのが面白い。5千円弱のUNIQLOのパーカーには見えないらしい。そんな反応が来るとは思わなかったので、ちと嬉しい。
この値段でふざけた刺繍を入れた製品クオリティを保つ自分だけのものが手に入るのは非常に嬉しい。愛着も湧くし、これから生まれるコミュニケーションもある。仕事をしていない日に着てても当然いいし、あえて仕事をしている日に来ていくのもまたいい。仕事をしない日シリーズは今後も作り続けていきたい。