超群島/HYPER ARCHIPELAGOをハッカー文化をもとに考えてみる。

「ハッキング可能性」「脱中心」というキーワードでこの展示を振り返ると妙に納得がいったので記録として残しておこうと思う。あと数日で展示も終わってしまうので見れなかった人はこちらの会場レポートから少しでも体験していただければと思います。japan-architects.com: 「超群島 - HYPER ARCHIPELAGO」展レポート
http://world-architects.blogspot.jp/2012/03/hyper-archipelago.html

「3.11という歴史的事象から1年たった時を迎え、今後日本が目指すべき道筋に必要なグランドデザインや意思決定のイメージを提示しようとする 『アーキテクト/アーティスト』たちに問いかける展覧会。日本という国の存在をメタレベルで捉え、新たなインフラのネットワークから立ち上がる『超群島 Hyperarchipelago』ともいうべき構造を浮かび上がらせることを試みる。」
Exhibition Information
「超群島/HYPER ARCHIPELAGO」
会期:2012年3月11日(日)〜4月16日(月)
時間:11:00-20:00
会場:EYE OF GYRE
参加作家:磯崎新、スプツ二子!、teamLab、大庭大介、石井七歩、SAM [田尾松太+井口美香]、キュルル feat. チハルチロル、dot architects+水野大二郎、403 architecture[dajiba]、mashcomix+TEAM ROUNDABOUT、藤村龍至(GYRE公式サイトより)

ストレートに震災と対峙した作品も展示していましたが、そうでないものもあり、非常に含みのある展示だと感じた。会場を何度も回り作品を見ながらその背景にあるワードを拾い上げていくと、『反復性』を出した作品が多いことがわかる。点描、都市様、歩行、日常、ピース、模様…。反復(日常)から徐々に侵食し、新しい日常を作っていく、そんな様子を想像させる作品が多い。ただ、この"新しい"日常の作り方が非常に示唆を含んでいる。今あるシステムを改善し続けていく内向きな自律進化ではなく、自律進化を元に他者(システム)へ働きかける。そしてその介入からシステムがさらに進化をしていく。さらにそこへ侵食。イタチごっこのそれだ。n次進化をお互いがしていき、どちらが中心でどちらが周辺なのかその存在が混在化していく。
例えば、teamLabは似たような街の画像を沢山投下し、Googleの画像検索に都市を創造する。Googleの持つランキングシステムによりその画像群は姿を変え、東京の様相の変化を感じさせる。東京の反復性と改変性が見事に表現されている。同時に展示されているプロセスで、画像検索プログラムの改変とそれへの対応の苦心が記録されているところも非常に面白い。パターンの発見→システムの改変をくり返し作品強度を高めていく。
大庭大介氏の作品は、淡いパール素材を用いて点描で描かれているため、作品は鑑賞者の立ち位置で表情を変える。ある一定を集中して見ることで一つ一つの点は浮かび上がってくるが、その周辺の点は消えてのっぺりとした淡い色味の面と反射による視覚刺激が発生する。この作品には止まった時間がない。鑑賞者の視覚を絶えず絶妙に刺激し、作品の輪郭をぼやかしていく。
他の作品でも同様にこうした印象が続いた。こうした印象は昨今のソーシャル・ネットワーク・サービスの印象とも繋がる。例えば、FacebookTwitterはそれだけのコンテンツ力を持っているが、それ以上にアプリや連携できるサービスの介入もその魅力の一つである。ソーシャルゲームはまさにそうしたSNSとの連携が強く求められ、さらにその利用者がいないとこうしたサービスは続いていかない。パッケージングしたサービスだけでなく、動的で曖昧な主体が多数存在し(日常を創造し)ている。持ちつ持たれつの関係を加速させ、ぼんやりとした集合体を作り出す。その密度を高めていく仕組みや仕掛けにソーシャル時代の作品として面白みがある。常に未完で在り続け、常に完成を求め続けるその姿勢はハッカー文化と非常に親和性が高いものがあるでしょう。
だからこそスプツニ子!氏とdot architects+水野大次郎氏の作品も高く評価したい。モノとしての完成度だけでなく、その仕組みや仕掛けの多様さが大変魅力的である。その向こうにある理想とする世界に向けてハッキングを繰り返し仕掛けていく。手段としての作品は既存の状態にハッキングを仕掛ける道具であるが、状況の変化によってそれ自体もハッキングされる可能性を含んでいる。モノであり、システムでもある。
そういう意味で参加された作家はみなソーシャル時代のアーティストであり、アーキテクトであった。