読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

サスティナブルデザインの持つ批評性ってなんだろう。

留学

どんどん日が落ちるのが早くなるフィンランド。16時を過ぎるとほとんど20時頃のような空模様です。夜は好きだけど、暗い日中には慣れません。こうした気候の国にいると『明るさ』に敏感になるのも分かります。家に居ながらゆったり夜を過ごすささやかな楽しみがフィンランドにはに合ってるなと思います。アアルトの設計する建物には光と生活の時間が絶妙に織り込まれていると感じます。

フィンランドとサスティナブル政策

3週間前からからAalto Univ. School of Design, Department of Creative Sustainabilityの講義をとっていました。このCSもIDBM同様、アールト大学統合後にできたデパートメントで今年(2012)で三年目になります。背景には当然世界的な環境問題があるのですが、フィンランドは資源が乏しいのでそれが影響しているようです。特にエネルギー輸入依存率が高く、国としてもこの問題に高い意識を持って取り組んできています。フィンランドは最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を2020年までに38%を目指していて、これはEUが20%を基準にしてるのでとても高い数字であると分かります。また、エネルギー消費の半分がパルプやエレクトロニクスなどの産業分野に割かれているので、デザイナーがライフサイクルに高い意識を持って取り組むことが求められているのです。

サスティナブルデザインは誰が教えられるのか。

サスティナブルデザインという領域やそれを学際的に学ぶことが出来る大学はまだ多くはありませんし、それ自体を教えられる教授自体も多くないのが実状です。工学、生物学、経営学など多くの学問が関わっているため積極的に分野を超えた研究をされている人が必要となります。そのためか、僕がとっていた"Sustainable Product and Service Design"という授業はオムニバス形式でCSの教授+Ph.Dと外部からのレクチャラーで構成されていました。レクチャラーは大学の環境管理課のスタッフ、コ・デザインの研究者、コミュニティデザインを実践する研究者、環境コンサルタント、経営コンサルタントといった方々で構成されていました。前半四週間のこのコースはレクチャーベースで『サスティナブルデザイン』をデザイン・工学・ビジネスの観点から体系的に学びます。僕は取らないのですが、後半四週間ではより実践的なプロジェクトベースドラーニングが行われるそうです。前半のレクチャーではIDBM同様にシステムやサービスを中心とした思考法の重要性が繰り返されます。現在、市民にとってはプロダクトレベルでしかサスティナビリティに関与することは難しいのですが、製造以前の仕組みを考えること、使用後の3Rを踏まえた仕組みを作ることでより大きなサイクルの中で関与することが出来ると繰り返し説明されました。サスティナブルデザインはメタ・デザインで意匠的な部分だけでは語ることができないのです。なにせ、『ものづくり』をしている時点で沢山のエネルギーを使っているのですから。

サスティナブルデザインの批評性とは。

そうしたシステム思考の重要性を繰り返されましたが、わりと時間を割かれたのがサスティナブルデザインをどう評価するのかというところです。リサイクル品を製造するのに意外とエネルギーやコストがかかるというような話は聞いたことがあるのではないでしょうか。なんでも再利用するばいいわけではないし、バイオマテリアルばかりがいいわけではないのです。そこで紹介されたのがMIPS(Material Input Per Service Unit)*1です。これはプロダクトの部材ごとに必要なエネルギーを1kgあたりに換算して数値化するものです。椅子で例えると、肘掛け、背面、座面、脚といった組み立てパーツがあるとします。それらに利用されている素材と重量から排出されるエネルギー量を弾きだし、それらを足しあわせて椅子の重量で割り、椅子1kgで空気は◯kg、水は、生体素材は、とどれだけ消費しているのかを算出します。こうした数字にすることでプロダクトがどれだけ環境にいいのかを理解するわけですね。
このグループワークのあとに、「MIPSで測れないものってなんだろうか。」「デザイナー、利用者にとっていいプロダクトって何?」という問が出されました。生徒からの回としては、快適さ、改変可能性、愛着、かっこよさ、安全性、アイデンティティは数字化されないとありました。快適であったり、リタッチャブルなプロダクトであれば長い時間楽しんで利用することができたりしますし、リユーサブルなものは次のマテリアルとしても利用することができます。単純に数字で評価できないプロダクトやサービスをいかに作っていくことが出来るのかが重要なのだと分かります。短期的なプロダクトの価値と長期的な価値をモノづくりレベルから以下に統合して考えることが出来るのか。さらにそうした長期的なライフサイクルとなったときにデザイナーや企業はどうやって利益を出し続けていくのかを考えないといけません。これまで以上に物の消費が少なくなった=サスティナブルであるというには難しい現状があります。
『サスティナブルデザインはメタ・デザインである。』つまり、サスティナブルデザインはプロダクト・サービスを通じて教育、文化レベルでその力を発揮するのでしょう。現状のままの消費量では地球は持たないことは言うまでもありません。生活を変えていかないことにはこの問題は解決できないのです。そのときにサスティナブルデザインは生活の意識を切り替える、ふるまいを変えるきっかけをどれだけ多く持つことができるのかという点で批評性を持ちうるのではないでしょうか。それは決して過去に戻ることでも、新しいものを作らないことでもないと私は思います。実践的に学ぶ必要がある思考だと強く感じました。

参照

Finland's national strategy for sustainable development - environment.fi
http://www.ymparisto.fi/default.asp?node=9732&lan=en
World-class sustainable solutions from Finland
http://www.tekes.fi/u/sustainable_solutions.pdf
Socially Sustainable Finland 2020 Strategy for social and health policy
http://www.stm.fi/c/document_library/get_file?folderId=2765155&name=DLFE-15321.pdf
Developing a Framework for Mapping Sustainable Design Activities
http://www.drs2010.umontreal.ca/data/PDF/033.pdf
Empowering Users To Become Designers: Using Meta-Design Environments to
Enable and Motivate Sustainable Energy Decisions
http://l3d.cs.colorado.edu/~gerhard/papers/2012/paper-PDC.pdf


Love Earth: Design for Green Living

Love Earth: Design for Green Living


Love Earth: Design for Green Livingなぜか上手く表示されないのでリンク→http://goo.gl/aBFLM
Design Education for a Sustainable Future

Design Education for a Sustainable Future

*1:Material input per service unit - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Material_input_per_service_unit