創造系不動産 高橋寿太郎さんレクチャー覚えがき

昨日、工繊大にて創造系不動産 高橋さんの公開レクチャーが行われた。デザイン経営工学の学部生1,2回生が受講するデザインマネジメント授業の一環で外部講師として招かれていた。

f:id:pnch:20140117122634p:plain
創造系不動産株式会社


講義をtwitter実況しようと思っていたのだが、wifiを忘れてしまったためメモ帳に記入していた。ダウンロードはこちらからできるので興味がある人はどうぞ→ 140116_創造系不動産_高橋.rtf - Shared

 工繊大を卒業し、建築設計事務所に7年勤務し、4年間の不動産業へ従事する中で独立を志された高橋さんは、大学同期にあたるEIGHT BRANDING DESIGNの西澤明洋さんによるセルフブランディングから創造系不動産のコンセプトを創出する。そのコンセプトは「建築と不動産の間を追求する」を不動産業として目指すことだ。当初は建築家としての道を志されたが、ニーズやこれまでの実務経験を活かしたビジネスチャンスについて議論した先に創造系不動産が生まれたようだ。創造系不動産は建築家との協働で、住宅を手に入れるまでのプロセスを再思考している。

 講義は学生とのディスカッションから「建築と不動産」「デザインとマネジメント」の違いについて話を進めていく。30名程度の学生が参加し、それぞれの領域に抱くイメージを答えながら創造系不動産が目指す「建築と不動産の間」について話は繋がっていく。学生らの回答を集約すると、「創造と管理」に行き着いた。一見すると専門性も教育課程も違うように見えるが、「顧客のニーズを汲み取り、最大限の利益を生み出す。」ということに類似点が見られる。デザイナーはワガママで、マネージャーはコストに厳しいというクリシェからは離れた観点だ。

 WEBにも掲載されているケーススタディからはより具体的な建築家と顧客との関係が明らかとなった。従来、不動産業は顧客から土地を購入した上で設計や管理を相談されることがあるが、創造系不動産では、土地探しから始まる。土地探しには設計者も同行し、不動産的視点だけでなく、建築的視点からも評価をしていく。顧客と建築家との打ち合わせでは、具体的な要件や空間構成が炙りだされるだけでなく、不動産的な敷地と周辺環境、中期的な運用の話、ローンの組み方などを視野に入れた議論が繰り返される。高橋さん曰く、最初のプロセスは「家族会議のデザイン」というのが興味深い。*1

 創造系不動産では、従来の仲介料にプラスしてコンサルティング料が加算される。顧客の経済的負荷が高まるが、数十年生活を営む住宅を手に入れるうえで、生活の豊かさを考慮すると十分ペイされそうだ。住宅が案件に多いというのも、顧客=エンドユーザーのため、顧客のニーズを汲み取りやすく反映しやすいからだ。交通や教育機関などの周辺環境を考慮することはできても、その土地にどういう建築物を設計できるか、金銭的条件を読み替えてビルディングタイプを提案するプロセスは従来の建築設計業、不動産業の枠組みにはない。両者を同時に、並列して考えるからこそ生まれる要件や建築があるようだ。
 ここでは質問しきれなかったが、建築家とのネットワークや今後、設計された住宅を販売、賃貸仲介するときにこのプロセスが販売価格・賃料に考慮されるのかなど聞きたいことはたくさんあったけれども、「建築と不動産の間」を考えることで生まれる新たなビジネスチャンスを発見することができた。隙間から両端を考えることで新しい働き方やネットワークが生まれることを垣間見ることができた。

*1:詳細は創造系不動産のケーススタディ集を御覧ください。