2014年に読んだ本まとめ

あけましておめでとうございます。本年も定例化され始めた「読んだ本まとめ」から始めたく思います。
今年はフリーランスとして仕事を始めたこともあり例年に比べて読書量が下がってしまいました。春先と年末にまとめて読み進めた書籍が大半を占めており、社会人が継続的に読書を行うことのハードルを感じました。(ネットへのアクセス時間を減らせば良いだけなのですが…)
論文執筆をしていた昨年に比べ、ジャンルはバラバラになりますが、大別すると「オープンデザイン/デジタルファフリケーション」「インクルージョン/サスティナビリティ」になるかなと。デザインの定義が広がる中で、メタ・デザイン=デザインするためのデザインを考えるにおいて、情報のオープンネスや自由主義的な研究活動を参考に製造業がどのような情報を提供し、デザイナーの活動を同期づけることができるのかを考えたり、自主プロジェクトにおける伝統とデジタルファフリケーションへの応用を考えていたように思います。
また、障害のある人とのものづくりプロジェクトでは、包摂された労働環境の設計に挑戦する上で、インクルーシブデザイン関連の書籍を改めて読み直すことになりました。定量評価に重きを置いた国内の持続可能性に関する議論も、コミュニティや領域横断型組織などに対する質的な研究が進み、柔軟性・継続性・継承性への議論へとシフトしてきているのではないかなと実感することになりました。

2015年の目標として、博士課程への進学も考慮して書籍だけでなく論文も読んでいこうと考えています。大学に所属していないためアクセス料金が発生してしまうのが辛いところですね…。また、積み上げられている洋書を読み進めていきたいです。長々となりましたが、本年一発目のエントリーでした。

2014年の読書メーター
読んだ本の数:34冊
読んだページ数:9134ページ
ナイス数:22ナイス

サイファーパンク インターネットの自由と未来サイファーパンク インターネットの自由と未来
読了日:12月31日 著者:ジュリアン・アサンジ,ジェイコブ・アッペルバウム,アンディ・ミュラー=マグーン,ジェレミー・ジマーマン
批判的工学主義の建築:ソーシャル・アーキテクチャをめざして批判的工学主義の建築:ソーシャル・アーキテクチャをめざして
読了日:12月27日 著者:藤村龍至
「インクルーシブデザイン」という発想  排除しないプロセスのデザイン「インクルーシブデザイン」という発想 排除しないプロセスのデザイン
読了日:12月26日 著者:ジュリア・カセム
縮小都市の挑戦 (岩波新書)縮小都市の挑戦 (岩波新書)
読了日:12月25日 著者:矢作弘
バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!感想
リバタリアニズムに則り、生物学的な実践をDIYで行なう野生の研究者たちが開く世界は、本書でも紹介されているようにアメリカ西海岸でベンチャー企業が発生していく様と共通している。技術な背景的には、機材のデスクトップ化とオンラインによる学術研究検索コスト低下が上げられている。それ以上に研究を独自に実践し、社会変革を狙うパンク精神と環境をどのように日本で構築できるかについて思考をめぐらしていた。
読了日:12月23日 著者:マーカス・ウォールセン
小豆島にみる日本の未来のつくり方: 瀬戸内国際芸術祭2013 小豆島 醤の郷+坂手港プロジェクト「観光から関係へ」ドキュメント小豆島にみる日本の未来のつくり方: 瀬戸内国際芸術祭2013 小豆島 醤の郷+坂手港プロジェクト「観光から関係へ」ドキュメント感想
地域における外部コンテンツの設置可能性ではなく、外部クリエイターと当事者との関係に着目したアートプロジェクト。地域内部にある魅力や課題、そのソリューションをもコンテンツとして成立するアーキテクチャに注目したい。
読了日:12月19日 著者:椿昇,多田智美,原田祐馬
路上観察学入門 (ちくま文庫)路上観察学入門 (ちくま文庫)感想
赤瀬川氏逝去の報を受けて手にとった一冊。既存の価値を既存の方法でリサーチする学術的研究と違い、潜在的な価値を見出す実験的な試みはデザインリサーチの社会学的な調査とも重なる。ただし、要素の抽出と状況の精細な記述に重きを置いているため、「純粋階段」のように工学的機能が無批判に取り上げられて建築要素の発生に接続されていない点が気になる。見出すことから試作へと繋げる能力が現代では必要ではないだろうか。
読了日:12月17日 著者:
人間の条件 (ちくま学芸文庫)人間の条件 (ちくま学芸文庫)
読了日:12月7日 著者:ハンナアレント
年収は「住むところ」で決まる  雇用とイノベーションの都市経済学年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学感想
コミュニティが先か、ビジネスが先かとの問いに、本書では後者を上げている。新しい価値が根付き始めた仕事(ITベンチャーなど)は、サービス拡大に連れて人を引きつける力が働き、付随して利害関係者の拡大にも繋がるとしている。地域が面白いのではなく、人が面白いという実感は、日本のまちづくりでもよく分かる。
読了日:11月21日 著者:エンリコ・モレッティ
暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)感想
暗黙知と呼ばれる行動や認知に至るまでの構造を明らかにし、その階層の上下行為を「創発」と名付けている。UI/UXやサービスデザインのフロントエンドの基礎理論として読める。
読了日:10月27日 著者:マイケルポランニー
マクルーハン理論―電子メディアの可能性 (平凡社ライブラリー)マクルーハン理論―電子メディアの可能性 (平凡社ライブラリー)
読了日:10月23日 著者:マーシャルマクルーハン,エドマンドカーペンター
サイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探るサイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る感想
いつのまにか蓄積された「当たり前」を崩し、状況の調査からデータを抽出し、洞察として提示するデザインリサーチとはどういうものか理解できる。内容として目新しさは少なく、リサーチャー希望者、クライアント向けといったところ。
読了日:9月3日 著者:ヤン・チップチェイス,サイモン・スタインハルト
スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)
読了日:8月15日 著者:F・アーンスト・シューマッハー
fashionista ファッションの批評誌fashionista ファッションの批評誌
読了日:7月21日 著者:千葉雅也蘆田裕史
vanitas No.002 | ファッションの批評誌vanitas No.002 | ファッションの批評誌
読了日:7月21日 著者:西尾美也,北山晴一,ここのがっこう,南後由和,成実弘至,津田和俊,星野太
vanitas No.003 | ファッションの批評誌vanitas No.003 | ファッションの批評誌
読了日:7月21日 著者:proef,柳田剛,松川昌平,脇田玲,平芳裕子,水野祐,趙知海,大久保美紀,キャロラインエヴァンス,nukeme,koso,久保寺恭子
柳田国男と今和次郎 (平凡社新書)柳田国男と今和次郎 (平凡社新書)
読了日:7月19日 著者:畑中章宏
新・パーソナルブランディング――独立・起業を成功させる18のステップ新・パーソナルブランディング――独立・起業を成功させる18のステップ
読了日:7月4日 著者:西澤明洋
なめらかな社会とその敵なめらかな社会とその敵
読了日:6月19日 著者:鈴木健
SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)
読了日:6月8日 著者:田中浩也
デザイン史とは何か―モノ文化の構造と生成デザイン史とは何か―モノ文化の構造と生成感想
デザイン史とあるが、単に歴史学的にプロダクトやクラフト、デザイン行為を位置付けることについて論じるわけではない。本書では、それらの背景を階層立てて構造的に論じることによって生成されることが何を意味するのかを問うている。デザイン研究者だけでなくモノを取り巻く環境を研究するものにとって入門的な一冊ではないか。
読了日:5月31日 著者:ジョンウォーカー
オープンデザイン ―参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)オープンデザイン ―参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)感想
本書の狙いは、オープンなデザインを生むことではなくデザインをオープンにすることにある。デザインをオープンにするにあたり、その物質だけでなく、道具や場所、さらに、ライセンスなどを含めて公開すること。すなわち、設計・分解・改変を実行する環境の設計が同時に求められている。デザインの対象が複雑化し、デザイナーの役割が製品を生み出すことにとどまらず、物事を整理することや調整することにまで広がり、それを実施する環境を整えて行く(メタデザイン)にまで及んでいることがよくわかる。原文webも良く出来ているので読者はチェッ
読了日:5月25日 著者:BasVanAbel,LucasEvers,RoelKlaassen,PeterTroxler
日本のヒップホップ―文化グローバリゼーションの〈現場〉日本のヒップホップ―文化グローバリゼーションの〈現場〉感想
音楽史ではなく、文化史として日本のヒップホップシーンを捉えた本書。90年〜00年代前半の<現場>を文化人類学的にリサーチをし、日本人のグローバリゼーションやダイバーシティについて記述されている。当時と今では現場・マネタイズのあり方が変わっているように感じるため、現場の再定義が求められるように思える。グローバリゼーションと日本人性についての章がとても面白い。
読了日:5月4日 著者:イアン・コンドリー
HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由感想
今年読んだ本の中でダントツに興奮した。歴史とジャンルを次々と横断し、デザインが開いてきた社会の礎を見せてくれる。クリティカルデザイン、サスティナブルデザイン、ソーシャルデザインについて記述されている章が興味深かった。400ページ超もあるが、章立てが年代とは一致しないので2章以降は興味があるところから読み進めることをお勧めする。
読了日:5月3日 著者:アリス・ローソーン
クリエイターのためのアートマネジメント―常識と法律クリエイターのためのアートマネジメント―常識と法律感想
著作権の他、契約書関係の作例が参考になる。気をつけているものの対等な関係で契約を結ぶことは若手クリエイターが難しいという現状に苦しむが、その分きちんと学び対応するしかない。
読了日:4月22日 著者:作田知樹
エコロジーをデザインするエコロジーをデザインする感想
うーん、テーマがビックスケールなものも多く消化不良感が半端ない。短な問題として感じにくいのが問題だろうか。デザインを冠しているのであれば、巨大なシステム設計だけでなくタッチポイントについても記述してもらいたかった。そのため、福祉や建築分野は理解しやすいものだった。
読了日:4月20日 著者:山田利明,河本英夫,稲垣諭
エコロジーをデザインするエコロジーをデザインする
読了日:4月20日 著者:山田利明,河本英夫,稲垣諭
失敗学―デザイン工学のパラドクス失敗学―デザイン工学のパラドクス感想
パパネックは、全ての人間はデザイナーであると記したように、本書では、選択と決定を行う全ての動作がデザインであると冒頭に触れている。成功だけでなく失敗体験もまたデザインの革新と改善に寄与しているということであり、慢心せずに失敗から学ぶことの重要性を説く。失敗はネガティブな廃棄を意味するのでなく、次への指標となる。そこで、日常品をブリコラージュし構築しているプロコンシューマーの実践を見つめるデザインリサーチは、失敗学的な試みであるだろう。
読了日:4月6日 著者:ヘンリペトロスキ,柏木博
インクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザインインクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザイン感想
社会包摂を理念に掲げるインクルーシブデザインの歴史と国内での実践が数多く収録されているだけでなく、発祥の地であるイギリスとデザインの社会関係(ロジャー/ジュリア)、デザインリサーチの範疇(水野・小島)に関する章が非常に興味深い。本書ではユニバーサルデザインとインクルーシブデザインが対比されているが、すなわち、design of〜からdesign for〜へと変容する社会におけるデザイナーとは、複雑さから規範(コンテンツ)を規定することでなく、複雑さから関係(アーキテクチャ)を設計することだと言えそうである
読了日:4月3日 著者:ジュリアカセム,平井康之,塩瀬隆之,森下静香,水野大二郎,小島清樹,荒井利春,岡崎智美,梅田亜由美,小池禎,田邊友香,木下洋二郎,家成俊勝,桑原あきら
グロースハッカーグロースハッカー感想
さっくりと読める内容。グロースハックは、サービスデザインのエンジニアよりの発想と感じる。様々なタッチポイントから予測して広告を打つのではなく、ユーザーのインタラクションによって複数から最適解を選ぶ。対象だけでなく、サービスによって方法が異なるためアーキテクチャの設計も異なると繰り返されている。
読了日:3月20日 著者:ライアン・ホリデイ
Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学感想
ほとんど自己啓発本。プロモーションという立場でMacintoshに関わった著者が、ジョブスの金言()からマッキントッシュの働き方、組織論、リーダーシップ的な要素を抽出。なんといっても目次を読めば殆どの内容が理解できるシンプルさだけは評価したい。
読了日:3月17日 著者:ケン・シーガル
ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)感想
本書で取り上げられるマイルドヤンキーの行動(地元思考、安定思考)は、高齢者の行動と共通点が多そう。両者の視点は公共性を建築・デザインやサービスが帯びて行く上で視座となり得そうだが、小さな集団を群として捉えるような仕組みとタッチポイントのデザインは避けられない。
読了日:3月17日 著者:原田曜平
消費社会の神話と構造 普及版消費社会の神話と構造 普及版
読了日:1月12日 著者:ジャンボードリヤール
だれのための仕事――労働vs余暇を超えて (講談社学術文庫)だれのための仕事――労働vs余暇を超えて (講談社学術文庫)
読了日:1月9日 著者:鷲田清一

読書メーター