じいちゃんとまちづくり

大学生の頃、祖父母の家に居候させてもらっていた。片道2時間かかる通学はすごく大変だったけど、家に帰るとあたたかい食事や、否定することなく将来の話を聞いてくれる存在だった。じいちゃんとばあちゃんとばかりだけでなく、休日には近所に住む友だちやじいちゃんが若い頃にお世話になった方も来ていた。震災で引っ越してきた場所にもかかわらず、祖父母の周りにはたくさんの人がいつもいることをその時初めて知った。

昔の付き合いが続いているかと思ったがそうではない。じいちゃんは新しいことを考える人だった。競技用のゲートボールでは喧嘩がおきるからと、娯楽用のルールを開発したところ、それまで難しいからと参加をあまりしていなかった女性を中心に参加者の数が倍近くになったと話していた。中卒だからと謙遜するけれど、誰よりも頭が回るし、勝負事が好きだ。今まで一度も将棋や麻雀で勝ったことがない。それでいて、人に合わせながらも自分ルールでゲームを楽しめる人なんだと、最近になってようやく気がついた。

老人会のメンバーとして、登下校する小学生の安全を見回るボランティアをなぜしているのか聞いたことがあった。当たり前のように「地域のこどもは地域で守るもの」と言っていた。すぐに「このあたりの子供の名前は先生よりも知ってるかもね」と笑って付け加えた。なるほど、みんなに名前を覚えてもらうのでななく、みんなの名前を覚えることに楽しみを見出していたのか。まちづくりだと偉ぶりたいわけではなくて、生活の中にゲームを見出し、いろんなことに関わってるじいちゃん。時にゲームチェンジャーとして振る舞うその姿から、地域と関わる上で忘れてはいけない「楽しみ」を思い出した。補助金をもらうような企画書を書いていると社会性や公平性ばかりを求められると感じるけれど、測れないものを潜り込ませるじいちゃんの「遊び心」を僕も見習いたい。




腰痛で歩幅が狭くなっているとはいえ、まさか平場で1.2万歩も歩いてるとは…