
今回で3回目を迎えた「みんなのシンネンカイギ」。この自主企画は、いま語りたいテーマを必要な場所で実施する年一の集まりとして、matomatoの松田孝平くんとヤマタクと続けています。今年は「アート/デザインの交錯点」と「ローカルマテリアル」をテーマに、栄のAOAAで開催され、約40名の参加者が集いました。初対面の方や久しぶりに再会する方も混じり、豊かな対話の機会となりました。
2024年は、国際デザインセンターの組織改変や、都心に誕生したスローアートセンターナゴヤといった新たな動きが象徴的な年でした。また、2025年には国際芸術祭「あいち」が予定されており、同じ地域でこのテーマについて話し合うことには、偶然を超えた必然性が感じられました。
1つめのセッション「デザイン/アートの交錯点」のスピーカーには、ユネスコ・デザイン都市 名古屋で活動する江坂恵里子さんと、海外での制作経験が豊富でSACNにも関わる安藤卓児さんをお迎えしました。お二人との議論は、都市の文脈における芸術活動と市民参加の意義を掘り下げると同時に、制作を通じて多様な価値観に触れることの重要性を強調しました。この議論は、エツィオ・マンジーニが提唱する「センスメイキング」、社会的な文脈の中で人々が協働しながら新しい実践や価値を創造していくプロセスと重なるようです。市民が主体的に参加し、制作や対話を重ねることで、既存の社会的実践を問い直し、新たな可能性を共に模索していく。これは現代のデザインやアートに求められる重要な役割で、どちらにも存在する不可分な価値だと話されていたのが印象的です。
次いで、「ローカルマテリアル」のセッションでは、日本三大繊維街のひとつである錦長者町エリアでコットンプロジェクトを進める神村さんと、木材や石材、樹脂材を活用したMaterial Learning Farmプロジェクトを手掛ける建築家の桂川さんが登壇しました。桂川さんの「ローカルマテリアルとは、地域に埋もれた素材や人々を掬い上げ、つなぐこと」という指摘は、ティム・インゴルドが『Making』で語る制作の哲学と共鳴します。インゴルドが説くように、制作とは素材との対話的な関係の中で知識が生成されていくプロセスであり、その過程で材料、人、環境の間に新たな関係性が紡がれていきます。こうした視点は、素材を通じて地域の文化や記憶を再発見し、新たな関係性を構築していく実践の重要性を示唆しているようです。シンネンカイギに参加いただいた樹脂メーカー社長が「プロジェクトを通じて社内に新しいことに取り組む気概が生まれた」と補足いただいたことからも明らかです。
また、神村さんからプロジェクト活動が単なる「まちづくり」として捉えられるという懸念が指摘されたのも印象的です。トニー・フライが『Defuturing』で説くように、私たちは「発展」や「まちづくり」という名の下で、実は地域に根付いた価値や実践を見落としてきたかもしれないからです。つまり重要なことは、新しい未来の可能性を示すことではなく、この地域の繊維産業が育んできた関係性や技術、知恵を丁寧に見直し、現代における意味を問い直すことなのかもしれないからです。保守的と見なされがちな地域の特性も、単に克服すべき課題としてではなく、持続可能な実践を考える上での重要な手がかりとして捉え直すことができるのかもしれません。有松でイクセンプロジェクトをともに活動していく上でも、重要な視点だと感じています。
ふたつのセッションを聞きながら、留学時に体験したWORLD DESIGN CAPITALを思い返していました。ヘルシンキでかつて、都市政策デザインやサービスデザインを通じて未来を構想する気概があったように、名古屋でもそうした熱気やコミュニティが存在していたのではないか。この30年弱で、デザインの役割や価値は大きく変化しましたが、デザインセンターの組織再編は、既存の実践や関係性を見直し、持続可能な可能性を模索する新たな機会として捉えることができるでしょう。それは、単なる「革新」や「発展」を超えて、地域に根ざした持続可能な実践を育む契機となるかもしれません。今年はトークが多かったので交流の時間ももっと大事にしたいという思いもありましたが、「難しくなりがちなテーマだけど、ふたつの話を聞いて関係性や出会う機会の意味を想像できた」という声をきくことがてきて安心しました。
「みんなのシンネンカイギ」は、地域や活動を基点に、既存の実践や関係性を丁寧に見直し、持続可能な可能性を共に探求する貴重な時間となりました。次回のシンネンカイギでどのような対話が生まれるのか。それを考えることは、私たちの現在の営みを問い直し、持続可能な実践を育む第一歩となるのかもしれません。今年参加できなかった方も来年はぜひ!
─
みんなのシンネンカイギ
2023年1月から名古屋市内で開催する「みんなのシンネンカイギ」は、市内外の現在的なテーマを抱いて活動する人びとのトークを中心とする、専門性や年齢を超えた学びと交流の場です。2025年は愛知芸術文化センターのB2Fに位置するアートに触れられるオープンアトリエ「AICHI OPEN ART ATELIER」を会場に、「デザイン/アートの交錯点」「ローカルマテリアル」をテーマに実施いたします。
日 時|2025年1月25日[土] 16:00-20:00(開場15:30)
会 場|AICHI OPEN ART ATELIER(AOAA)
住 所|名古屋市東区東桜1-13-2芸術文化センター B2F
定 員|40名
参加費|2,500円〜(1ドリンク・軽食付き)
主 催|みんなのシンネンカイギ実行委員会(浅野翔、松田孝平、山田卓哉)


