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はじめに。

挨拶

このブログでは、Kakeru Asanoがデザインリサーチの視点から、建築・デザイン・まちづくりを中心にエントリーを書いていこうと思っています。よろしくお願いします。

Kakeru Asano
1987年生まれ。男。デザインリサーチャー、サービスデザイナー。京都工芸繊維大学大学院修了。CONNECTARIMATSU PORTAL; PROJECT共催。
連絡先 pnch.0924☆gmail.com (☆を@に変えてください。)
趣味 読書、DJ(Sbstrm)
ウェブサイト http://kakeruasano.com

pnchさんの読書メーターpnchの最近読んだ本

アブラゼミがうまいという「経験」と「記憶」

思考

地元のように懐かしい場所での食事で、「あぁ、この味!この味!そういえばこの頃は…」となったことがあるだろう。食事がきっかけで当時を思い起こさせるには、身体的な経験と印象的な記憶がセットなのだ。経験がうまみを引き出し、記憶がスパイスとなるため、親友たちとの懐かしい場所での食事はよりうまく感じる。しかし、当時の記憶はあるけれど経験がなかったり、経験はあるはずだが記憶がなかったり、記憶とのギャップが大きかった場合はどうだろうか。頭上にクエスチョンマークが浮かび、それ以上の会話はさきのように躍動感のあるものではないかもしれない。それだけに「記憶」と「経験」は食事のうま味を引き出す要素なのだろう。僕にとっては、昆虫食がまさにこの2つを有する食事だ。

昨年、僕はDESIGNEAST 06 XO
DESIGNEAST 06 X0 [extra-ordinary]
にて、昆虫食のレクチャーと実食に参加した。2050年には地球1.5-2.0個分の食料*1が必要とされるなかで、昆虫を「食べる」のか「食べない」のかという判断を考えるというもの。ゲテモノ料理よろしく「れる・られる」という可能性の話ではない。食べないならばどのようにして食料自給率を高めるのか、食べるならばどのように現在の社会に昆虫食を実装するのかという判断について議論が行われた。レクチャラーであり、社会への実装を考えている山口大学農学部井内良仁准教授のお話はとても興味深いものだった。前半の話を聞いたうえで、学生が素揚げに調理してくれた〈アブラゼミ・バッタ・コオロギ〉の3種類の昆虫を食べることになった。この中ではアブラゼミが最もおいしく、素揚げにされたことでさくさくとした触感と香ばしい香りが食欲を誘う。エビの素揚げのような味がしたことから、特にビールに絶対合うだろうと。1つ、2つと食べてるうちに僕は昆虫が食卓に並ぶ未来はそう遠くないと考えていた。そのためにもまず、来年は実際に自分でセミを捕まえ、調理し、食べてみようと決意したのだった。

あっという間に時が経ち、2016年の夏。僕はPOKEMON GOプレイヤーでごった返す緑地公園に友人の分も合わせて2人分の虫かごと網を抱えて待っていた。誰もがスマホを持ちながら道を歩いている中、我々だけが桜の木の間を縫うように歩いている。小学生だった自分はどのようにセミを捕まえていたのかを思い出しながら、去年食べていたセミの味を思い出しながら。セミの鳴き声すら美味しそうに感じてきた。
2時間もすると虫かごには20匹を超えるアブラゼミが入っていた。井内准教授に聞いていたように、事務所に戻ると虫カゴに入れたまま冷凍庫にしまい、調理の準備をすすめる。残念なことにクックパッドを見てもセミ料理のメニューはほとんど載っていない(この時はおそらく1つだけ)。素揚げだけでは少し寂しいので、エビ料理からエビチリ(セミチリ)とエビマヨ(セミマヨ)をチョイス。冷凍庫で死んでしまっているセミたちを取り出し、3分ほどお湯で煮る。湯を切り、頭から真っ二つに切る、切る、切る。全て切り終わったら熱したサラダ油の中へ投入し、カラッと揚げる。セミは思ったよりも焦げやすいので注意。塩コショウを降ればそのまま食べられる。秋口を迎えているため、小ぶりのアブラゼミは見があまり詰まっていなかったがサクサクとしていてやはりうまい。料理をしながら皆、ビールが進む。揚げる前はジャガイモやアスパラガスを茹でた匂いがしていたが、揚げてしまえば本当に香ばしい。レモン汁も合う。
続いて、のこったセミに片栗をまぶして炒めるように揚げる。いくつかはケチャップ+マヨネーズの入ったボールへ投入し、いくつかはそのまま鍋に残してチリソースと和える。揚げが甘かったのかわからないがチリソースと合わさったセミは少し硬かった。赤白い衣をまとったセミマヨはみためも華やかで、味もまろやかになりとても美味しかった。素揚げはどうしても虫感が強くなってしまうので、見た目に抵抗がある人にはおすすめしたい。

6人でセミを含めた食事が乗った食卓を囲み、昆虫食や生物多様性、環境問題などさまざまな話をしていた。ほとんどが美味しさに驚いていたが、もちろん抵抗があるメンバーもいた。それが現状なのだろう。昆虫食が当たり前となった社会における「経験」と「記憶」がうまみに結びつくまでにはもう少し掛かるだろう。その時までに僕たちデザイナーはどのような提案ができるだろうか。
実際に、2010年代はヨーロッパのデザイン学校を中心に、昆虫食のパッケージレベルからキッチンツールのデザインまで様々な提案がなされている。RCAの学生(当時)が掲げた昆虫食実装までのビジョンはとても示唆的だ。昆虫食をイベントなどで販売すること、専門のレストランで定常的に販売すること、ランチボックスなど手軽に販売されること、簡単に調理できるレディメイド食品として販売されること、パッケージされた昆虫のブランドが販売されること、そして最後に生きた昆虫が販売されることというものだ。その時に必要なパッケージなどの提案がとても良く出来ているので、詳しくは次の映像を見て欲しい。
vimeo.com

普段は口にしない昆虫を食べることで僕たちが普段口にしている食事の「経験」について考えるきっかけとなった。やはり肉と魚のような生物を食べるときとは全く異なる決意のようなものが必要で、口にしてうまいという「記憶」に結びつくまでのハードルが高い。しかし、見た目や調理方法、機能性などが明らかになることでその慣習は、生魚に抵抗あるヨーロッパで受け入れられた寿司のようにガラッと変わるだろう。昆虫食における「記憶」と「経験」をどのようにデザインすることができるのか考える大事な時間となった。


昆虫食画像は次から。

*1:出展:日本のエコロジカル・フットプリント 2012 http://www.footprintnetwork.org/images/article_uploads/Japan_Ecological_Footprint_2012_Jap.pdf

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2016夏、有給インターン募集

これまで2回の有給インターンを設けてきましたが、今年の夏休み期間中に新たにインターンを受け入れることにいたしました。これまでは試行錯誤しながら日日の活動を調整していましたが、この夏は制作物などを決めて取り組もうかと思っています。思考と実践をつなぐような機会として、フリーペーパーの制作補助・編集、プロモーションのための取材・リサーチ補助、展示のためのリサーチ補助・制作補助を想定しています。

インターン募集内容】
今年の夏休みに有給インターン募集。テーマは以下のいずれか。
①デザインリサーチに興味があり、デザインor建築orまちづくりor工芸の経験を伸ばしたいと考えている方。
②デザインリサーチに興味があり、情報の調査・編集orビジュアルコミュニケーションを伸ばしたい方。
幾何学(特に平面充填)とテキスタイルデザインに知識or実戦経験のあり、ものづくりへの応用を考えている方。

特に③は卒業研究、修士研究に繋がるテーマを検討しています。プログラミングの知識がある方を優先いたします。

最後に、インターンという形ではなく、研究協力という方向になると思いますが、下記のような学生も募集。
バイオテクノロジー、バイオハックを応用した藍染めについて研究したい学生
※僕自身はバイオの知識経験は乏しいですが、テキスタイルデザインへの応用や背景については協力できることが多々あります。

【概要】
場所:名古屋市緑区有松
対象:学部3年生以上、①②は名古屋近郊の方。③はオンライン参加化
期間:2016年8月1日から9月30日まで、週1−2日を想定
報酬:1-1.5万円/月(交通費込)
備考:作業はラップトップを使用します。Adobe Illustrator, Photoshop, Microsoft Word, Excel. Processingなどを使用できる方が望ましいです。

申込みは、http://goo.gl/forms/MO9g9z2Q4MQPt8uV2 から。締切は2016年7月26日[火]までとします。

ウェアラブルカメラ Narrative Clip 2が届いた!【共有編】

ガジェット

これまでのあらすじ

pnch.hatenablog.com
pnch.hatenablog.com

Narrative Clip 2(以下、NC2)を購入し、開封と撮影までは前回で行った。今回の記事ではNC2から写真・動画データをデスクトップに取り出し、さらにGoogle Photoによる共有までを紹介したい。

Narrative Clipのデスクトップアプリの設定

Get started with Narrative Clip 2 - Activation
前回の撮影編では、ストレージとしてNC2を認識できないことを書いたが、調べていくうちに、NC2からデータをデスクトップに移動する公式アプリがあることがわかった。先のリンクより、ページ下部にあるアプリのダウンロードを行って欲しい。
f:id:pnch:20160713095654p:plain
Macにアプリをインストールし、ログインを済ませると、設定画面が表示される。
f:id:pnch:20160713100043p:plain
チェック項目は2点だ。Clip Settingsタブから①Use Uploaderを Desktop(Mac) に変更、Storageタブから②Local Storage Enabledにチェックを入れる。これによってOSXであれば、Open Local Storage Folderを開けば、/User/Picture/Narrative Clip/[メールアドレス]/[NC2のID]/[年別フォルダ]が出てくる。
この設定が済むとNC2本体から画像が吸いだされ、フォルダに移動されてくる。300枚くらいが5分くらいだった。

Google Photoの設定

Google Photoのインストールは個々人で行ってもらうものとして、先のNarrative Clipアプリで設定したピクチャフォルダにアップした写真を自動でGoogle Photoにアップロードする用に設定してみよう。Google Photoのデスクトップアプリを立ち上げ、設定画面を開く。
f:id:pnch:20160713103749p:plain
中段にある「デスクトップフォルダ」の下にある「追加」をクリックし、先のNCアプリで指定したフォルダを選択する。たったこれだけ。あとはネットに繋がってさえいれば、勝手にアプリがGoogle Photoにアップしてくれる。アニメーションを作ったり、アルバムを作って共有することが少しだけ簡単になる。

なぜGoogle Photoと連携するのか

Narrative Clipはウェブサービスと同期しており、最大8GBまでのフリースペースはあるが、それ以上は有料となっている。写真と動画を半日も回し、それを月に1、2度使えばあっという間に容量はオーバーしてしまう。さらにそれをブログやSNSで共有しようものなら、Narrativeにアップして、ダウンロードして、SNSにアップして…と手続きが煩わしい。そういう時にはこういうアプリ間の連携をしておくことができれば、多少の手間は省けるというものだ。
現時点では容量無制限でアップでき、メンバー間での共有が簡単にできるGoogle Photoに残念ながら軍配が上がるといえるだろう。よきライフログタイムを。

雑記 それにしても充電時の発熱量は少し心配になるなぁ…

プロの素人を目指して、デザインリサーチャーの役割

思考

「はじめまして、デザインリサーチャーの浅野です。」という挨拶をするたびに、「デザインリサーチャーとは、何をする職業なのでしょうか。」という返事が来る。まだまだ日本には耳馴染みのない言葉であり、察しがいい人は「コンサルタント?ディレクター?」などと聞かれる場合もあるが、デザインや建築を職業とする人などからも同様の反応を得る。後述するがその答えは状況や工程によって変動するため、一言で回答するのはまだ難しいのだが、「モノやコトの起きる前からともに考える役割」だと伝える場合が多い。「モノやコトの起きる前からともに考える」ということは、もう少し説明を加えるとどういうことなのだろうか。

問う役割としてのデザインリサーチャー

ともに考える上で最も力を入れていること、それはクライアントに「問う」ことだ。職種を関係無く「問う」ことは業務の初期段階にほぼ置かれる工程だろう。一般的にこの工程でのインタビューやヒアリングでは、「何をするのか(WHAT)」を明確にする「要件定義」の準備段階と捉えれている。しかし、デザインリサーチャーにおける初期の「問う」段階では、「なぜ実行するのか(WHY)」という動機や目的といった文脈を明らかにすることに重きをおいている。
商品開発をしたいのはなぜか、まちづくりをしたいのはなぜか、ポスター・チラシをつくりたいのはなぜか。こうしたモノゴトの裏側にあるWHYは、クライアント(とそれを享受する人)が持つ文脈に依る。その文脈を蔑ろにした提案は、クライアントが提供するモノゴトを享受するユーザー、またその関係の裏に潜む利害関係者もまた不幸とさせてしまうかもしれない。

障害者福祉×伝統工芸における「なぜ」

例えばこんなケースがあった。障害を持った人が関われる伝統工芸の商品開発をしたいという相談。なぜと繰り返して問うていくと、福祉施設側は低い賃金の労働を受注することが多いことや働きがいを持って望む作業の受注をつくり出せていないことを課題として持っていた。つまり、ロットいくらという軽作業では作業量のばらつきが発生し、利用者のモチベーション維持やそのための準備などに多大な時間を割かなければいけないという事情があるのだ。そのため、伝統工工芸よる商品開発では能力に合わせた手仕事によって付加価値のある商品を開発していきたいということが見えてきた。
他方、制作支援を行う工場からは、商品開発のプロセスの中で後継者の獲得を目指したいという意見が出てきた。詳しく話を聞くと職人をひとり育て上げるコストと時間を捻出することが難しい生産体制が見えてくる。そのため、このプロジェクトでは、福祉施設の担当者と利用者を育てることで製造に寄与する人員を増やすことが目標のひとつに掲げられた。
「なぜか」と問い続けることで単なる商品開発ではなく、「手仕事による付加価値のある商品開発」と同時に「後継者育成の機会を生み出す商品開発」が共存していることが理解できるだろう。ここでの役割は商品のコンセプトやイメージを作り出すことではなく、問いを通して商品開発における理念や目的を「発見」することにある。
pnch.hatenablog.com
pnch.hatenablog.com

「なぜ」から生まれたデザインを通したリサーチ

なぜを繰り返して得られた文脈の理解(発見)は、「予測=そうなるかも」と「洞察=そうなったらどうなるのか」の2種類で構成されている。前者のほうが可能性が高く実践的な発見で、後者のほうが可能性は低いが今までにない実験的な発見といえるかもしれない。障害者福祉×伝統工芸では、前者によるプロジェクト進行であったといえよう。それでは、後者の「そうなったらどうなるのか」というプロセスはどのようなものか。
丹後ちりめんなど和装生地の機織りを行う職人と行うYOSANO OPEN TEXTILE PROJECTは、和装を中心とした繊維産業が縮小する中で付加価値のある素材づくりが求められた。数回のフィールドワークやインタビュー調査の中で繊維産業特有の分業体制では、これまでのように1から10までの生産工程を継続していくことが難しくなっていくことが発見された。惜しみない手間と暇をかけていくうちに形式化された生産工程に対して問いを繰り返していく中で、「完成までの工程を戦略的に途中で辞めることで完成品となる素材の可能性」と「途中でやめることで完成した素材の展開可能性」が見えてきた。
ここでは製織したあとに実施される「精錬」作業をやめることでどのような価値が生まれるのか描くことにした。実際に精錬作業を行うと、繊維についたノリ(のようなもの)が落とされることで生地は縮み、厚みを増す。温度と液中pHを調整することで精錬がうまくできること、パターンによって縮み方に差異があることが見えてきた。そこで積極的に縮みやすい組織を考えようと職人に荒いパターンで製織してもらったり、生地が縮むことでユーザーがどのようにプロダクトをデザインすることができるのかを考えていった。
最終的には、組織をひっかくことでドレープを積極的に生み出したり、防縮することで形状記憶する素材の提案を行い、その素材を使った「ワンピースのようなもの」や「中敷きのようなもの」を一人のユーザーとして制作をした。1から6や1から8で完成したものをユーザー自身が10にするテキスタイルが受け入れられる社会では、縮むといった特徴を積極的に利用することでパーソナライズへの応用可能性が見出されたと言える。つまり、途中でやめる判断をした世界では、生産する消費者(プロシューマー)を巻き込みながら完成する素材として活用される、「洞察」=物語を描くことができた。
mtrl.net

プロの素人である子どもを目指して

2つの事例を通してクライアントにおける「なぜ」を問うデザインリサーチャーの役割について紹介をした。1つ目は文脈の理解から目的を「発見」すること、2つ目は「発見」された「洞察」から物語を描くことで課題と可能性を浮かび上がらせるものだ。両者のプロジェクトにおいても根底にある「なぜ」を問う役割とは、当事者が無意識の中に持つ概念を言語化することで他者と共有可能とすることにある。
子どもから「なんで子どもは生まれるの」という質問から数珠つなぎに質問を浴びせられることで生命の起源にまで話が及ぶように、デザインリサーチャーもまた「なぜ」を繰り返すことで本質的な文脈に触れようとする。また、得られた洞察から生まれたデザインによって描かれた物語に「なぜ」と問うことで課題と可能性の共有可能性を探っていく。
小さな疑問をひとつひとつ捉え、少しずつ編集し、カタチを与えていくことで共有可能なものを目指していくデザインリサーチャーという役割が目指すものは、まさに子どものように知らないことを恥も慢心もしない「プロの素人」だろう。

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