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はじめに。

このブログはPNCH(パンチ)ことKAKERU Asanoのブログです。主に建築やデザインを中心としたエントリーを書いていこうと思っています。よろしくお願いします。

■Profile
PNCH (パンチ)
1987年生まれ。男。フリーランスデザイナー・リサーチャー。京都工芸繊維大学大学院修了。CONNECTARIMATSU PORTAL; PROJECT共催。
連絡先 pnch.0924☆gmail.com (☆を@に変えてください。)
趣味 読書、DJ(Sbstrm)

pnchさんの読書メーターpnchの最近読んだ本

amazon ウィッシュリストを公開しました。勉学の支援を期待します。

多様性を取り込む装置としての冠婚葬祭

民族学的な視点から書かれた冠婚葬祭の書籍を読んでいて面白かったのは、江戸から明治にかけての日本人は7歳から88歳までが「人」で、それ以下もそれ以上も「人ならざるもの」という意識があったということ。人の形をした得体のしれないものの社会と人の社会との共存があり、七五三のように人ならざるものを人として迎え入れる儀式があったり、結婚式やトーカチ(米寿)に白無垢や白装束を身につけることで異なる社会を往来する文化があった。

神を祀る文化をベースに仏教が広く知れ渡り、人ならざるものに対する畏怖からホトケ様や先祖というある程度顔の見える偶像崇拝へとシフトする中で、葬儀がビジネスとして成立し始める。同様に、季節の祭事に合わせて設えられていた仏壇や魂棚、神棚が備え付けになり、形態が形式化し始め、宗教工芸が伝統工芸の一つとして隆盛する。そして、多産多死の村社会時代には皆で支える先祖供養の思いから栄えた産業も、小産多死の時代へシフトしていくなかで経済的、空間的に支えきることが難しくなり縮小していく。

現代では生と死が分断され、宗教観の低下や生活スタイルの変化が人の社会が人ならざるものの社会を隔てていく。人と人ならざるものの間に私を置き、先祖から子孫へと橋渡しをしていた多様な共生文化が、私を起点とする直接的で発散する関係しか描けなくなっているのかもしれない。これが幼稚園や保育園、障害者や高齢者福祉施設を住宅地に建てることを拒む一つの理由かもしれない。

冠婚葬祭と聞くと親族や近しい人々とのしがらみを想像してしまうが、むしろ、冠婚葬祭は多様性をとりこむ装置として機能し、閉鎖的になりがちな環境から抜け出すことに役立っていたといえるかもしれない。よけいなしがらみが見えやすく閉鎖的で短絡的になりがちな現代社会を生き抜くためにも、改めて、装置としての冠婚葬祭を見直し、再構築してく(=デザインする)ことが求められているように思える。

農業×建築 M式水耕栽培研究所探訪

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愛知県で農業×建築を自主的に研究されていた研究会メンバーの一人である栗本真壱さんにご紹介いただき、建築家・村田豊氏が設計に協力されたM式水耕栽培研究所を見学してきました。

名古屋駅から20分ほどにある愛知県弥富市にあり、社長はオランダから水耕栽培を日本へ輸入し、環境に合わせて発展させた日本の水耕栽培のパイオニアだそうです。セルフビルドで立ち上げられたフラードームのようなハウス施設に、水耕栽培の基本となっている穴の空いた発泡スチロールのパネルが桶の水面に並べられている。研究所の周囲には、前代表の村井邦彦さんが生前中にぎりぎりまで制作されていたという建設途中のフレームが建てられている。かつては国内外のパビリオンにも出展し、村田氏と水耕栽培に普及されてきたという。一つ一つてで接続していったフレームはどこか不揃いな不気味さと生々しい緊張感を持ちあわせており、廃墟となったユートピアのような施設でした。

現社長のお話では、農業と建築は建築としての正解がない世界で手探りでやっているため、工務店やゼネコンも蓄積された経験がまだ浅い世界だそうです。水耕栽培一本で来られたM式水耕栽培研究所には、毎年、多くの方が見学に来られるのだとか。

愛知県にはまだまだこうした生活と密接に結びついた産業から生まれた見落とされがちな建築、そして価値観が多数眠っているんだろうと思います。ただ保存せよとするのではなく、現代の生活に寄り添うように活用や展開を考えていくことが求められているように思います。新たな課題を持ち帰ることができた非常にワクワクする時間でした。栗本さん、村井社長ありがとうございました。

「 農業 * 建築 = AGRITECTURE 」
http://agritecture.blog63.fc2.com/
株式会社M式水耕研究所 | トップページ
http://www.gfm.co.jp/index.html

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10万都市のあり方を探して:瀬戸市探訪

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昨日は瀬戸市役所の方にご案内いただきながら尾張瀬戸駅近辺を散策してきました。人口13万人が微減するこの町に発生する空き家利用を考えるための素材集め。磁器で経済的に発展した町の一端を見えることで、産業とまちづくりが密接に結びつく愛知県の面白さを改めて認識した。

せともの=磁器と認識していたが、もともとは鉄分をあまり含まない淡い白色の陶器を生産していたこと。作品としての陶磁器ではなく日用品を目指していたこと。陶磁器の原料だけでなくガラス細工の原料である硅砂も取れること。陶器と磁器とガラスの町であることをこの機会で初めて知ることになった。

偶発的に獲得した釉薬の技術が土器から食器や水瓶などの陶磁器となり、生活の質を高める。莫大な人気を集め、窯元は大量生産を行うも、現在では中国製品にお株を奪われ、最盛期の半分以下となる。工場跡地をマンション建設に当てるも中心部に空き地が目立ち始めている。

人口30%程度の高齢化、中心部の空洞化、根幹産業の衰退という課題を抱える。一方、わずかながらも根付く作家や起業家、古い街並みがまだ残っているなど、町を美術館に見立てたまるっとミュージアムで250万人程度の観光客が町を訪れる訴求力はある。

そこで空き家活用を通して、観光事業、クリエイター支援、都市整備、公共サービスの充実が求められている。公民が混ざり合いハブとなる拠点やモデル事業が今後求められている。それを踏まえてのサーベイは、眠っている町の資源を発掘していくように感じた。

のら文字、看板建築、産業廃棄物、空き家、空き地、飲食店などなど。観光案内からはこぼれ落ちる「スキマ」が町中にちらほらと点在している。それをつなぎ合わせて発信する市民レベルのメディア、政策レベルの仕組みづくり、実践が蓄積される町中の拠点がすぐに必要となるはず。

ハードルの高い転入ではなく、少し長い滞在を通して可能性や課題を顕在化していくデザインリサーチで僕は関われそうだ。間接的でも参照性の高いアウトプットをどのように生み出すことができるだろうか。市役所の方の熱意が高いうちに、都市のメタデザインをしかけていきたい。

デザインリサーチャーの1年目を振り返る

1周年に向けて昨年の仕事を振り返る。どこかに所属して働きもせず、2014年5月1日にいきなり独立した僕にまとまったお金の仕事など来るはずもなく、訳の分からなさを武器に「デザインリサーチャーです。」と半分真面目に半分冗談で答えてました。それでもこれまでの関係や友人の紹介で仕事にありつくことができ、大体毎月13万円前後の売り上げで、20万を超えたのはわずか2、3ヶ月くらいだったと思います。今もそれに毛が生えた程度ですが、下準備や下調べとしてのデザインリサーチの有用性を共有できた人たちとブレイクスルーの隙間が見え隠れする世界をひらいていくことが出来そうです。

当初、仕事のひとつは企業のブランディングでした。カタカナで書くと経営にも関わる企業イメージの大枠を定めるようで響きがいいけれど、実際は広報物の提案・制作、一時的な展示スペースの企画、事務所などの大掃除、WSの提案に運営補助、営業や総務的な動きもしばしば。ここではミクロな活動にぶつかったおかげで中小零細製造業の一端を理解することができ、短期的なブランディングや広報は首を締めるだけだなと分かりました。会社案内と言う名のメディアをどうつくることができるのか、それが小さなスケールでもどう企業活動を広げるのかばかり考えてました。今後はより企業の広報物とユーザーの関係に重きを置いたメディアづくりを企画しています。

また、下請けも含めて編集構成、文字起こしのお仕事を10本ほど。有松で行われたイベントの広報ディレクション、書籍やフリペになった(なる予定)のものも。どれもこれまでの関係や自主プロジェクトARIMATSU PORTAL; PROJECTで開催したトークイベントなどをまとめたフリーペーパーがきっかけです。マネージャーを務めるDESIGNEASTにしろ、こうした活動がある意味営業となり仕事に繋がるのが改めてわかりました。何にでも興味を示して話を聞くおせっかいさが功を奏したのか企画から関わらせてもらえるものもあり、東海エリアの学生と「産業と教育をつなぐ」メディア、さらに国際的な「防災とコミュニティ」メディアの企画に参加させていただけることになりました。東海はメディアがないと揶揄されるだけに、ただ企画するだけではなく持続的な仕組みと若手を育てる雰囲気を醸成できればなと思います。

フリーで始めたばかりから、リサーチの仕事も不動産に関するものを2件ほど受けてました。こちらは下請けのため世に出せないですが、普段はあまり積極的に実施しない定量的な調査だったのですが、契約やレギュレーションについて勉強になるところが多かったです。
昨秋以降は福祉施設との協働によるポンチョの開発PJのディレクションがきっかけとなり、「GoodJob!」展への出展、3つのセミナーでの登壇に繋がりました。修士研究から続いたインクルーシブデザインにこうして仕事を始めてからも携われるのは本当に嬉しいです。ようやくここからデザインリサーチャーらしい活動が本格化しだしたと実感。現在は、障害者福祉施設と高齢者福祉施設の2つのデザインリサーチを実施しています。どちらもスタッフと利用者の相互関係と埋没された創造的な実践の抽出をきっかけに、新たな事業展開への応用を考えるものです。前者では結果をもとに試作を作るWSを設計して提案したり、現場オペレーションといったより具体的なシナリオや新事業のイメージが求められています。このように僕がデザイナーとして動くものもありますが、高齢者福祉施設のPJでは建築家とグラフィックデザイナーがリサーチの結果や過程を共有してつくりだしていくものです。僕がスタッフと利用者の実情を前捌きし、きちんとバトンタッチしなければならない別の責任があります。どちらもオープンまで2、3年程度かかるのでゆっくりと経過を追いながら、デザインリサーチをもとにした魅力のカタチ作りと発信に協力していきたいなと思います。

定性的なデザインリサーチをもとにした福祉とデザインの組み合わせがこれまであまり日本に根付いていないためか、GoodJob!以降、ご相談いただくことが増えてきました。何件かお話を聞く中で、「ものづくりを一緒に行うデザイナーはどう探せばよいのか。」「デザイナーに何をどうやって頼めばいいのか。」と尋ねられることも少なくありません 。「それならお任せ!」と言いたいところですが、課題や状況がそれぞれのため、一足飛びに回答へはたどり着けません。そんなときに一体何が課題なのか、自分たちの魅力はどこにあるのか、誰に向けて何を伝えるのかを一緒に考えることができる立場にありたいなと考えています。

これは福祉だけではなく、僕がこの1年間で経験してきた製造業やまちづくりでも構造は同じです。長年の経験で無意識に見落とされがちな何かと何かの間にあることを拾い上げ、潜む物語や価値を体験する仕組みをともにデザインする。ただ要件を整理してかたちを与えるのではなく、調査を通して企画にまで遡る。もしくは、企画をともにつくるところからデザインを考える。それがデザイナーではなく、デザインリサーチャーなのだと僕は自信を持って答えたいです。

これまでの実践を糧にまだまだ踏み込んでいない領域に潜り込み、実践を繰り返してデザインリサーチャーとしての資質を高めたいです。2年目はどんな年になるのかとても楽しみです。

 

インクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザイン

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「インクルーシブデザイン」という発想  排除しないプロセスのデザイン

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誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論

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ノンデザイナーズ・デザインブック [フルカラー新装増補版]

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建築家なしの建築 (SD選書 (184))

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