はじめに。

このブログは京都で建築を学ぶPNCH(パンチ)ことKAKERU Asanoのブログです。主に建築やデザインを中心としたエントリーを書いていこうと思っています。よろしくお願いします。

■Profile
PNCH (パンチ)
1987年生まれ。男。フリーランスデザイナー・リサーチャー。京都工芸繊維大学大学院修了。CONNECTARIMATSU PORTAL; PROJECT共催。
連絡先 pnch.0924☆gmail.com (☆を@に変えてください。)
趣味 読書、DJ(Sbstrm)

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amazon ウィッシュリストを公開しました。勉学の支援を期待します。

有松絞り×デジタルファブリケーションWS@名古屋 レポート #portal_.

秋晴れが気持ちいい9月13日に、Maker Lab Nagoyaと久野染工場の協力の下、『有松絞り×デジタルファブリケーションWS』をARIMATSU PORTAL; PROJECTで開催しました。すでに記事を書いているように、手ぬぐいをつくるWSではなく、手ぬぐいをつくるための版木をつくるWSです。名古屋では東京と名古屋から5名の参加者が集まってくれました。嬉しいことにひとりはタイからやって来た留学生です。タイでもこうした「染色とデジタルファブリケーションを組み合わせたワークショップは知らない」とのこと。お互いに初めての試みでドキドキします。

ワークショップのはじまり:型とパターン

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手描きとパソコンで型を考える参加者

朝 10:00からMaker Lab Nagoyaに集合し、午前中は版木を制作します。有松絞りで利用する板締め絞りの形、構造、染色方法を知ってもらい、どのような形ができしているのかを考えます。それと同時に、どんなパターンが染まるのかも考えてもらいました。

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WSで使ったスケッチシート

ベーシックな四角、三角、直角二等辺三角形の折り方に対してどんな板をあてがうかで、出てくるパターンは変わってくるのです。実際に使う版木のサイズ(85mm×85mm)とパターンを考えるのですが、蛇腹に折りたたんであるので三角などは想像するのが少し難しかったようです。今回は版木だけの制作でしたが、ここに折りたたみ方と染色部分を加えるとさらに無限の制作が可能となります。それは、又の機会にして、今回はパターンをつくることのみに集中。

型の切出し

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レーザーカッターの光は眼に悪いけど見ちゃいますよね

今回は、四角の型から考えた人が4名、正三角形から考えた人が1名でした。また、幾何学的な模様を作った人が4名、フリードローイングは1名でした。複雑な形状やフリードローイングでも、データ化してしまえばいくらでも切り出せるのは素晴らしいですね。そのためにもカットラインをデジタル化しなければいけません。今回は、Adobe illustratorからdwgで書き出し、レーザーカッターで切出します。

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5名分の版木を並べてみる

こうしてできた版木がこの5つです。さて、こっからどのような柄が生まれるのか、楽しみです。

有松で染めよう、の前に

ここから会場を有松にある久野染工場に移します。地味に移動距離があり、だいたい1時間くらいです。昼食をはさみ、早速版木を使って手ぬぐいを染めていきます。

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手ぬぐいを折りたたむ

板締め絞りは、布を蛇腹に折りたたむことで同じパターンを染め付ける技法です。APPのメンバーでもある久野染工場の専務・久野浩彬さんに教えていただきながら、蛇腹に折りたたんでいく参加者たち。久野さん曰く、四隅を揃えて折りたたむことできれいなパターンができるのだそうです。

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版木で布を挟み込む

布をたたみ終わったら、切り出してきた版木で挟み込みます。この時、上下で向きや位置がずれてしまうとうまく染色することができません。慎重に位置を合わせ、万力で固定していきます。板締め絞りは染めつける技術ではなく、色が染まるのを防ぐことで柄を生み出す技術なので、ここをうまくやることがポイントの一つです。ゆるすぎると布の中まで染料が浸透してしまい、きつすぎると細かいところまで染料が入りにくい。ここは熟練の技が求められそうです。

やっと染めるよ

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染料の入ったタンクへドボン

締めあげた布は一旦水につけ、気泡がなくなるまでしっかりと濡らします。濡らすことで防染され、アウトラインが出やすくなります。そして、ついにタンクへ全体を投入。今回は青と赤の2色から選んでもらいました。スレン染料を使い、染料の中に入れてる時間はだいたい60秒です。その間に板を四方からトントンと叩くことで染料が中に入りこむのです。「力を入れ過ぎると板がずれそうで加減が難しかった。」とコメントも。

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実際に出来た手ぬぐいの1つがこちら

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パプリカの断面みたいなパターン

外から中にかけて、徐々にぼんやりとしているのが分かるでしょうか。これは染料が手前の布から固着してしまうことで目を塞ぎ、中の布まで到達しにくくしてしまうことでおきるのだそうです。ぼんやりとすることを前提にデザインできるようになると面白いですね。これはプリントとの大きな違いだと思います。ちょっとした人間らしさをアナログに表現できるところが面白いです。

ちなみに、こちらの手ぬぐいは「知多木綿」と呼ばれる素材で、目が荒く染まりやすいことで昔から使われていた素材だそうです。また、使い込むほど柔らかくなり、肌触りもとても良かったです。

次に作る人へのバトンパス

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コメントは次の自分へ語るように

「思ったような柄になった。」「イメージと少し違ったので、また、版木を作り直して来たい。」という声が参加者から聞こえてきました。そう、イメージと違ったのならば版木のデータを修正すればいいんです。もう少し大きく、小さくを繰り返すうちに適切な形がきっと出てくるはずです。同じようにアナログな染色の部分もトントンと強く全体的に叩くことで染まりが綺麗になると気づいた方が多かったようです。こういう一つ一つの知恵を集めていくことで、伝統は出来上がってきたのだなと改めて思います。


Cut lines for Shibori, Tie Dye created at Arimatsu Shibori x Digital Fabrication Workshop by ArimatsuPP - Thingiverse

ここで制作したカットラインのデータは、Thingiverseというものづくりのためのデータ共有サイト(Youtubeみたいなものです、たぶん)に早速アップロードしました。一部では有りますが、参加者のアドバイスも乗せておりますので、コレを利用して私も作ろう!という人は是非参考にして下さい。

今回、会場で利用させていただいたMaker Lab Nagoyaさんは主に週末の土曜日午後からオープンしており、1日1,000円で利用できるようです。今回のワークショップでは、東急ハンズの朴材 5mmを使って版木を作りました。材料を持ち込めばカットしてもらえると思いますので、興味のある方は連絡してみてください。
また、久野染工場では、手ぬぐいやハンカチを染める絞り染め体験教室をやっています。こちらでもし染めてみたいという方がいらっしゃれば、お電話の際に「版木持ち込み」とお伝えすればよいそうです。詳しくは工場に問い合わせてみてください。

次は大阪へ

次回は9月20日に大阪 Fablab Kitakagayaで同じWSを行います。興味を持たれた方はぜひいらして下さい。

有松絞り×デジタルファブリケーション@Fablab Kitakagaya #portal_. | Peatix

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全員の手ぬぐいと版木を並べて

有松絞り×デジタルファブリケーション・ワークショップに向けて #portal_.

この4月から動き出したARIMATSU PORTAL; PROJECTでは、ついに有松から出て外部でのワークショップ実現に向けて動き出しました。9月13日に名古屋のMaker Lab Nagoyaで、9月20日には大阪のFablab Kitakagayaで行います。詳しくは、下記のFbページをご覧ください。



今回のワークショップではなぜ、有松絞りの版木を制作するのか。有松絞りの技法は、その工程から「括る」「挟む」「縫う」に分類されます。「挟む」という技法には、乾いた状態で布を挟む雪花絞りや濡れた状態で布を挟む板締め絞りなどがあるのですが、PORTAl; SALON #01 で登壇してくださったまり木綿の伊藤さんが仰っていたように、工程が少ないので生産性が高くポップな柄ができることが特徴です。他の技法に比べて大味で、繊細さに欠けると評されることもありますが、雪華模様、麻の葉模様をあしらった浴衣は涼しげで可愛らしい印象です。
以前、雪花絞りで手ぬぐいを制作した過去記事はこちら。

『くそあつい』ので、シルクスクリーン×糊防染×有松絞り 手ぬぐい作ってみた #shibori. - ケンチククラブ

今回ワークショップで行なう板締め絞りでは、柄を生み出す要素として、1)布の折りたたみ方、2)板の形状、3)染色箇所が挙げられます。1)布の折りたたみ方と3)染色箇所は、無数の柄を生み出せるので非常に楽しいのですが、それらを操作してイメージに近い柄を生成することが非常に難しいのです。適当に折りたたんだ布の部分に染色したところから全体のパターンを想像するのは、なかなか脳みそを使います。。そうしたシュミレーションの難しさを乗り越えるべく、「染みるんです」というソフトが研究開発されていますが、開発から2年経ちますが普及には至っていないようです。一方で、2)板の形状は、ダイレクトに染色に影響するため、先述した2項目に比べては予想がつきやすくとっかかりやすいと考えました。染色具合を予想に近づけるには、染色時間や染料の配合などを検討する必要がありますが、線状に近づくことが出来るでしょう。またこれまでは板形状の作りやすさやコストから、挟むための板は丸・三角・四角ばかりでしたが、現在は、レーザー加工機の普及によって複雑な形をいくつもつくることが可能となりました。そのため、今回では板の形状に焦点をあてたワークショップ開催としています。

そこで今回は、a)版木をカットするためのデータをつくる、b)版木をつくる、c)版木から手ぬぐいを染色する、d)フィードバックを記録するという工程で行います。従来の手ぬぐい染色ワークショップでは、偶然が生み出す可愛い色や柄を楽しむことが目的で、よりクオリティの高いものを続けて制作することやかわいい柄を模倣するような制作が目的とされることはほとんどなかったのではないでしょうか。これでは、クローズドなものづくりコミュニティでの技術継承のみとなり、コミュニティの縮小によって継続が難しくなります。伝統が衰退していく一端を見ることができますね。。

私たちの生活で目に見えるものは、プロダクトの手ぬぐいだけでしょう。手ぬぐいをつくるためのプロダクトと、つまり、メタ・プロダクトとして、版木が存在しています。今回のワークショップでは、その版木を制作するための、メタ・メタプロダクトとしてレーザー加工機のカットデータが存在します。「ものをつくるための道具をつくる」ことで、「ものをつくる」というオープン・カルチャーの思想に則っています。これによって、手ぬぐいは手に入れられなくても版木があれば手ぬぐいを制作して手に入れることができる。版木が手元になくてもカットデータをダウンロードし、版木を制作して手ぬぐいを手に入れることができる。というようなつながりが生まれ、より広いものづくりコミュニティが醸成していくのではないかなと思います。これもまた伝統工芸における技術継承の1つの方法ではないかと考えています。
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実際に、以前製作した板締め絞りのカットデータは世界中の何処かで2014年9月現在、約100ダウンロードされ、どこかで同じような手ぬぐいが制作されているのでろうと思います。今度のワークショップでは、このデータのアップロードを持って終了となるので、また沢山の人の制作を促すのかもしれません。非常に楽しみです。

板締め絞りとレーザーカッター #shibori. #portal_ - ケンチククラブ


関連書籍:

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小豆島建築ミーティング vol.2を終えて

2014年8月22日に小豆島、Umaki Campで開催された小豆島建築ミーティング vol.2に登壇者として参加してきました。登壇者には、宮本佳明さん、家成俊勝さん、藤村龍至さんほか、第一線で活躍される建築家の方々ばかりで非常に濃密で、刺激的な時間となりました。浜松でUmaki Campを議論した浜松建築ミーティングに続き、今回も末席に加えていただきまして、本当にありがとうございます。

今回の議論の主題が『建築と教育』ということは、諸事情により、前日のジャンボフェリーで聞かされたのですが(笑)、藤村さんのモデレーションにより、「教育」をメタファーに議論が広がっていきました。議論の中心に上がったのは『マレビトとしての建築家/強い技術・弱い技術/継続する仕組み』でした。僕自身は、マレビトという建築家が旅立ってしまっても建築は独立して強度を持ち続けるのかということよりも、dot architectsから小豆島町地域おこし協力隊・向井くんへ、向井くんから利用する地域の人たちへとマレビトの主体が広がりつつあるエコシステムの方に興味が向きました。多様化する社会の中で生活する私たちは目に見えない異文化をも持ちえているので、近しい人からも新たな発見と刺激を受けます。ただし、それが表面化しないだけであって、交流しないだけでなんだと。

瀬戸内国際芸術祭からUmaki Campが生まれ、そこで活動する小豆島町地域おこし協力隊が立ち上がる。ここから小豆島は何をフィードバックしていくことが出来るのでしょうか。塩田町長が仰られていたように行政区分で指し示せないUmaki Campの活動は、今後、どうなっていくのでしょうか。予算300万円(+アルファ)でが出来る「弱い技術」でつくられたこの建築は、行政のような「強い仕組み」ではなく、アートプログラムのような「弱い仕組み」によって交流が生まれています。今後の生存戦略もとい、持続可能なUmaki Campとなるためには、制度設計が進み、弱い仕組みが強い仕組みになる「サービス化」を進めることで継続的な利用に繋げるのか、「設備補充」によって強い技術が利用できる交流場所となるのか。前者がHUBで後者がFablabのようなイメージを持っています。
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vol.1では、Umaki Campとはいったい何なのか。vol.2では、Umaki Campの独立可能性について議論されたのではないでしょうか。家成さんから「建築は開いた」に続き、「建築はウィンクした」という宣言があったように、まだまだ半開きの状態であることがわかりました。社会実験場で醸成されていく経験を定義付けて形式化することは時間のかかることですし、荒々しさを失う作業かもしれません。一方で、こうした環境の設計から、社会の深層をもう一度表面化し、議論することは、建築やデザインの新たな領域を開いていくきっかけになりました。Umaki Campのような小規模多機能施設が持続する仕組みについて、今後も議論していくことができればなと思います。また、vol.3があればぜひ参加したいです。

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小豆島「観光から関係へ」は未来のデザインミュージアム - ケンチククラブ
http://pnch.hatenablog.com/entry/2013/07/29/231701

板締め絞りとレーザーカッター #shibori. #portal_

二枚の図形をillustratorで作り、Maker Lab Nagoya
Maker Lab Nagoya - メイカーラボ名古屋レーザー加工機で切出し。手ぬぐいの端材で染の実験。カットラインはThingiverseで公開しています→
Cut line of Wooden pieces for Shibori, Tie Dye by ArimatsuPP - Thingiverse


http://instagram.com/p/rd-WhuKe2i/
ドクロ交互パターン ー ウェット
版木を万力でゆるめに締め、一度、水の中へ。全体をきちんと濡らしてから青色のスレン染料へ約1.5分。

http://instagram.com/p/rd-Xu6qe2k/
クロスパターン ー ドライ
乾いた状態できつめに版木を万力で締め、さっと5秒ほどで同染料に。

水でしっかりゆすぎ、脱水機にかけるとこの状態。
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ウェットのほうが長くつけているので割とくっきり出ていますね。画像は少しコントラストを上げているのですが、それでもウェット状態で染色しているので畳み込まれた中のほうが薄くなっていることが分かります。薄くなることを見通して、ドクロのパターンを選んだのですがもう少し綺麗に出たらよかったかも。ほんでもって出来上がった後に、90度向きを変えたほうが良かったなと気が付きました。全体を染めすぎると薄くなりすぎるので、畳み込む回数を減らしたほうが良いのかなーともうので、また実験してみましょう。

続いてドライの方は、従来の雪花絞りっぽくなってしまいました。ドライで染色しているので、しっかり全体が染まっていますね。ドライで染色したので予想通りエッジがなくなってしまっていますが、ウェットにしたらエッジがもう少し出るのでしょう。ただ、こうした柄は板締め絞りには向かないのではないかなと思います。具象的な図柄を選ぶならば、これまでの伝統的な図柄にならないほうが面白いのかもしれませんね。板締め絞りをドライでやる場合、伝統的な雪花絞りなどを抽象的な版木でつくってみると思わぬ柄が生まれるかもしれませんね。ハンドドローイングとレーザーカッターは相性が良いので、実験してみてもいいでしょう。

分かったこと
・ウェットは畳みすぎると色がかすれ過ぎるので、調整が必要
・ドライは染料が染み込みすぎるので、アウトラインが消えてしまう

次はこうしたい
・今回は手ぬぐい幅(45cm)を四つ折りだったので、六折りの小さなパターンでつくりたい
・ハンドドローイングの版木で雪花絞りをつくってみよう

追記
二回目をやってみた。今回は挟む布を少なくし、染料を濃くしました。
http://instagram.com/p/roUXTWqewK/
Instagram


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