はじめに。

このブログでは、浅野 翔 Kakeru Asanoがデザインリサーチの視点から、建築・デザイン・まちづくりを中心にエントリーを書いていこうと思っています。よろしくお願いします。

Kakeru Asano
1987年生まれ。男。デザインリサーチャー、サービスデザイナー。京都工芸繊維大学大学院修了。CONNECTARIMATSU PORTAL; PROJECT共催。
連絡先 pnch.0924☆gmail.com (☆を@に変えてください。)
趣味 読書、DJ(Sbstrm)
ウェブサイト http://kakeruasano.com

pnchさんの読書メーターpnchの最近読んだ本

4年目の始まりといくつかのご報告

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5月です。個人事業主として開業届を出してから、いつになってもこの日は気持ちが引き締まります。

本日でフリーランスとして4年目が始まりました。

昨年より京都と名古屋を反復横跳びする兼業フリーランスなのですが、2拠点でパラレルワークをこなすことも少しずつ慣れてきたところです。

京都を中心に関西のプロジェクトも以前よりお声がけ頂ける機会が増えてきたことに感謝しています。

さて、4年目を迎えるにあたり、いくつかのご報告です。

有松の事務所を閉めました

旧東海道沿いにある山田薬局の一部を間借りしていた事務所。

これまでARIMATSU PORTAL; PROJECTを含め、数々のイベントや交流拠点としてたくさんの方々を招いてきました。

最近は一時的な缶詰バーやポップアップストアのような遊休不動産の活用実験を通じて、エリアが持つ魅力の見える化を行っていた重要なコミュニケーションスペースでした。

しかし、昨年からの2拠点生活ではイベントも単発的で感覚も広がり、場の流度がどんどん下がっていることを痛感していました。

さらに重伝建地区に選定されたことで改修計画も立ち上がり、僕は一時的に撤退することにしました。

有松で結婚式を行います

有松の事務所を閉めるもうひとつの理由は、ライフステージの変化があります。

かねてからお付き合いをしていた彼女と結婚をする予定で、すでに一足早く京都で同居をしています。

なお、結婚式は2018年5月19日[土]に有松天満社にて、天満社文嶺講や竹田嘉兵衛商店から多大なご協力を得て行う予定です。

朝の9時10分からごろに竹田邸から出で立ちを行い、天気が良ければ歩いて天満社のふもとへと向かいます。

絞りの白無垢や天満社で初!?となる神前結婚式を執り行う予定です。

引っ越しをしました

京都市内から京都市内へ引っ越しとなりました。

まだ家具の買い足しが必要なレベルなので進捗70%くらいです。

リフォームされた長屋で、2人くらいなら同時に友人を泊めることもできそうです。窮屈ですが。

近くには銭湯もあるので、泊まりに来る際はビールか肴を持ち込んでくれたら最高です。

事業立ち上げ準備しています

今の個人事業(デザインリサーチ)はそのままに、有松で家守会社の立上げを予定しています。

これまでゲリラ的に活動したことをより先鋭化させ、「つくりながら暮らす」ことを目指します。

また、別事業別で商品開発を進めていた商材で合同会社を立ち上げの準備をしています。

両者ともに今夏までに準備を整えて登記をできるように準備中です。

これとは別に、浴衣のレンタル事業も始めたいのですが手が回っていないのが現状です…。

本業であるデザインリサーチも、事業領域を改めて絞る予定ですが、こちらはまた別の機会に。



落ち着いて考えたいことだらけなのに、いつまでたっても小走りな状態が続いていました。

現状を抜け出すために種まきをしたいたことがようやくカタチになりつつあるのかもしれません。

これらが本格的に動き出す時、小走りではすまなくなっている気がしていますが…。

新たなライフステージにビビりつつ、同時にへこたれない覚悟も手に入れつつ。

4年目もみなさんどうぞよろしくお願いします。

戦略的に小さくはじめてみることから〜デザインの実践を通じて

まだまだ寒い日が続きますが、暦の上では春が訪れています。

この時期はどこもかしこも「年度末までの案件」が飛び交い、補助金事業を行っている方々に関連してデザイナーたちもドタバタしている季節です。

終わりの季節はどこもバタバタで落ち着いて考えるヒマがないまま次年度に突入していくことが往々にしてあるかと思います。

僕が事務所を構える名古屋市・有松は、2017年に採択された補助金事業によって観光案内所の運営を行っています。

例に漏れることなく、次年度の動き出しについて、行政・民間・地域の人々が大きな舵取りができないまま終わりの時期を迎えているように思います。

昨年の説明会で何度も聞いてきた「自走化」という言葉すら最近では聞かなくなってしました。

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勝手に始めてやろうとしていたニュー観光

スポットライトは当てられているが

歴史観光という枠組みの中で桶狭間と有松は、名古屋城や熱田に次ぐ観光エリアとして位置づけられており、名古屋市やマスメディアにも取り上げられることが増えてきました。

しかし、紋切り型の「絞りという営み」と「江戸時代から続く街並み」ばかりが取り上げられ、現代の生活とのズレや古民家活用の課題に触れることなく流されてしまう現状に悲しくなることがしばしば…。

少子高齢化や伝統産業・線産業の縮小、遊休不動産の活用、イノベーション人材の育成など、日本全体が抱える大きな課題との接続がなされることなく、桃源郷のように語られていては何も変わりません。

スポットライトの影に隠れている不都合な真実を乗り越えていくためにも、にわかな盛り上がりを冷静に取られてその先にどのような生活を描くのか実践してみることが求められているように思います。

光の先にある「何か」を見つけるために

私たちは2014年からARIMATSU PORTAL; PROJECTとして、「関係と環境」に着目した小さな実践を試みてきました。

歴史や土地だけでなく、産地特有のさまざまな資源を有したエリアではあるものの、歴史を重ねたまち特有のタッチポイントの少なさが課題のまちです。

また、絞り産業と生活の距離も少しずつ離れていき、これからどのような暮らしが可能なのかを考えられる機会もあまり多くありません。

重伝建決定となる前後で、この地を訪れる人たちが主体的にどのようにまちへ関わろうとしているのか。また、私たちが間借りする、現在一部が観光案内所となっている「山田薬局」をどのように活用できると考えているかを投げかけるために、「ごえんの投票」という投票方のメディアを設置しました。

1ヶ月近く設置したところ、「遊びたい」と「暮らしたい」が同率一位となり、次の投票では「飲食店」や「雑貨店」が上位に来る結果となりました。

半径2kmでおさまる有松で遊びたいと思ってもその目的地が少ないこと、暮らしたいと思っていても現存の商屋が大きすぎるのではないかという課題が浮き彫りになったのです。

そこでAPPメンバーのひとりでデザイナーの武村さんは実験的に、観光案内所が開いている週末に合わせて土間でポップアップストアを始め、地域の人からの応援や訪れる人が物珍しそうに眺めていく状況を生み出すことになりました。

現在は諸事情があってポップアップストアは閉店してしまっていますが、案内所で働くパートの方々を筆頭に、近隣の方からも小さなアクションを起こすことを前向きにとらえてくれる人が出てきています。

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設置していたごえんの投票

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一時的に僕が作ったモルタルの棚も置いてもらっていて、イベントに合わせて3つほど購入してもらえました

戦略的な小さなアクションを次にどう繋げるか

名古屋市が委託する観光案内事業は、経済文化交流局の部署によるものです。

重伝建は歴史まちづくりがリードしてきた街並み保全から始まっていますが、こちらはソフトに力を入れる部署のため、案内所やお土産開発には力を入れることはできます。

しかし、有り余る遊休不動産の活用は都市住宅マターで、さらに公共空間の活用は土木や緑地公園マター。

国道や鉄道に挟まれているこのエリアでは交通戦略も非常に重要なため、必然的に部署横断をしながら規制緩和や事業支援をする必要があります。

民間は行政をリードして活用する事業計画やこれからのライフスタイルを描くことが求められていますが、まだまだ小さな動きに留まっています。

私たちはAPPの活動を通じて有松が持つポテンシャルを「つくりながら暮らすこと」を実践できることに見い出しています。

素材や人材が揃うこのまちにおいて、つくることはファン・コミュニティの醸成だけでなく、産業都市・愛知のこれからの生活像を描くことにもつながると考えられます。

バーチャルな交流に留まらない実際に手を動かしながらつくることは、次の課題や可能性をより具体的にしていくトリガーとなる。

これこそが重要な視点であり、今、始めていかなければいけないことではないでしょうか。

「30」という数字をもとに実践してみる

有松というエリアの30年後を見据えてこの活動を行うために、私は「30」という数字が重要だと考えています。

・活力のある「30」歳台を筆頭に
・活動の中心となる「30」人の人びととともに
・徒歩「30」分圏内から
・目的地となる「30」箇所の魅力的な場を創出し
・1サイクル「30」ヶ月で情報発信を続けていく

活動を通じて見えてきた具体的なミッションを進めながら、「つくりながら暮らす」ビジョンの実現に向けて取り組みを始めていくことを今は考えています。

不安な未来予測ばかりが目立つ現代ではありますが、ひとつひとつのステップを細かく見ていくと乗り越えていく可能性を見い出すことが私たちはできるはずです。

そのためにも行政や民間問わず協力体制を築き、新しいことを慣用して後押しする関係と環境を育むことができるか。

デザイン単体による取り組みの影響力は小さく見えるかもしれませんが、巻き込むプラットフォームを少しずつ広げていく力を持っていると私は信じています。

エリアの自走化に向けた取り組みが、これから訪れるであろう大きな課題と真摯に向き合い、未来の暮らしを築いていくことにつながることを期待しています。

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新規事業開発って難しい?インサイトを広げるマトリクス・マンダラートの使い方

こんにちは、デザインリサーチャーの浅野です。

インタビュー調査などをもとにした「新しい事業のアイデアを考えて欲しい」って言われた時、みなさんはどうしていますか。

僕自身は企業にいないのでこんなダイレクトな質問をされることはほとんどないのですが、「新しい事業を始めるにあたって、(デザインリサーチを通じて)ブランディングやマネジメントをお願いしたい」なんていう相談を受けることがあります。一番最初の打ち合わせでは、「なぜ新しい事業を行うのですか?」「新しい事業を通じてどんな社会にしていきたいと考えているのですか?」と逆質問をすることから始めていますが、即答できる人たちはあまり多くありません。

よくある回答は経営的な焦りから来る判断で、簡易なマーケティングによる経営者の直感によるところが多いのではないかと思います。それが悪いわけではありませんが、事業に従事者のモチベーションやプライドの維持、実際に利用するユーザーのリピート率を考えると少し論拠としては乏しいなと思います。そのためにもさまざまな調査分析やアイデア創発を通じて、企業が持つ価値観を見える化し、どのようなビジョンを策定することが社会的に受け入られるのかを考えるデザインリサーチの実施をご提案しています。

こうした新規事業開発の流れは、日本の閉塞感に対して「なにか新しいことを始めなければいけない」と危機感を感じているオトナたちによって今まさに取り組まれているようで、スタートアップの支援や企業内起業家育成に力を入れているところが増えているように感じています。しかし、これまで多くの企業は自社が持つシーズをもとに事業運営を行ってきたこともあり、新しいビジョンを掲げて事業の次なる展開考えることは一般的に難しいと捉えられているのかもしれません。実際に、デザイン思考をベースにしたデザインファームを吸収した経営コンサルタントへの発注や新規事業開発を行える社員の育成に力を入れる企業が増えていると耳にすることが増えてきましたね。

最近では顧客視点というキーワードがビジネス誌でも頻出となっているためか、デザイン思考の初期段階であるユーザーニーズの「探索」をもとにした「洞察」を手に入れようと、「インタビューや観察調査を学ばなきゃ!」という人もいるのではないでしょうか。比較的に調査手法はネットで検索することができても、調査結果をどのように分析し、アイデアの種にまで持っていくのだろうか。また、得られた洞察がどうも凡庸な結果になっている気がするとお悩の人もいるのではないでしょうか。その時点で「調査設計が間違っているんじゃないか」と疑ってしまいそうですが、追加調査やワークショップが可能ならば洞察の幅を拡げ、再度トライすることが良いと思います。前置きが長くなってしまいましたが、その時に使うことができるかもしれないのが「マトリクス・マンダラート」です。

発想法マンダラートとは
デザイナーである今泉浩晃氏によって1987年に開発されたこの発想法は、9x9マスの中心に主となるキーワードを置き、関連するキーワードで周辺を埋めることで思考を外部化する手法です。主尊を中心に諸仏諸尊の集会(しゅうえ)する楼閣を模式的に示した密教曼荼羅〈マンダラ〉図像に着想を得たこの発送手法は、9x9の関連キーワードそれぞれを次の主たるキーワードとして扱い、さらに関連キーワードを書き出していくことで思考を構造化することを目指しています。しかし、無制約に広げる個の発想方法の欠点は、無作為に抽出したキーワードを並べて出来上がったマンダラートを、再びある指標に沿って構造化することが難しいということが挙げられます。そのため最近では、「なぜ」「どうやって」「なにを」を最初から分類して思考を構造化するロジックツリーを使っているという人が多いかもしれませんね。

マンダラートにマトリクスを持ち込んでみる
漠然と広がっていく発散的な思考法ではなく、具体的な洞察の幅を広げていくような時、指標的な発想方法としてよく知られるマトリクスをマンダラートに導入する「マトリクス・マンダラート」をおすすめします。この手法は調査のn数が少ない時や洞察があまりにも現実的な場合に効力を発揮してくれると思います。
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  1. まずはマンダラートと同じく、主たる洞察を中心に置きます。
  2. 洞察や目的を考慮しながら、x軸とy軸の指標を設定します。
  3. x軸とy軸線上にあるマスを埋めていきます。
  4. 最後に斜め方向にあるマスを埋めます。
  5. 得られたマスをもとにさらにマンダラートを作成してみて下さい。

注意すべきは指標の設定です。マトリクスは強力な力を持ってしまうため、指標に寄ってはあまりにも現実離れした結果が出るかもしれませんし、代わり映えしないキーワードしか出ないかもしれません。こればかりは慣れが必要です。違うキーワードで何度か試してみたり、複数人で指標を考えてみるのも良いかもしれません。ただし、絶対に「結果ありき」で指標を選ぶことはやめて下さいね。

伝統工芸のファン拡大をもとにマトリクス・マンダラートを作成したら
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〈人口(拡大縮小)/素材(新規既存)〉を指標につくってみた場合。時間がかかるので今回は9x9マスのみ。伝統工芸の体験ではファンの獲得拡大が課題のひとつとして挙げられています。そこで、将来のファン層である「人口」と、提供できる「素材」を軸に考えてみます。

  1. 人口軸 - 日本がこのまま少子高齢化で人口が減ると少ないファンを大切にする必要があり、移民・インバウンドや出生率向上で人口が増えると講師を育成する必要があるかもしれません。
  2. 素材軸 - 従来の素材を使用し続けるためには、小さなものから大きなものまでサイズを変えた体験を提供することでファンを拡大維持できるかもしれませんが、素材が増えるとその分新たな素材別の体験方法を考える必要が出てくるかも。
  3. 人口×素材 - 人も素材も増えたらその体験を支える新たなプラットフォームサービスが求めらかもしれませんが、人も素材も少なくなると体験の機会自体も見直すとが求められるかも。また、人が増えても素材が少なければ環境を考慮した持続可能な体験設計が必要となり、人が少なくて素材が増えれば長く楽しめるけど技術は散漫となりがちな体験に向き合う必要がありそう。

みたいな感じです。少しとっつきやすくなったでしょうか。

それでも大切なのはきちんと観て考えること
現実的な洞察に軸を与えることでぐっと洞察の幅が広がり、パラレルなシナリオから再び新しい発想を得ることができるかもしれませんね。この洞察はすごく凡庸なおのをあえて選びましたが、本来ならばもっと注意深く、思索的な洞察から始めるとさらに良い結果となります。そのためにも調査分析と洞察を怠らず、観察眼を常日頃から鍛えておくことが必要です。あくまでもこうした発想法は凡庸な結果を緊急回避するためであると考えておいて下さい。それでは、よいデザインリサーチライフを。

「親切」な情報設計とサービス設計とは

日本人は基本的に優しい。おもてなしの心でなるべくたくさん楽しんでもらいたいし、ひとつでもおおくのことを体験してもらいたいと思ってる。受け手も同様に短い期間でなるべく多くのことを吸収したいと考えている。

 

そのためかひとつのうつわになるべく多くの情報を盛り込むことが求められる。幕の内弁当よろしく、多種多様な素材がきれいに陳列され、ひとつひとつに由来やいわれを持ち込む。なるへくひとつひとつが邪魔をしないように統合的な構造をしているそれは、日本人的な美徳を大いに表しているように思う。

 

一方で、この統合的な美しさや機能には、次にどんな体験を提供しているのだろうか考えてみたい。たくさんのことを吸収したユーザーは、その経験をどのようなアクションにつなげるのだろうか。

新幹線の電光掲示板が7文字であることや電話番号が市外局番を除いて7文字であるように、人間の処理能力はそこまで複雑な情報を瞬時に理解することはできないことが知られている。行政資料は、1枚に資料にたくさんのテキストと図式や表が詰め込まれ、読み手の混乱を引き起こしてしまい、具体的な次に取るべき行動や受け取りたい情報を隠してしまっているとよく批判の的としてやり玉にあげられる。これは、おそらく上司や市民に対面で説明する際の資料がそのまま掲示されているからだろう。

 

対面と読み手、それぞれ異なるユーザーに向けた情報の構造化。紙媒体とウェブやアプリなど、必要な情報の設計が異なることから、メディアによって異なるサービス設計をしなければならない。意匠的なデザインと設計的なデザインを同時に行う「親切なデザイン」は、複雑で非常に難しい。

DMに簡易な地図を入れてユーザーの行動を促すのか、はたまた場所名や住所の記載のみにして地図アプリによる検索から移動を促すのかですら悩ましいのが現状だ。さらに、期待するユーザーを想定しながらウェブサイトやSNSへの導線を考え、そちらから会場への流入を促すのかという検討すらある。

 

「親切さ」からあれもこれもとひとつのプラットホームに情報を掲載することは難しくないが、その親切心がどのような行動を引き起こす可能性があるのかを考え、きちんと思いを伝えるデザインにすること。さまざまなタッチポイントを接続し、統合的な情報設計を行うサービスデザインの果たす役割は、現実/仮想空間関係なくまだまだ大いにありそうだ。