はじめに。

このブログでは、浅野 翔 Kakeru Asanoがデザインリサーチの視点から、建築・デザイン・まちづくりを中心にエントリーを書いていこうと思っています。よろしくお願いします。

Kakeru Asano
1987年生まれ。デザインリサーチャー、サービスデザイナー。京都工芸繊維大学大学院修了。
連絡先 pnch.0924☆gmail.com (☆を@に変えてください。)
趣味 読書
ウェブサイト http://kakeruasano.com

公民連携のワンシーン:盆踊りの持続的な開催はいかに可能か

盆踊りの一コマ

先日、有松でおこなわれた有松ゆかたまつりでは、宵まつりとして盆踊りが開催されました。主催は地域の人々で構成される有松地域デザイン委員会、企画運営は有松ゆかたまつり実行委員会です。もともとはコロナ禍で中止が続いた有松絞りまつりに替わる試みとして始まった有松ゆかたまつりのため、今年は盆踊りをメインに据えた企画にリニューアルされました。

有松という地域自体でも盆踊りの開催は約20年ぶりということで、肌感として盆踊りには200人以上が参加していました。日中に近隣でおこなったうちわづくりや照明づくりのワークショップも一時、待ちが出るほどの人気ぶりです。新型コロナウイルスが5類へと移行したことを如実に感じさせる出来事のように感じました。

「もしかしたらこの子たちは初めて踊ってるのか…」と思うと、感慨深いものがあります。楽しそうな親子や子どもたちの姿に開催してよかったなという気持ちで満たされました。もちろん企画運営するということはとても大変なことではあるのですが。


盆踊りの開催や継続的な実施には一般的にどのようなハードルがあるのか調べてみると、ほとんど公民連携や公共空間の利活用と同様の課題があることがわかりました。

地域主体か商業的か

有松駅眼の前にあるイオンタウン有松ではコロナ禍以前も夏祭りイベントの一環として、屋上で盆踊りはなされていたと聞いています。20年ぶりというのは有松学区での開催が、とのことです(イオンタウン有松のある場所は学区が異なる)。下鴨神社の盆踊りや岐阜県での郡上祭りなどの伝統的な盆踊りを除くと、盆踊りの主催者は自治会や商工会、学区やPTAなどの地域の方か、商業施設などの管理者や事業者などになることが一般的に多いようです。

明和電機らが出演するBONCAST.なんかは企業主催で行われている模様👇



公民連携のハードル

たくさんの人が集まるため、駐車場や広場といった民地を使うだけでなく、公園や校庭などの公有地を使うことになります。人が多く訪れるイベントでは駅前広場や道路上で行われることも。こうした地域のイベントを行うには、開催地によっては行政への調整、安全のため警察や消防へのイベント届け出が必要です。誰でもできるわけではなく、行政や地域から後援を受けたり、共催することが求められることは、公共空間の利活用と同様です[*1]。

自治会などの地域住民が主体となる場合、寄付や協賛金を集めて開催することがほとんどです。少子高齢化やライフスタイルの多様化が影響となる町内会やマンション管理組合などでも費用回収が困難になる地域も少なくりません。駐車場などの民地であればキッチンカーを招いて売上から協賛金を回収する子もできそうでしょうが、公共空間では収益を生むこともままならないこともあります。校庭は言うまでもく不可でしょうが、道路や公園などでは露店営業許可が降りるか、警察から道路使用許可が降りるかという問題があります。こちらの交渉には時間も知識も必要となり、高度な調整・交渉が求められます。もちろん民地であっても管理者との調整は必要ですし、各所への申請も必要です。

運営者負担の軽減とそのための空間・設え

仮に許可を受けて開催ができることになっても、潤沢な活動費用があれば会場設営や縁日などの外注できますが、設備レンタルを除いて慣習的に運営者がおこなっているのが実態でしょう。X(旧 Twitter)で検索すると駆り出される運営者の悲痛な叫びも散見されています。PTA解散が社会的なニュース[*2]となっているように、運営者負担は継続的な実施のハードルと言えるでしょう。

協力してもらえる関係性やコミュニティの運営はローカルな活動でもますます求められてきます。また、こうした場として利用することが出来、運営者の負担を軽減させるような公共空間が増えることも期待したいところです。具体的には災害時を見据えたイベント利用もできる電源ポートや、拡張可能なポール穴、倉庫や貸出可能なベンチなど屋外家具などが想定できそうです。これはウォーカブルまちづくりと連動することはかなり重要でしょう。グランドレベルの大西さんが紹介していた事例はとても興味深いものでした。



コミュニティ活動と都市空間の整備

今回は盆踊りの開催を例に上げて話をしましたが、成熟した社会での地域コミュニティ活動の維持は新しいフェーズに移行しているようです。地域活動だからと住民に全て任せては継続した活動はままならず、すべて行政や事業者に任せるには限りがあります。特にハードな交渉や準備が求められる箇所の課題を改めて整理し直し、行政ー地域組織ー事業者ー参加者の参加を促す仕組みの再設計が必要なようです。それはインフラ機能にとどまらない公共空間の利活用にもつながるし、収益化ができれば維持にもプラスにもなるのではないでしょうか。年に1度のイベントのためではなく、年間を通じた地域のための活動として持続可能なコミュニティと都市空間の関係として取り扱う可能性を感じずにはいられません。



参考リンク
[*1]
www.mlit.go.jp
[*2]
www.tokai-tv.com

ハンドブック、ガイドブック、プレイブックの違いから見るコミュニティの実践とは

ハンドブック:特定のトピックや対象に関する包括的な情報(ルールや規定など)をさっと調べる時に参照する公的な様相も持つテキスト。
ガイドブック: 特定の業務やプロジェクトに関する効果的な手順などの情報をまとめ、目的達成に向けた専門的なテキストの一種。
プレイブック:特定のシナリオや状況に対する行動計画や戦略が長年の経験則に基づいて書かれたテキスト。
(リンク先はオックスフォード英英辞典)

つまり、(組織やコミュニティにおいて)公的な情報をハンドブックにまとめ、ガイドブックで大局的なハウツーを共有し、具体的な事例をまとめたプレイブックを参照しながら実践をおこなうといった具体のレイヤーで使うようだ。

92年に改正された都市計画補に則る従来の都市計画では、人口増加や景気拡大を背景に各市町村のマスタープラン(基本計画・基本構想)が描かれ、計画に基づいた予算配分と事業が個別に展開されてきた。インフラなどの整備は目的や目標も明確に設定され、いつまでに何をすべきかといった都市仮題や政策課題を広く共有することができた。一方で、2010年以後に本格化する人口減少に突入する中で、市民のニーズと政策課題の乖離が各所から指摘されている[*1]。持続可能な上意下達の計画主義でPDCAのようなマネジメント・サイクルを回す組織の主体性を重視するアプローチから、不確実性の高い時代においてあらゆる参加者を巻き込みながら実験を繰り返す行動主義的なアプローチへと変革が求められている[*2]。

そこでハンドブック(計画)からガイドブック(行動)へと漸進的にして共有するして実行するのではなく、プレイブックから作成して出てきたアイデアや実践をハンドブックやガイドブックへと整理し直すアプローチへと展開しているのだろう。組織やコミュニティの価値観などの変化を観察しながら実行するチェンジ・マネジメント・プロセスが含まれているデザイン手法(トランジションデザインやシステミックデザインを始めとした)も同時に出現している。あるいはバックキャストティングやSF思考といったアプローチも仮説的に事例や環境を、先回りして具体化し、ある種のプレイブックとして検討しているとも考えられる。

こうした実践は世界中でおこなわれており、EUもタコツボ化した組織運営を批判的に乗り越えるために「The Communities of Practice Playbook :A playbook to collectively run and develop communities of practice」を作成し、共創を促すために経験則の採集と科学的な見地の統合を目指している。その成果の一つとして「コミュニティ・オブ・プラクティス・サクセス・ホイール」が作成され、どのような場面で活用することができるかをロードマップとしてまとめられている。

コミュニティ・オブ・プラクティス・サクセス・ホイール

コミュニティ・オブ・プラクティス・サクセス・ホイールの構成要素
1.ビジョン(VISION)- コミュニティの存在意義は何か、コミュニティが達成したい目標は何か、それに対応するSMART目標は何か。
2.ガバナンス(GOVERNANCE) - どのように協力し、誰とどのように意思決定を行うか?
3.リーダーシップ(LEADERSHIP)- 当事者と利害関係者の両方による強力なリーダーシップの参加をどのように確保するか。
4.招集(CONVENING)- あなたのコミュニティにとって、どのような招集の機会が有効か。
5.協働と協力(COLLBORATION AND COOPERATION)- 具体的なコミュニティの知識資産や成果物を提供するために、どのように様々な協働や協力のプロセスを共創し、調整しますか?
6. コミュニティの管理(COMMUNITY MANAGEMENT) - ダイナミックでハイブリッドな、そして同期的なコミュニティ間の交流をどのように促進しますか?
7.ユーザーエクスペリエンス(USER EXPERIENCE) - 設定されたタスクを遂行し、メンバーのニーズをサポートしながら、どのようにメンバー中心の体験を確保しますか?
8. 測定(MEASUREMENT) - コミュニティの活力を理解し、測定し、そこから何を学ぶか?


新型コロナウイルスが5類へと移行してからすでに数ヶ月が経ち、感染者の増減が継続的に報道され続けている一方で、人口減少や気候変動といったすぐに解決できない課題に対して、わたしたちはどのような社会を、事業を営むのか、判断が困難な場面に直面している。一国や一企業、あるいは一人の代表者にその責任を押し付けるのではなく、一人ひとりが対話し、実験的な取り組みをおこなう関係へとならざるを得ない。地域に根ざした活動をしている、物理や仮想空間にとどまらないローカリティや土着性を考える上で、プレイブックの存在は参加白のある活動を後押しするカギとなるのだろうか。


参考文献リスト

[*1] JSURP まちづくりカレッジ「⼈⼝減少社会を読む」特別企画『マスタープランは必要か? 』小泉秀樹、村山顕人、高鍋
https://s9712ee2cb616e067.jimcontent.com/download/version/1509003429/module/11638632812/name/%E2%98%85%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%83%A0%E8%A8%98%E9%8C%B2%EF%BC%88%E5%86%99%E7%9C%9F%E6%B7%BB%E4%BB%98%EF%BC%89171025.pdf

[*2]吉村 輝彦. (2019). 地域まちづくりのプロセスデザインの今後. 日本福祉大学経済論集, 第59号
https://nfu.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=3329&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

産地応答/応答産地

AI(特に大規模言語モデル)が驚異的なスピードで発達するなか、超共創的なデザインリサーチのプロジェクトとはなにかを考えないといけないですね。

社会に出てから情報科学の世界にはやんわりとアンテナは張っているものの、プログラミングなんてほとんど触っていなかったですが久しぶりにPythonを勉強して、僕からしてみればまだブラックボックスとも言えるライブラリーとデータセットを使っていろいろ試していました。

Colabで実験したchatGPT-3.5-turboはきちんと伝えたつもりでも中途半端な回答しか来なかったり、物体検出プログラムYOLOは検出してくれるけれどその先はこっち次第だったり。彼らはお付き合いの仕方がとても純粋です笑

地域や企業の課題に対して専門家として入って意見をもらったり、データ分析をともに進めたり、異なる手法で同時にデータを見たりすることがすでにできるようになりつつあります。適切に定性調査と定量調査を選択し、少ないメンバーでも人力とAIで共創し、測るだけでなく継続的に実施し、コミュニティとして適切なスケールにしていくことはまだ人の手に委ねられているとはいえ。

名古屋市という大きな都市で生活をしている一方で、有松という工芸の産地を拠点に活動していると、物事を異なる軸で捉えるようになってきました。ものをつくる時間も、人の経験も、手にする素材も。残されている時間があと何十年あるのかということも。

ますますと少子高齢化や資源枯渇が進む中で、人以外の生物や知能とも付き合い、必要なマテリアルを循環するように生成し、あたたかみのある活動をできる体制を産地に整えることを「産地応答」と、そのようなプロジェクトが動き続ける場を「応答産地」勝手に名付けてみようと思う(ティム・インゴルドに触発されながら)。ポスト人新世時代における産地の営みについて考えながら、プロジェクトの企画を考える夜。

StrongSORT-YOLOを使って生成したgif

アクアポニックスのシステムを一部更新


前回の投稿
pnch.hatenablog.com

前回のアプデではオフグリッドを目指してソーラーパネルとバッテリーを設置し、エアポンプとウォーターポンプを動かそうと目指していた。セッティング時はうまく行ったかと思っていたが、発電量とバッテリー容量の計算を失敗しており、翌日には容量不足のアラートが鳴り響く失態。。発電量のあるパネルの購入はできておらず、再び、家庭用電源から給電しています。日差しが強くなるまでに計算を改めておこなって、購入をしたいところ。

とはいえ、2022秋から2023春にかけてはサニーレタスや水菜を育てることができた。2片を埋めたにんにくのうち、1片が成長中でもう数ヶ月で収穫までいたりそうなのがうれしい。次はしょうがも育ててみたい。

2-3年くらい家庭菜園のアクアポニックスを運用するにあたり、どうしてもパイプの詰まりに困っていた。金魚の排泄物をバクテリアが分解し、野菜の栄養となるので、詰まると栄養不足にもなりかねない。特にポンプ直結のパイプの側面にこびりつく傾向にある。

海外のアクアポニックス・システムを参考に、この春に見直しをしてみた。今、汲んでいるシステムは画像の通り。

www.youtube.com

自分の新しいシステムでは、金魚の飼育槽に穴をあけるのが手間だったので、一旦はウォーターポンプで代用し、その先に一度、エアーとフィルターで大きなゴミを取り除き、徐々に分解されたものが植物の栽培槽に流れていくようにしている。

熱くなりすぎる前に棚と栽培槽の位置を調整しつつ、パイプの仕組みを更新したいところだな…。