公民連携のワンシーン:盆踊りの持続的な開催はいかに可能か

盆踊りの一コマ

先日、有松でおこなわれた有松ゆかたまつりでは、宵まつりとして盆踊りが開催されました。主催は地域の人々で構成される有松地域デザイン委員会、企画運営は有松ゆかたまつり実行委員会です。もともとはコロナ禍で中止が続いた有松絞りまつりに替わる試みとして始まった有松ゆかたまつりのため、今年は盆踊りをメインに据えた企画にリニューアルされました。

有松という地域自体でも盆踊りの開催は約20年ぶりということで、肌感として盆踊りには200人以上が参加していました。日中に近隣でおこなったうちわづくりや照明づくりのワークショップも一時、待ちが出るほどの人気ぶりです。新型コロナウイルスが5類へと移行したことを如実に感じさせる出来事のように感じました。

「もしかしたらこの子たちは初めて踊ってるのか…」と思うと、感慨深いものがあります。楽しそうな親子や子どもたちの姿に開催してよかったなという気持ちで満たされました。もちろん企画運営するということはとても大変なことではあるのですが。


盆踊りの開催や継続的な実施には一般的にどのようなハードルがあるのか調べてみると、ほとんど公民連携や公共空間の利活用と同様の課題があることがわかりました。

地域主体か商業的か

有松駅眼の前にあるイオンタウン有松ではコロナ禍以前も夏祭りイベントの一環として、屋上で盆踊りはなされていたと聞いています。20年ぶりというのは有松学区での開催が、とのことです(イオンタウン有松のある場所は学区が異なる)。下鴨神社の盆踊りや岐阜県での郡上祭りなどの伝統的な盆踊りを除くと、盆踊りの主催者は自治会や商工会、学区やPTAなどの地域の方か、商業施設などの管理者や事業者などになることが一般的に多いようです。

明和電機らが出演するBONCAST.なんかは企業主催で行われている模様👇



公民連携のハードル

たくさんの人が集まるため、駐車場や広場といった民地を使うだけでなく、公園や校庭などの公有地を使うことになります。人が多く訪れるイベントでは駅前広場や道路上で行われることも。こうした地域のイベントを行うには、開催地によっては行政への調整、安全のため警察や消防へのイベント届け出が必要です。誰でもできるわけではなく、行政や地域から後援を受けたり、共催することが求められることは、公共空間の利活用と同様です[*1]。

自治会などの地域住民が主体となる場合、寄付や協賛金を集めて開催することがほとんどです。少子高齢化やライフスタイルの多様化が影響となる町内会やマンション管理組合などでも費用回収が困難になる地域も少なくりません。駐車場などの民地であればキッチンカーを招いて売上から協賛金を回収する子もできそうでしょうが、公共空間では収益を生むこともままならないこともあります。校庭は言うまでもく不可でしょうが、道路や公園などでは露店営業許可が降りるか、警察から道路使用許可が降りるかという問題があります。こちらの交渉には時間も知識も必要となり、高度な調整・交渉が求められます。もちろん民地であっても管理者との調整は必要ですし、各所への申請も必要です。

運営者負担の軽減とそのための空間・設え

仮に許可を受けて開催ができることになっても、潤沢な活動費用があれば会場設営や縁日などの外注できますが、設備レンタルを除いて慣習的に運営者がおこなっているのが実態でしょう。X(旧 Twitter)で検索すると駆り出される運営者の悲痛な叫びも散見されています。PTA解散が社会的なニュース[*2]となっているように、運営者負担は継続的な実施のハードルと言えるでしょう。

協力してもらえる関係性やコミュニティの運営はローカルな活動でもますます求められてきます。また、こうした場として利用することが出来、運営者の負担を軽減させるような公共空間が増えることも期待したいところです。具体的には災害時を見据えたイベント利用もできる電源ポートや、拡張可能なポール穴、倉庫や貸出可能なベンチなど屋外家具などが想定できそうです。これはウォーカブルまちづくりと連動することはかなり重要でしょう。グランドレベルの大西さんが紹介していた事例はとても興味深いものでした。



コミュニティ活動と都市空間の整備

今回は盆踊りの開催を例に上げて話をしましたが、成熟した社会での地域コミュニティ活動の維持は新しいフェーズに移行しているようです。地域活動だからと住民に全て任せては継続した活動はままならず、すべて行政や事業者に任せるには限りがあります。特にハードな交渉や準備が求められる箇所の課題を改めて整理し直し、行政ー地域組織ー事業者ー参加者の参加を促す仕組みの再設計が必要なようです。それはインフラ機能にとどまらない公共空間の利活用にもつながるし、収益化ができれば維持にもプラスにもなるのではないでしょうか。年に1度のイベントのためではなく、年間を通じた地域のための活動として持続可能なコミュニティと都市空間の関係として取り扱う可能性を感じずにはいられません。



参考リンク
[*1]
www.mlit.go.jp
[*2]
www.tokai-tv.com