『居座り続けるための設え』としてのリノベーション
デザインリサーチャーへのインターンとは
(1)デザインリサーチャーという働き方がわかる書籍
デザインリサーチャー、デザインリサーチと耳慣れない言葉。「デザイン+リサーチ=デザインリサーチなんでしょ。」と思っている方やデザインや建築を学んでいるけどデザインの根拠を探すことに迷いがある方、また逆にマーケティングや教育を学びつつデザインの可能性に興味を持っている方。そんな方々にデザインリサーチ、デザインリサーチャーのイメージがある程度つかめられる、日本語の書籍を紹介します。今回の入門編となる第1回はデザインリサーチャーの働き方や意義がわかる書籍を紹介。
サイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る
- 作者: ヤン・チップチェイス,サイモン・スタインハルト,福田篤人
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2014/03/18
- メディア: 単行本
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国際的なデザインファームのデザインリサーチャーによる1冊。大きな枠組みから技法までこの1冊で掴むことができます。事例もあるので読みやすく、巻末の「デザインリサーチの8原則」は、片隅に置いておいて損はありません。
デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ティム・ブラウン,Tim Brown,千葉敏生
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/05/10
- メディア: 文庫
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同じくデザインファームIDEOが提唱したことで大きく話題となった「デザイン思考」を理解する1冊。観察調査をベースとしたリサーチがデザインの標準となったのも彼らの功績が非常に大きい。対象となるユーザーに徹底的な観察調査を行うIDEOがその方法を獲得した背景が理解できます。
- 作者: ビジャイ・ゴビンダラジャン,クリス・トリンブル,小林喜一郎(解説),渡部典子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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先進国で開発され、コモディティ化された製品が途上国に行き渡る。といった、トップダウン的なデザインではなく、途上国だからこそ生まれたユニークな製品を発展させて先進国へ逆輸入させるリバースイノベーション。今では当たり前な無線マウス開発には、途上国でのリサーチがなければ生まれなかった可能性があるなど驚きの内容。
- 作者: シンシアスミス,槌屋詩野,北村陽子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2009/10/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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なぜデザインが必要なのか――世界を変えるイノベーションの最前線
- 作者: エレンラプトン,カーラマカーティ,マチルダマケイド,シンシアスミス,北村陽子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2012/01/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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最後の2冊はまとめて紹介。今では当たり前に聞くようになってきたソーシャルデザイン、コミュニティデザインはここから生まれた。途上国の課題を先進国で発想する方法は先述の通り、コスト的、教育的、技術的な理由なら持続的ではないケースが多かった。そこで、途上国の課題を途上国で見つけ、途上国の人と解決方法を探り、途上国でその手立てを実装するプロジェクトを紹介する。
なぜデザインリサーチなのか
デザインリサーチャーとして働きたいあなたへ
AXISでデザインリサーチが特集された2000年のvol.88、そして、アドバンスト・デザインリサーチととして元RCAのアンソニー・ダンが特集された2009年のvol.142が発行されてから、すでに15年以上の月日が流れています。まだ「デザインリサーチ」という活動や「デザインリサーチャー」という職業が日本一般化しているとは言えず、2016年の今でも「新しい働き方」として、僕自身声をかけられることがあります。しかし、私もフリーランスのデザインリサーチャー、サービスデザイナーとして活動し始めてそろそろ3年目を控えているのですが、情報を編集し、新たに構成し直す設計者としてのデザインリサーチャーに少しばかり感心が集まってきていると感じます。大変光栄なことに講師としてお声がけされることやデザインリサーチャーとして働くにはどうしたら良いのかと質問を受けることがあります。デザインリサーチャーとしてすでにご活動されている方々には恐縮ですが、私の知る限り、デザインリサーチャーとして働く企業や環境がどういったところにあるのかご紹介いたします。
まず、「デザインリサーチャー」として働くか、「デザインリサーチャー的に」働くかという観点で分けて考えてみます。前者はきちんと「デザインリサーチャー」を募集し、あるいは名乗りを上げて働く方法でありますが、後者はそうではありません。研究職や企画、あるいはデザインなどの所属として「らしい」働き方をすることです。日本では後者のほうが圧倒的に多いことを先に触れたうえで、まずは「デザインリサーチャー」として働く方法を紹介します。
デザインリサーチャーとして働く
デザインリサーチャーとして働く殆どの場合、組織の一員としてプロジェクトに関わります。さまざまな背景を持つ参加者らとともにひとつのゴールに向かって活動する、その前提となるデザインリサーチを行うことに責任が発生します。リサーチが元になり、各工程でのフィードバックを得ることで共創(co-design)に繋がり、プロジェクトに、これまでにない洞察を持ち込む重要なポジションといえるでしょう。さて、そのようなデザインリサーチャーとしての働き方は、下記のようなものが挙げられます。
1)国内のデザインファームでデザインリサーチャーとして働く
あまり知られていないかもしれませんが、日本でもデザインリサーチャーを募集している企業は存在します。例えば、先日はGKデザインがデザインリサーチャーを募集していましたし、takramでもデザインリサーチを行うサービスデザイナーを募集しています。また、古くから国内でデザインリサーチを実践しているトリニティ株式会社などもあります。いずれも狭き門ではありますが、数少ない国内企業でのインハウス・デザインリサーチャーです。ほとんど事業内容はわかりませんので、学生はインターンなどで内部に入り、その実態を見定める必要があります。国内外の企業から業務委託を受けているケースが多く、それに合わせてリサーチャーやデザイナーなどとチームを組んだ活動をするのではないでしょうか。
2)外資系デザインファームでデザインリサーチャーとして働く
日本国外の支店で働く場合(でなくても)、英語で流暢なコミュニケーションできる能力がほぼ確実に求められます。外資系デザインファームで日本に支店をおいている例では、IDEO TOKYOなどが挙げられます。また、プロジェクトごとに上海などの支店が日本国内でデザインリサーチをする際に、新たにメンバーを募集するケースも有ります。外資系デザインコンサルタント会社では、frogやflamingo、などがありますが、メーカーの研究所では、マイクロソフトリサーチやノキアリサーチセンターもかつてデザインリサーチを牽引した組織として知られています。
3)デザインリサーチャーとして名乗りを上げて働く
デザインリサーチャーは士業ではありません。デザインリサーチという分野になにがしか関わり、質的調査とデザインに従事していた人はフリーランス、あるいは企業することでデザインリサーチャーとして働くことができます。大学院修了後、すぐに個人事業主として活動を始めた僕はこのケースです。ただし、キャリアも人的ネットワークもなければ、仕事を獲得することはできません。その一方で、クライアントに左右されない独自のプロジェクトを行うことができるのが魅力でしょうか。
デザインリサーチャー的に働く
4)経営コンサルタントで「デザインリサーチャー的に」働く
5)ITコンサルタントで「デザインリサーチャー的に」働く
6)広告代理店で「デザインリサーチャー的に」働く
あるいは○○総研のような研究所で「デザインリサーチャー的に」働くこともこのケースに含まれるでしょうか。強みである要素、戦略コンサルであれば事業戦略計画の一環で、マーケティングリサーチに加えて現場調査や事業計画を考えることを行うでしょう。また、ITコンサルであればユーザーリサーチやインタラクションに関するリサーチを、広告代理店では、ブランディングの一環でデザインリサーチャー的にブランディング事業に従事することです。いずれのケースでも質的/量的な調査を行い企画立案するところまで行うでしょうが、試作することや実際に落としこむところまで責任を持ってやることは稀だそうです。自分たちでデザインはやらない、やれない。その代わり、デザインパートナーに外注し、リスクと責任をきちんと管理している点がデザインリサーチャーとしての違いでしょうか。
7)アカデミックポストで「デザインリサーチャー的に」働く
大学の先生として学生を率いて、質的な調査やデザインを実践的な教育の中で行う人たちです。芸術博士だけでなく、工学博士のひとも含まれ、切り口はデザイン・デザインマネジメント、教育、社会科学、文化人類学などさまざまです。デザインリサーチに焦点を当て、道具の開発や理論の研究を行う方もいますし、プロジェクトの省察からデザインリサーチ手法やデザインが社会とどのような関係を育んでいるのか研究します。ある意味では最もピュアなデザインリサーチャーなのかもしれませんが、研究職としての本業があるので、あえて「デザインリサーチャー的に」働く分類としています。
どのようなポストで働くのか
これまで紹介した働き方は、2016年3月現在のポジションです。僕が留学をしていた北欧では、友人がデザインリサーチャー/サービスデザイナーとして、社会福祉やその他の行政サービスのデザインに関わっています。これまでの製品開発ではカバーしきれていない行政サービスを開発するにあたり、今までにない洞察や知見をもたらすポジションとしてデザインリサーチを行っているそうです。また、サービスデザインを主たる業務とするデザインコンサルタント企業もこうした取り組みを始めています。もしかしたら近い将来、行政の中で分けられた部局に横ぐしをさす存在としてデザインリサーチャーが活躍する日も遠くないのかもしれません。
ざっくりとした内容ではありますが、デザインリサーチャー、あるいは、デザインリサーチャー的なポジションで働くことを目指す人々に少しでもヒントとなれば幸いです。
Design Research Through Practice: From the Lab, Field, and Showroom
- 作者: Ilpo Koskinen,John Zimmerman,Thomas Binder,Johan Redstrom,Stephan Wensveen
- 出版社/メーカー: Morgan Kaufmann
- 発売日: 2011/10/10
- メディア: ペーパーバック
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THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics - Tools - Cases ー 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計
- 作者: マーク・スティックドーン,ヤコブ・シュナイダー,長谷川敦士,武山政直,渡邉康太郎,郷司陽子
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2013/07/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Research for Designers: A Guide to Methods and Practice
- 作者: Gjoko Muratovski
- 出版社/メーカー: Sage Publications Ltd
- 発売日: 2016/01/09
- メディア: ペーパーバック
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