障害者とのものづくり、工程をデザインするpoRiffの取り組み

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本日はたんぽぽの家が主催する『アート化セミナー』にてpoRiffの薮内さんと「工程をデザインする』パートでプレゼンをし、UMA/ design farmの原田祐馬さんも交えてのクロストークに参加しました。poRiffの話が非常に面白かったので、ツイートを元にメモをば。

poRiff(ポリフ)は、ビニールの買い物袋を細かく裂いた1万ピースをコラージュし、アイロンで熱溶着してつくるシートを使ったプロダクト。薮内さんは3つの施設(就労B型、生活介護)で非常勤勤務をしながら障がいのあるひともつくることが出来る工程をデザインし、彼らとプロダクトをつくっている。こうした活動ができるのは、施設でpoRiffの商品を作っているだけでなく、制作や展示を含めたアート活動、施設の広報物制作、展覧会の企画運営、自主製品の開発や施設外のデザインなどを兼務しているからだそうだ。poRiffとしては、他の施設や展示会場でのワークショップの企画運営と作業工程の設計を行い、営業活動・販売管理と新商品の開発なども行っている。前者は支援、後者は技術提供という複眼的な視点で幾つもの業務を並走させている。

poRiffは様々な障がいを持つひととものをつくるため、いくつかの簡単な工程を複数の利用者で分業している。まずはメンバーが地域のさまざまな場所から素材となるビニール袋を集めてくる。担当の利用者が集めたビニール袋をまっすぐに伸ばして色分けをし、素材の加工によって分類を行なう。ここからハサミが使える人にバトンタッチをし、ビニールを細かく裂いていく。poRiffの特徴的な柄を出すためにサイズが異なる3つのピースを切り出していく。切り出したピースからベースとなる大きいもの、差し色となる小さなピース重ねてアイロンを掛けて大きなシートを作成する。大きいピースと小さいピースの選定者を交代させることで人為的にランダムな柄となるそうだ。早ければ2日間、長い人は2週間かけてシートをつくる。そこからプロダクトの方に合わせて切出し、ミシンを掛けて、商品の完成。シンプルな工程のため、ワークショップの後にパクられたり、改変されたりすることもあるそうだが、ピースのサイズ調整やアイロンがけのタイミングなど、いくつもの試行錯誤の上に成り立っているので表面的なマネはできてもあの特徴的な柄のプロダクトをどこでも作れるわけではないだろう。

当時、芸大生として「人と違うようにあれ」と教育されていた薮内さんは、福祉施設へ出入りする中で健常者ができることを利用者ができるように「させられている」ことに衝撃を受け、デコボコなそのままを認めることをテーマにしたそうだ。こうして開発に1年の期間を有してようやく市場に出回るようになったpoRiffの販路が増えてくる中で、テーマを再考する「poRiff exhibition2014 STANDARD WO UTAGAE!」を実施した。poRiffで何をしているのかなど各利用者さんの日常を切り取るような質問をし、どんな受け答えをしてどのような回答を得たのかを展示した。利用者とのコミュニケーションは発話のほか、筆談や身振り手振りといったものもあったようだ。個人的に注目したいのは、利用者とスタッフにカメラを渡して普段の生活を撮影してもらうというリサーチ。利用者とスタッフと薮内さんが築いてきた関係がよく現れていることだけでなく、薮内さんの創造を超えた超日常的な所作が表出していたからだ。

この展示を通して、薮内さん自身を含めた鑑賞者の価値観や常識が揺さぶられることを期待したという。つくれる、売れるといったことが利用者のモチベーションに影響している。彼らの個性を活かして作れるためにはその特徴を浮き彫りにし、さらに、居場所や働き方に合わせていく調整が求められる。色を見分けるのが苦手な利用者には、カラフルな素材から白黒の素材に変更してツートーンのシート素材を開発した。出来上がったシートの質の高さを褒めてるうちにもっといいものを作ろうと総ドットのバックができあがり、市場でも好評だったのでそのまま正式な商品化につながったと言う。利用者自身がどんな人になりたいのか個性を尊重し、豊かな時間過ごすことができる環境がそこに出来上がっている。

改めて話を聞いてpoRiffの凄さを理解することができた。3つの施設をはしごして製造管理、営業、施設の広報物のデザインまでこなす彼女の横断的な才能に驚きを隠せない。利用者の特徴を引き出すために柔軟なデザインプロセスを念頭に置き、日常の所作から作業を引き出そうとする姿勢はデザインリサーチとオーバラップしており、「ここも共通点あるやん!」とうなずくばかりでした。私も講師としてお話させていただきましたが、彼女や他の講師の話は非常に勉強になり、私自身もとても学びの多い機会となりました。
poRiff

poRiff


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街とブランドの調度良い関係、「FAMILY OF NIESSING」展 名古屋にて

ジュエリーブランドNIESSING(ニーシング)の本社があるドイツ・フレーデンの街やそこで働く人々の姿を写真に収めた本展が名古屋・伏見で開催された。展示に合わせて写真家の濱田英明さんと本展示ディレクターの岡田栄造さんのトークイベントも2015年1月23日に開催されるとのことで出向いてきた。数百枚の写真の中からニーシングらしさが現れた写真をピックアップし、岡田さんと濱田さんが"らしさ"についてコメントを付け加えていく。「いくらでも話せる」と両名がおっしゃられていたように、装飾(デコレーション)装置としてではなく、機能と意匠が統合したプロダクトとしてデザインされているバウハウスを背景に持つ本ブランドが生まれる過程から多くの発見をすることができた。

2013年、建築家・中山英之さんがデザインした微細な彫刻加工が施されたリングのデザインが本プロジェクトのためディレクターに岡田さんを迎えたニーシングから発表された。今回と同様に開催されたトークイベントで、中山さんは工学的な構造とシンプルでも力強い意匠について興奮気味にお話されており、ドイツブランドの持つ質実剛健な印象が残っていた。今回の写真展ではデザインが生まれる環境に注目したことで、その印象とは全く異なり、ブランドと地域との関係を知ることができた。

寡黙で厳格な男性が磨かれた手の感覚を頼りにつくりだす姿ではなく、カメラに向かってにこやかに笑いかけたり、自分たちがつくったであえろうジュエリーをさり気なく身につけていたり、着飾らず主張しすぎない姿が写真から読み取れる。そうした職人やデザイナー、経営者らは、暖かな日が差し込む窓辺で作業していたり、緑があふれる敷地内に工房があったり、かつて使っていた道具が何気なく身近においてあったりとヒューマンフレンドリーな環境で働いているようだ。職場と自宅が近いので自転車で食事を摂りに帰宅するというのも家族との時間を大切にする欧州らしさを感じる。

街にはニーシング関連の彫刻もあるようだが、人工物と自然物の調和にデザインのインスピレーションを置くという話からは、ブランドと街・生活との適度な関係が読み取れる。少し歪んだ天然木をうまく組み合わせて外装材とする建物をさして「あれがニーシングらしさだ。」と説明する。フレーデンを歩けばニーシングを感じ、ニーシングを身に付ければフレーデンを感じるのだろう。中山さんのプロダクトからはニーシングの真面目さと技術力の高さを垣間見ることが出来たが、濱田さんが見せてくださったたくさんの写真と両名のお話からは、国内に多数ある産地と地域の将来像を考えるヒントがたくさんつまったものだった。

はじめての確定申告、Yosemite + Safariではe-tax(WEB版)が使えなかった話

フリーランス1年目、最初の難関だと勝手に思っている「確定申告」がついに訪れる。めんどくさがりなので毎月経費を算出していなかったり、経費で落とせるものがわかっていなかったり、手続きで作成する書類が多かったり…。つまり、税金に関する法律に関する知識がほとんどないのだ。せっかくなのではじめての確定申告で使用したサービスと詰まってしまった箇所についてまとめてみる。

時短まとめ

1. 会計ソフトfreeeと補助本はセットで
2. 電子申告するまでの諸手続きは長い
3. ICカードリーダーはNTTコミュニケーションズ
4. e-TaxソフトはWEB版を使おう


準備①:会計ソフトの導入

まずは会計だろうかということで導入したのが会計ソフト「freee(フリー)」|全自動のクラウド会計ソフトの標準プラン(9,800円/年)、さらに溜まりに溜まったレシートを処理すべくレシート入力代行の人気無料レシート家計簿アプリDr.Wallet|エクセルより簡単のビジネス版(4,000円/月)を申請。レシートの写真を撮影すると人力で金額などを入力してくれるDr. Wallet。

freeeとDr. Walletビジネス版は連携しているので、タグマッチング(e.g. 食費→交際費)などを設定することでほとんど自動で振り分けてくれるのでかなり手間が省ける。しかし、これで年間5万円は正直お高いので年末の1ヶ月だけ使うか、freeeの写真投稿と合わせて毎月管理したほうが良いのかもしれない。フリーランスでの領収書料なんてたかが知れてると思います。

準備②:補助本の購入

世界一ラクにできる確定申告 ~全自動会計ソフト「freee」で手間なく完結! ~ 平成27年版

世界一ラクにできる確定申告 ~全自動会計ソフト「freee」で手間なく完結! ~ 平成27年版

freeeを導入するなら一緒にこの本を買っておくことを強くおすすめする。「ふむふむ」と入力していたけれど品目とか家事按分とか源泉徴収とかがほとんど何を意味しているのか分からなかったので、諦めそうになった。領収証の管理の仕方から経費の線引、国税局が用意する確定申告ソフトの使い方まで大枠をつかめることが出来た。ここで翌年度を想定してクレジットカード、銀行口座を改めて解説することにしました。フリーで働き始める前に手にとっていても良いと思います。

確定申告の電子手続き準備

【e‐Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)で必要なものがわかる。タイトル通り、OSX10.10.1(Yosemite)+ Safari 8.0.2 では申請できませんでした。手続きがめっちゃある上に最新のOSとブラウザでは確定申告書の送信ができなかったのですが、理由は後述。まだ e-taxはWin機でやることがオススメでした。

  1. 電子証明書住基カード)を市役所などで即日発行(1,000円)
  2. ICカードリーダーをAmazonで購入(Gemalto ジェムアルト ICカードリーダ・ライタ 電子申告(e-Tax)対応住基カード用PC USB-TR HWP119316
  3. Javaのインストール https://www.java.com/ja/download/
  4. Javaのセキュリティを修正(システム環境設定>Java>セキュリティ>例外サイト・リストから、サイト・リストの編集に「https://www.keisan.nta.go.jp/」を追加する。)
  5. SmartCard Servicesのインストール installers – SmartCard Services
  6. JPKI利用者クライアントのインストール http://www.jpki.go.jp/download/mac.html
  7. ルート証明書のインストール http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tokushu/jyunbi.htm※なぜかOSの言語設定を日本語にしたらキーチェーンアクセスに認証を登録することが出来た。
  8. 利用者識別番号の取得ーe-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー 【届出書の選択】|e-Tax

ここまできてようやくスタート地点にたったと言えるようだ。住基カードを読み取ると途中で何度もポップアップで出てくるので、公的認証サービスのPWをいれないとわざわざ市役所などで解除手続きとなるので気をつけろ。もっと詳しくという人はググればでてきます。

e-Taxソフト(WEB版)の罠

e-Taxソフトは*.exeとWEB版の2つがある。*.exeも触ってみたけれどこちらもUI/UXが最低最悪なので使う必要は全くない。UI/UXが最低最悪なので使う必要は全くない。
Safarie-Tax(WEB版)を開くと、最新のOSとブラウザのため、
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こんな環境チェック画面が出てきます。気にせずに「閉じる」をクリックし、続いてログインをしましょう。準備で登録した利用者識別番号とログインパスワードを入力し、ログインする。利用者情報をポチポチと入力して、電子証明書の確認画面まで届くもここで「ICカードを認識できませんでした。設定を確認の上、再試行してください。」というエラーが出てしまう。なお、「JPKI利用者ソフト」からICカードの有効性は認証されている。

ここで一旦、Win機で同様の手続きを踏んでICカードを読みこませると一発で認識される。。もう一度、Macに戻りサイドメニューに表示された「申告・申請・納税」をクリック。「作成済みデータの利用」から、freeeで作成した*.xtxファイルを登録し、再び電子証明の付与…。ここでも「ICカードを認識できませんでした。設定を確認の上、再試行してください。」というエラーが。「ICカードを認識できませんでした。設定を確認の上、再試行してください。」と表示されました。どうすればいいですか。|e-Tax e-Taxのトラブルシューティングを頼りにSmartCard Servicesを入れなおしてみたが結果は変わらず。JPKI利用者ソフトではカードの情報が読み取れているし、署名も付与できている。

原因が分からず悔しいけれどWin機で手続きを済ませる。5分ほどで完了。あっさり過ぎる…。

原因はカードリーダーとブラウザの相性?

MacのYosemite&Safariでe-Tax(確定申告書をネット提出)する設定と注意点 | EX-IT
e-TaxはMac Yosemiteで出来た : ■■ Ainame60 たまたま日記 ■■
2015年となりさっそくe-Taxで確定申告を済ませる人たちがいるようだ。Yosemite + Safariで。全く同じ手続きをしているが僕は出来ない。唯一異なるのはICカードリーダーだけのようだ。僕はGemaltoのリーダーだが、両者ともにNTTコミュニケーションズICカードリーダーを使用している。

同様のエラーが出ている人もGemaltoのリーダーを使っていることからもかなり怪しい。yosemiteでe-taxできない | Apple サポートコミュニティなお、Win機ではさっくさくと動いていたのでOSとブラウザとリーダーの相性が原因と予測できる。

まとめ

想像以上に国がつくるサービスはWindowsに準拠しているのでクリエイティブ関係のフリーランスには辛いのが現状だ。わざわざ仮想OSで登録するのもめんどくさいけれど、周りに自由に使えるWin機がなければ導入したほうが良さそう。やっぱり書類をいちいち作らなくていいのは魅力的だ。はやく最新OSでも耐えうるサービスに更新して欲しい。

というわけで、Yosemite + Safariで確定申告をする場合の注意点は、
煩わしい事前手続きを乗り越えて、NTTコミュニケーションズものICカードリーダーで行いましょう。

2015年にやること・やらないこと

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1年の計は元旦にあり。すでに元旦は過ぎているけれど、100個も書き出さないのでどうにすべりこませて欲しい。

やらないこと

  1. 週7勤労、2日以上の徹夜
  2. 喫煙
  3. 経営コンサルきどり

2014年も注意をしていたのであまり週7日勤務した月はなかったと思うけれど、長期的な働きを考えた時にきちんと休みを取る選択肢を持つこと。それが「仕事をしない日」パーカーシャツに表れている。コレと同じく健康を考える上で、1年程度続けていた喫煙をやめることにする。修士論文執筆中にはじめてしまったものなので、やめるのは苦じゃない。年末から減煙中なので春先にはきっぱりとやめているはずです。

経営コンサルきどりは、自分が何を生み出していて報酬を得ているのか分からなくする。契約も曖昧だし、自分の事業を曇らせることになりかねない。きちんと契約書を作成したり、事業区分を明確にして実行する時間をとるためにも頭でっかちな経営コンサルきどりはやめます。僕はデザインリサーチャー、サービスデザイナーです。もっともこれも事業をよく分からなくさせていると指摘されているのですが…。

やること

  1. 事務所の名前を決める
  2. 事務所の開設
  3. インターンを雇う
  4. 洋書を10冊読む
  5. 和書を10冊以上読む
  6. 論文を30本以上読む
  7. 論文執筆
  8. APPのウェブサイトを充実
  9. APPで持続可能性をテーマにトークイベントを実施

2014年は事業内容を限定せず、選択肢を増やすという意味でとりあえず「始動してみよう!」とさまざまなこと{エディトリアルデザイン、デザインディレクター、広報ディレクター、編集・構成、リサーチ、プランニング}に挑戦しました。2014年5月から12月までの7ヶ月間で見えてきた自分の強みというのは、限定的な"かたちのデザイン"ではなく、領域横断する"仕組みのデザイン"で生まれる価値観を示す包括的なことだと分かりました。「今何しているの?」と聞かれて困ることがあった前半ですが、現在は、少しずつ明確な方向が見えてきたかなと感じています。

事業の方向性が見えてきたこともあり、よやく事務所名を浸けての活動と活動拠点の確保に向けて動き出しているところです。動きやすさでは栄のような中心部が良いのですが、プロジェクトをともに実行する人びとに活動をきちんと説明することを考えると、旧東海道沿いにある有松を拠点にしたほうが良いかもしれません。また、この事務所もただのハコとして考えるのではなく、ARIMATSU PORTAL; PROJECTを実行したり、地域や状況からものづくりそのものを考え直す機会となるようにしたいです。
フィンランドのアールト大学でデザインラボが地域と学生、研究者と企業、学生と起業家を結びつけていたインキュベーションオフィスにひどく感銘をうけたのを思い出します。異業種のことなので人材系の事業は考えていませんが、インターン生を雇うところから身近な人的資本をどのように流動・定着させることが出来るのか、企業やスタジオという組織ではなく、個々のクリエイターがネットワークする集団として機能する仕組みを実行できないかなと考えています。

昨年の2014年は論文執筆期間もあったので、34冊の書籍を読んでいました。50冊読むことを目標としていたのですが、事業が始まってからはなれない諸作業に手間取り、年末に持ち返すことになりました。2016年までに博士後期課程への進学を検討していることもあるので、2015年は書籍だけでなく論文の読書量も増やしていくことを検討しています。研究機関から離れてしまったことでアクセス料金という障壁が発生してしまったことが残念です。。インクルーシブデザイン×伝統工芸が大きなテーマとなりそうなので、メタ・デザイン関連を中心に進めれればなと。また、この経験がARIMATSU PORTAL; PROJECTでの実践にいい影響がでることを期待しています。

ARIMATSU PORTAL; PROJECTで発行しているフリーペーパー PORTAL; ISSUEでは、トークイベントPORTAL; SALON #01~#04の書き起こしテキストを週力しているのですが、#05~08を収録したISSUE #02の発行が遅れています。春までにPORTAL; ISSUE #02を発行し、後のトークイベントで配布できるように編集を進めています。昨年のPOTAL; SALONでは、「関係と環境」に着目して愛知県を拠点に活動する方を6名、県外で活動する方を2名お呼びしました。今年は開催回数を減らすことを検討しているのですが、その分、内容をより濃いものにして集めのドキュメントとして公開したいです。APPの活動はできるかぎり日英のダブルランゲージでアーカイブ化したいです。


さて、今年はどれだけプロジェクトを濃密なものに出来るか、事業を進行できるか、新しい仲間に出会えるか楽しみです。

2014年に読んだ本まとめ

あけましておめでとうございます。本年も定例化され始めた「読んだ本まとめ」から始めたく思います。
今年はフリーランスとして仕事を始めたこともあり例年に比べて読書量が下がってしまいました。春先と年末にまとめて読み進めた書籍が大半を占めており、社会人が継続的に読書を行うことのハードルを感じました。(ネットへのアクセス時間を減らせば良いだけなのですが…)
論文執筆をしていた昨年に比べ、ジャンルはバラバラになりますが、大別すると「オープンデザイン/デジタルファフリケーション」「インクルージョン/サスティナビリティ」になるかなと。デザインの定義が広がる中で、メタ・デザイン=デザインするためのデザインを考えるにおいて、情報のオープンネスや自由主義的な研究活動を参考に製造業がどのような情報を提供し、デザイナーの活動を同期づけることができるのかを考えたり、自主プロジェクトにおける伝統とデジタルファフリケーションへの応用を考えていたように思います。
また、障害のある人とのものづくりプロジェクトでは、包摂された労働環境の設計に挑戦する上で、インクルーシブデザイン関連の書籍を改めて読み直すことになりました。定量評価に重きを置いた国内の持続可能性に関する議論も、コミュニティや領域横断型組織などに対する質的な研究が進み、柔軟性・継続性・継承性への議論へとシフトしてきているのではないかなと実感することになりました。

2015年の目標として、博士課程への進学も考慮して書籍だけでなく論文も読んでいこうと考えています。大学に所属していないためアクセス料金が発生してしまうのが辛いところですね…。また、積み上げられている洋書を読み進めていきたいです。長々となりましたが、本年一発目のエントリーでした。

2014年の読書メーター
読んだ本の数:34冊
読んだページ数:9134ページ
ナイス数:22ナイス

サイファーパンク インターネットの自由と未来サイファーパンク インターネットの自由と未来
読了日:12月31日 著者:ジュリアン・アサンジ,ジェイコブ・アッペルバウム,アンディ・ミュラー=マグーン,ジェレミー・ジマーマン
批判的工学主義の建築:ソーシャル・アーキテクチャをめざして批判的工学主義の建築:ソーシャル・アーキテクチャをめざして
読了日:12月27日 著者:藤村龍至
「インクルーシブデザイン」という発想  排除しないプロセスのデザイン「インクルーシブデザイン」という発想 排除しないプロセスのデザイン
読了日:12月26日 著者:ジュリア・カセム
縮小都市の挑戦 (岩波新書)縮小都市の挑戦 (岩波新書)
読了日:12月25日 著者:矢作弘
バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!感想
リバタリアニズムに則り、生物学的な実践をDIYで行なう野生の研究者たちが開く世界は、本書でも紹介されているようにアメリカ西海岸でベンチャー企業が発生していく様と共通している。技術な背景的には、機材のデスクトップ化とオンラインによる学術研究検索コスト低下が上げられている。それ以上に研究を独自に実践し、社会変革を狙うパンク精神と環境をどのように日本で構築できるかについて思考をめぐらしていた。
読了日:12月23日 著者:マーカス・ウォールセン
小豆島にみる日本の未来のつくり方: 瀬戸内国際芸術祭2013 小豆島 醤の郷+坂手港プロジェクト「観光から関係へ」ドキュメント小豆島にみる日本の未来のつくり方: 瀬戸内国際芸術祭2013 小豆島 醤の郷+坂手港プロジェクト「観光から関係へ」ドキュメント感想
地域における外部コンテンツの設置可能性ではなく、外部クリエイターと当事者との関係に着目したアートプロジェクト。地域内部にある魅力や課題、そのソリューションをもコンテンツとして成立するアーキテクチャに注目したい。
読了日:12月19日 著者:椿昇,多田智美,原田祐馬
路上観察学入門 (ちくま文庫)路上観察学入門 (ちくま文庫)感想
赤瀬川氏逝去の報を受けて手にとった一冊。既存の価値を既存の方法でリサーチする学術的研究と違い、潜在的な価値を見出す実験的な試みはデザインリサーチの社会学的な調査とも重なる。ただし、要素の抽出と状況の精細な記述に重きを置いているため、「純粋階段」のように工学的機能が無批判に取り上げられて建築要素の発生に接続されていない点が気になる。見出すことから試作へと繋げる能力が現代では必要ではないだろうか。
読了日:12月17日 著者:
人間の条件 (ちくま学芸文庫)人間の条件 (ちくま学芸文庫)
読了日:12月7日 著者:ハンナアレント
年収は「住むところ」で決まる  雇用とイノベーションの都市経済学年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学感想
コミュニティが先か、ビジネスが先かとの問いに、本書では後者を上げている。新しい価値が根付き始めた仕事(ITベンチャーなど)は、サービス拡大に連れて人を引きつける力が働き、付随して利害関係者の拡大にも繋がるとしている。地域が面白いのではなく、人が面白いという実感は、日本のまちづくりでもよく分かる。
読了日:11月21日 著者:エンリコ・モレッティ
暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)感想
暗黙知と呼ばれる行動や認知に至るまでの構造を明らかにし、その階層の上下行為を「創発」と名付けている。UI/UXやサービスデザインのフロントエンドの基礎理論として読める。
読了日:10月27日 著者:マイケルポランニー
マクルーハン理論―電子メディアの可能性 (平凡社ライブラリー)マクルーハン理論―電子メディアの可能性 (平凡社ライブラリー)
読了日:10月23日 著者:マーシャルマクルーハン,エドマンドカーペンター
サイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探るサイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る感想
いつのまにか蓄積された「当たり前」を崩し、状況の調査からデータを抽出し、洞察として提示するデザインリサーチとはどういうものか理解できる。内容として目新しさは少なく、リサーチャー希望者、クライアント向けといったところ。
読了日:9月3日 著者:ヤン・チップチェイス,サイモン・スタインハルト
スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)
読了日:8月15日 著者:F・アーンスト・シューマッハー
fashionista ファッションの批評誌fashionista ファッションの批評誌
読了日:7月21日 著者:千葉雅也蘆田裕史
vanitas No.002 | ファッションの批評誌vanitas No.002 | ファッションの批評誌
読了日:7月21日 著者:西尾美也,北山晴一,ここのがっこう,南後由和,成実弘至,津田和俊,星野太
vanitas No.003 | ファッションの批評誌vanitas No.003 | ファッションの批評誌
読了日:7月21日 著者:proef,柳田剛,松川昌平,脇田玲,平芳裕子,水野祐,趙知海,大久保美紀,キャロラインエヴァンス,nukeme,koso,久保寺恭子
柳田国男と今和次郎 (平凡社新書)柳田国男と今和次郎 (平凡社新書)
読了日:7月19日 著者:畑中章宏
新・パーソナルブランディング――独立・起業を成功させる18のステップ新・パーソナルブランディング――独立・起業を成功させる18のステップ
読了日:7月4日 著者:西澤明洋
なめらかな社会とその敵なめらかな社会とその敵
読了日:6月19日 著者:鈴木健
SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)
読了日:6月8日 著者:田中浩也
デザイン史とは何か―モノ文化の構造と生成デザイン史とは何か―モノ文化の構造と生成感想
デザイン史とあるが、単に歴史学的にプロダクトやクラフト、デザイン行為を位置付けることについて論じるわけではない。本書では、それらの背景を階層立てて構造的に論じることによって生成されることが何を意味するのかを問うている。デザイン研究者だけでなくモノを取り巻く環境を研究するものにとって入門的な一冊ではないか。
読了日:5月31日 著者:ジョンウォーカー
オープンデザイン ―参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)オープンデザイン ―参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)感想
本書の狙いは、オープンなデザインを生むことではなくデザインをオープンにすることにある。デザインをオープンにするにあたり、その物質だけでなく、道具や場所、さらに、ライセンスなどを含めて公開すること。すなわち、設計・分解・改変を実行する環境の設計が同時に求められている。デザインの対象が複雑化し、デザイナーの役割が製品を生み出すことにとどまらず、物事を整理することや調整することにまで広がり、それを実施する環境を整えて行く(メタデザイン)にまで及んでいることがよくわかる。原文webも良く出来ているので読者はチェッ
読了日:5月25日 著者:BasVanAbel,LucasEvers,RoelKlaassen,PeterTroxler
日本のヒップホップ―文化グローバリゼーションの〈現場〉日本のヒップホップ―文化グローバリゼーションの〈現場〉感想
音楽史ではなく、文化史として日本のヒップホップシーンを捉えた本書。90年〜00年代前半の<現場>を文化人類学的にリサーチをし、日本人のグローバリゼーションやダイバーシティについて記述されている。当時と今では現場・マネタイズのあり方が変わっているように感じるため、現場の再定義が求められるように思える。グローバリゼーションと日本人性についての章がとても面白い。
読了日:5月4日 著者:イアン・コンドリー
HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由感想
今年読んだ本の中でダントツに興奮した。歴史とジャンルを次々と横断し、デザインが開いてきた社会の礎を見せてくれる。クリティカルデザイン、サスティナブルデザイン、ソーシャルデザインについて記述されている章が興味深かった。400ページ超もあるが、章立てが年代とは一致しないので2章以降は興味があるところから読み進めることをお勧めする。
読了日:5月3日 著者:アリス・ローソーン
クリエイターのためのアートマネジメント―常識と法律クリエイターのためのアートマネジメント―常識と法律感想
著作権の他、契約書関係の作例が参考になる。気をつけているものの対等な関係で契約を結ぶことは若手クリエイターが難しいという現状に苦しむが、その分きちんと学び対応するしかない。
読了日:4月22日 著者:作田知樹
エコロジーをデザインするエコロジーをデザインする感想
うーん、テーマがビックスケールなものも多く消化不良感が半端ない。短な問題として感じにくいのが問題だろうか。デザインを冠しているのであれば、巨大なシステム設計だけでなくタッチポイントについても記述してもらいたかった。そのため、福祉や建築分野は理解しやすいものだった。
読了日:4月20日 著者:山田利明,河本英夫,稲垣諭
エコロジーをデザインするエコロジーをデザインする
読了日:4月20日 著者:山田利明,河本英夫,稲垣諭
失敗学―デザイン工学のパラドクス失敗学―デザイン工学のパラドクス感想
パパネックは、全ての人間はデザイナーであると記したように、本書では、選択と決定を行う全ての動作がデザインであると冒頭に触れている。成功だけでなく失敗体験もまたデザインの革新と改善に寄与しているということであり、慢心せずに失敗から学ぶことの重要性を説く。失敗はネガティブな廃棄を意味するのでなく、次への指標となる。そこで、日常品をブリコラージュし構築しているプロコンシューマーの実践を見つめるデザインリサーチは、失敗学的な試みであるだろう。
読了日:4月6日 著者:ヘンリペトロスキ,柏木博
インクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザインインクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザイン感想
社会包摂を理念に掲げるインクルーシブデザインの歴史と国内での実践が数多く収録されているだけでなく、発祥の地であるイギリスとデザインの社会関係(ロジャー/ジュリア)、デザインリサーチの範疇(水野・小島)に関する章が非常に興味深い。本書ではユニバーサルデザインとインクルーシブデザインが対比されているが、すなわち、design of〜からdesign for〜へと変容する社会におけるデザイナーとは、複雑さから規範(コンテンツ)を規定することでなく、複雑さから関係(アーキテクチャ)を設計することだと言えそうである
読了日:4月3日 著者:ジュリアカセム,平井康之,塩瀬隆之,森下静香,水野大二郎,小島清樹,荒井利春,岡崎智美,梅田亜由美,小池禎,田邊友香,木下洋二郎,家成俊勝,桑原あきら
グロースハッカーグロースハッカー感想
さっくりと読める内容。グロースハックは、サービスデザインのエンジニアよりの発想と感じる。様々なタッチポイントから予測して広告を打つのではなく、ユーザーのインタラクションによって複数から最適解を選ぶ。対象だけでなく、サービスによって方法が異なるためアーキテクチャの設計も異なると繰り返されている。
読了日:3月20日 著者:ライアン・ホリデイ
Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学感想
ほとんど自己啓発本。プロモーションという立場でMacintoshに関わった著者が、ジョブスの金言()からマッキントッシュの働き方、組織論、リーダーシップ的な要素を抽出。なんといっても目次を読めば殆どの内容が理解できるシンプルさだけは評価したい。
読了日:3月17日 著者:ケン・シーガル
ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)感想
本書で取り上げられるマイルドヤンキーの行動(地元思考、安定思考)は、高齢者の行動と共通点が多そう。両者の視点は公共性を建築・デザインやサービスが帯びて行く上で視座となり得そうだが、小さな集団を群として捉えるような仕組みとタッチポイントのデザインは避けられない。
読了日:3月17日 著者:原田曜平
消費社会の神話と構造 普及版消費社会の神話と構造 普及版
読了日:1月12日 著者:ジャンボードリヤール
だれのための仕事――労働vs余暇を超えて (講談社学術文庫)だれのための仕事――労働vs余暇を超えて (講談社学術文庫)
読了日:1月9日 著者:鷲田清一

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