料理と掃除の好きなところは、その過程

新しい環境での生活が始まり、はや2週間。寝ては起きては仕事に繰り出し、帰宅しても仕事して寝る生活。ゆっくりしているヒマがなかなか取れないのだが、今夜は久しぶりに料理をしてみることにした。
一緒に食べることはできないけど、一緒に過ごす時間を想像しながらメニューを組み立てる。スーパーで食材を買い、帰宅して少しずつ調理。野菜だった食材が具材に変わり、食事に変わっていく。野菜だったものが皮となり、皮が生ゴミとなり、廃棄物に変わっていく。これまでも美味しくご飯を食べていたけれど、僕の生活から失われていた「間の連続」が見える。
美味しく食べ、皿を片付ける。なんとなく部屋も片付ける。モノが整理されていくようて、人の輪郭をなぞっているようでもある。整然とした状態にあこがれているのでなく、生み出されていくような、壊れていくような「間の連続」を楽しんでいるんだと気がついた。
普段の仕事と同じような間隔で生活をしているのか、生活が仕事に生かされているのかわからない。なんとなくうれしい発見だった。

京都工芸繊維大学 KYOTO Design Labのパブリケーションマネージャーに就任しました

2017年4月3日より、母校である京都工芸繊維大学 KYOTO Design Labの特任職員を務めることになります。月曜日から木曜日は京都で生活を、金曜日から日曜日は名古屋で生活をする2拠点活動です。

 

本組織では海外の教育機関やクリエイターを大学に招聘し、産官学連携などさまざまなプロジェクトを実行しています。僕はパブリケーションマネージャーの肩書で活動し、広報PRやメディアの制作運営などを担当していくことになります。KYOTO Design Labの活動は、リンク先をご覧ください。 (http://www.d-lab.kit.ac.jp/)

少なくとも今年度いっぱいはこれまで同様に名古屋での仕事を行っていますが、一部制限しての活動となることをご容赦下さい。D-labのパブリケーションマネージャー、DESIGNEASTのプロジェクトマネージャー、名古屋ではデザインリサーチャー/サービスデザイナーと片仮名で殴りつける肩書き。これまで以上に怪しげに、楽しく、動き回っていきたいと思います。引き続きよろしくお願いします!

 

そして、KITの先輩後輩同級生のみなさんは就職説明会だったりで、来るときはぜひ連絡下さいね!久々の京都なのでむちゃくちゃ楽しみです。ご飯などさまざまなお誘いの連絡、お待ちしております!!

名古屋の魅力を発信、SNUG CITY NAGOYAの取り組み。 名古屋はシティプロモーションの先に何を見るのか、僕たちは何ができるのか。

snug.city.nagoya.jp

名古屋市が仕掛けるウェブプロモーション。今回はオウンドメディアを手がけているようで、芸能人だったり地元を知る人と疑似観光をするという内容。浅井健一さんのような名古屋出身で名古屋好きな人へのインタビューが続くのかな。次のインタビューは誰か少し気になります。

しかし、正直な感想は『本当なのか、これ…。コンテンツもデザインも、、』という内容です。一体誰が、どのような時に、どうやって見るのか。そして、なぜこのサイトを見るのか、が設計できているようには思えない。
でもこれって、ウェブデザインやコンテンツを制作している側の問題ではなくて、発注者側、つまり名古屋市が整理できていないからなんじゃないかな〜。

そんな否定的な印象を持ってしまったのですが、僕自身が一番関心があるのは、ページ下部にある「名古屋魅力向上・発信戦略」というPDFです。OTHERと隅に追いやられているけれど、重要な整理がされている。暴力的にまとめると、10年間で名古屋の①イメージ刷新、②愛着醸成、③発信!発信!発信!を行う計画だということです。名古屋市が市民と一緒に発信した先にどんな未来を思い描いているのだろうか。受け取った側は何ができるのだろうか。僕も未来に向けてどんな動きをできるのか考えていきたい。

例えばだけど、ベルリンは2030年までこういう戦略で進めるって方針を発表しています。 BerlinStrategy Urban Development Concept Berlin 2030 (PDF)
続いてこっちはNYCが出しているOne New York The Plan for a Strong and Just City (PDF) です。僕は当たり前だと思うのですが、きちんと目標Visionと手続きStrategyを出している。やりっぱなしじゃなくて、きちんと評価するということですね。名古屋市はたぶん、これ。名古屋市:名古屋市基本構想(市政情報)です。デザインを軸足にもっとできることはあるはずだと改めて認識しました。頑張ろう。

デザインの1, 3, 5, 10年後

年度末は行政関係の仕事が続くため、どうしても毎日があっという間に終わってしまう。日々、仕事をこなしながらこうした日々がいつまで続くのだろうかと考えるときもある。あこがれの建築家やデザイナーと衝撃の出会いをした8年ほど前、彼らは30-35歳でリーマンショック以後のクリエイティブ業界に身を置きながら、なんとか新しいデザインの言語や態度を模索としていた。デザインする状況をデザインすると始めたDESIGNEAST (大阪)、議論の場を設計するLIVE ROUND ABOUT JOUNAL (東京)、今何をデザインしているのか伝えるDESIGNING? (福岡)など、自主プロジェクトを立ち上げて態度を表明し、わからないことに立ち向かいながら議論を巻き起こしていく。SNSの隆盛期とも合わさり、twitter実況やその場で発行などリアルタイム性の高い情報環境が設計され、僕自身も議論の輪が広がっていくのを肌で感じていた。
そして、その時に感化された学生たちも30代を迎える。私も今年30歳になる。置かれた状況はかなり変わっている。私たちの世代は氷河期の再来、大学院へ進学しても就職率は低く、特にスーゼネや大手広告代理店へ行く同級生は数えられる程度だった。今ではオリンピックや地方創生によってばらまかれた文化予算が潤沢となり、クリエイティブ業界は今では新卒採用に躍起になっている。そんな未来はいつまで続くのだろうか。

1年後、2018年。東京オリンピックまであと2年、主要都市の建設ラッシュはまだ続く。インバウンドによって宿泊施設は増え、民泊の法整備が進む中、リノベーションなど投資物件も増加が予想される*1。地方の情報を第三者が"良い感じ"に伝えるローカルメディアが更に増え、ローカリティが抽出されたクオリティの高いお土産が増えつつある。

3年後、2020年。東京オリンピックが開催され、国内は特需。前後3ヶ月はオリンピックついでに日本を訪れた観光客がいろいろなところを訪れ、国民の宿泊や移動に影響が表れる。旅行・文化・歴史フリークスによって、日本人が忘れてしまっていたようなエリア、モノ、人柄などが再び脚光を浴びる*2。自分で作って自分で売るといった小商いを試みをする兼業デザインナーが少しずつ増え、議論の場はさらに縮小する。

5年後、2022年。地方創生・文化予算が縮小され、元気だったNPOや広報は市場を刺激しようと試みるも財布の紐が固くなっている。ゼネコンは海外へ仕事を求め、英語を使えるデザイナーもソーシャルデザインやマーケットを求めて途上国に。国内で不満と焦燥に駆られた若手デザイナーらが自主的な企画を立ち始める。国内か国外か、行政か企業か。小商い系など第3の道について。

10年後、2027年。シンギュラリティを経て、AIがクリエイティブ業界に本格参入。○○なデザインはプログラムで起こされ、文字詰めや微妙なズレを直すオペレーターとしてのデザイナーと独創的なスターデザイナー。スターとオペレーターの間にいたローカルデザイナーがどんどんプログラムに置き換わっていく。Adobeがデザインのソフトウェア会社からAIを用いたデザインのサービス会社へ。プログラムのオンとオフをするだけの自称デザイナーがボタンプッシャーと呼ばれる。人間が人間のためにデザインする道理を探求するデザイナーが表れる。


このストーリーはあまり嬉しくない未来だが、完全に無いと言い切れないのが怖い。こうなるかもしれない(最悪な)未来の中で、デザインリサーチャーとして僕は何ができるのか。これまでにカバーする領域とみなされていなかった領域に目を向けること、これに尽きる。これはデザインリサーチャー自らがグラフィックやウェブをデザインしようということではない。紙とかウェブと行ったオブジェクトでない、福祉や金融などのサブジェクトに目を向けるということ。拡張される体験のデザインを更に広げ、具体化させること。そのために知らなかればわからないことに目を向ける。

身の回りのことを知っているつもりで仕事をしているとあっという間に活躍の場はなくなる不安と向き合いながら。

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*2:e.g.) 海外反応! I LOVE JAPAN  : 外国人女性「日本のカプセルホテルに泊まってみたよ!」 海外の反応。 http://blog.livedoor.jp/zzcj/archives/51929418.html

寛容性で実現する フィンランド発"(許可なし)ワンデイ・フードキャラバン" レストランデイ

フィンランドで楽しい経験のひとつ、1日限定誰でもシェフになれるレストランデイ。路上だろうが、軒下だろうが、自分の部屋だろうが好き勝手にどこでもレストランを開くことができるイベントという活動。恐ろしいかもしれないけれど、ゲリライベント発なので許可なし。とはいえ、自己責任のもとでみんな楽しんでいる。

アールト大学の友人の中には凝って出店している人もいれば、路上で家族や友だちとBBQかなっていうレベルまであるのだけど、街の雰囲気がとても明るくなる。日本人ってだけで、「おい、寿司か?ラーメンか?」と聞かれたことを思い出した。結局出店していないんだけど。

2012年には東京でも開催していたけれど、今はどうなってるんだろうとめちゃくちゃ久しぶりに調べてたら、留学中は年4日開催だったのに2016年からは5月は毎日レストランデイ。1ヶ月となると商業的な匂いがしないでもないけど、あちこちで発生するからそれもいいかもしれない。

とはいえ、日本でやるにはやっぱり規則が重くのしかかる。路上だろうが家だろうが許可がないと罰金。条例でこの日だけは許可なしだから自己責任だよってできないものなんだろうか…。現在もフィンランドで出店時に必要なものは①地図サービスのアカウント、②イベント(出店)情報の記述、③登録のみだそうだ。片目をつぶってくれているということらしい。

タクティカル・アーバニズムもそうだけど、日本の法律はよくできているので解釈を楽しまないと路上での実践が難しい。社会実験という手口で製造許可を持たないレストランデイはできるのかな?もっと考えないと厳しいのかも。東京の人たちはどうやってるんだろうか、聞いてみたい。

追記
日本では、食品衛生法21条において営業許可を取得しないと自宅、店舗、路上であっても基本的には販売できず、これがハードルとなって調理の手腕を震えない人が多い。特に厳しいのが設備面で、家庭と営業用は分ける必要があるのでお金も当然かかってしまう。とはいえ、法律が施工されたのが戦後の昭和28年で、たしかに衛生面では今よりもずっと不安な時代。メーカー必至の努力で衛生設備が整えられ、食中毒事件は平成11年から平成27年で約半数にまで減少している。
地域資源を活かした食品開発やイベントを実施する上で、設備のハードルは非常に高い。いきなりすっ飛ばして許可無しで調理販売可能は難しいだろうが、家庭の調理環境でも製造許可が降りるような規制緩和の方向に向かうことはできないものなのだろうか。
食品の製造、販売、処理業の許可・保健所


参考リンク:
www.visitfinland.com

Every day is Restaurant Day now
Every day is Restaurant Day now
2016年5月から毎日開催になったよという流れを創始者のコメントと投稿しています。

関連投稿
pnch.hatenablog.com


参考書籍:

Tactical Urbanism: Short-term Action for Long-term Change

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Streetfight: Handbook for an Urban Revolution

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Uneven Growth: Tactical Urbanisms for Expanding Megacities

Uneven Growth: Tactical Urbanisms for Expanding Megacities