(1)デザインリサーチャーという働き方がわかる書籍

デザインリサーチャー、デザインリサーチと耳慣れない言葉。「デザイン+リサーチ=デザインリサーチなんでしょ。」と思っている方やデザインや建築を学んでいるけどデザインの根拠を探すことに迷いがある方、また逆にマーケティングや教育を学びつつデザインの可能性に興味を持っている方。そんな方々にデザインリサーチ、デザインリサーチャーのイメージがある程度つかめられる、日本語の書籍を紹介します。今回の入門編となる第1回はデザインリサーチャーの働き方や意義がわかる書籍を紹介。 

 

サイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る

サイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る

 

 

国際的なデザインファームのデザインリサーチャーによる1冊。大きな枠組みから技法までこの1冊で掴むことができます。事例もあるので読みやすく、巻末の「デザインリサーチの8原則」は、片隅に置いておいて損はありません。 

 

デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

同じくデザインファームIDEOが提唱したことで大きく話題となった「デザイン思考」を理解する1冊。観察調査をベースとしたリサーチがデザインの標準となったのも彼らの功績が非常に大きい。対象となるユーザーに徹底的な観察調査を行うIDEOがその方法を獲得した背景が理解できます。

 

リバース・イノベーション

リバース・イノベーション

 

 

先進国で開発され、コモディティ化された製品が途上国に行き渡る。といった、トップダウン的なデザインではなく、途上国だからこそ生まれたユニークな製品を発展させて先進国へ逆輸入させるリバースイノベーション。今では当たり前な無線マウス開発には、途上国でのリサーチがなければ生まれなかった可能性があるなど驚きの内容。

 

世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある

世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある

 

 

なぜデザインが必要なのか――世界を変えるイノベーションの最前線

なぜデザインが必要なのか――世界を変えるイノベーションの最前線

 

 最後の2冊はまとめて紹介。今では当たり前に聞くようになってきたソーシャルデザイン、コミュニティデザインはここから生まれた。途上国の課題を先進国で発想する方法は先述の通り、コスト的、教育的、技術的な理由なら持続的ではないケースが多かった。そこで、途上国の課題を途上国で見つけ、途上国の人と解決方法を探り、途上国でその手立てを実装するプロジェクトを紹介する。

なぜデザインリサーチなのか 

さて、今回紹介した5冊は現在進行形で発展するデザインリサーチのこれまでを理解する手がかりとなるでしょう。読み進めるうちに似たような概念や方法論、思想があることに困惑するかもしれませんが、まずは気にせず全体像の把握をすることが大切です。「なぜデザインリサーチが生まれたのか」を理解した上で、方法論や学術的な位置付けを追うことが大切です。読み進めながら、「なぜデザイナーでなく、デザインリサーチャーと固有名詞を持つのか。」考えながら読むことをおすすめします。

2015年に読んだ本まとめ

2015年は年間49冊、目標としていた和書10冊以上はクリアしたけれど、洋書10冊はクリアできませんでした。
昨年はあらためて「デザインとは」を考える書籍を読みながら、仕事に関連する別ジャンルの本を手に取っていたのがわかります。デザイン以外の本を多く読んだと思っていたのですが、やっぱりデザインの本が多かったですね。
2016年はデザインだけではなく、経営的なものから民族学的なものを含めて50冊を目指したいです。

2015年の読書メーター
読んだ本の数:49冊
読んだページ数:12581ページ
ナイス数:27ナイス

蚕: 絹糸を吐く虫と日本人蚕: 絹糸を吐く虫と日本人感想
日本の近代産業を支えた製糸業がいかに農家の生活に根付き、村社会へ浸透したかを探る一冊。最も身近で当たり前のように存在する衣服を手にする術は、かくも民衆の動員が必要だったのかと想いを馳せる。サスティナブルなモノづくりとして今、再び注目がされつつある養蚕を更新していく手がかりを見出すことができた。
読了日:12月29日 著者:畑中章宏
世界を変えるデザイン2――スラムに学ぶ生活空間のイノベーション世界を変えるデザイン2――スラムに学ぶ生活空間のイノベーション
読了日:12月25日 著者:
施設参謀―――建設リスクを経営資源に変えるコンサルティング施設参謀―――建設リスクを経営資源に変えるコンサルティング
読了日:12月15日 著者:川原秀仁
WIRED VOL.20 (GQ JAPAN 2016年1月号増刊)/特集 A.I.(人工知能)WIRED VOL.20 (GQ JAPAN 2016年1月号増刊)/特集 A.I.(人工知能)
読了日:12月14日 著者:
シリコンバレー式 自分を変える最強の食事シリコンバレー式 自分を変える最強の食事感想
食事が起因する時間の無駄に悩むことはだれにでも起きることだろう。食べすぎて眠たくなったり、集中するのに時間がかかったり、二日酔いで午前中を棒に振ったり。そうした悩みを開放するかのように、多忙な日々を送った著者による科学的な(本書だけでは掴めないが)食生活の見直しを図る一冊。日本とアメリカでは食生活も食材も異なるため、すべてを参考にすることはできないが、朝食や運動のタイミングなどは取り入れることができそうだ。大げさな慣用句が気になるけれど、食事へのちょっとした心がけで生活の充実度は大きく向上しそうだ。
読了日:12月13日 著者:デイヴ・アスプリー
スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができることスペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること
読了日:12月1日 著者:アンソニー・ダン,フィオーナ・レイビー
断片的なものの社会学断片的なものの社会学
読了日:11月26日 著者:岸政彦
角川インターネット講座15 ネットで進化する人類 ビフォア/アフター・インターネット角川インターネット講座15 ネットで進化する人類 ビフォア/アフター・インターネット
読了日:11月24日 著者:
民俗学への招待 (ちくま新書 (064))民俗学への招待 (ちくま新書 (064))
読了日:11月24日 著者:宮田登
死者の花嫁 葬送と追想の列島史死者の花嫁 葬送と追想の列島史感想
民俗学的な見地から葬送儀礼の変容、墓の立ち現れについて考察をする一冊。生から死、あるいは死から生の間に、概念的に存在する人間らしさとは何かを考える。本書で触れられている近世以降に現れた顕名な死者が加速し、現代のように明確な生と死の線引きを引き起こしているという指摘が興味深い。冠婚葬祭における人への段階、あるいは人ならざるものへの段階が稀薄な社会において、格差が広がり社会的包摂が崩壊される恐怖にかられる。広い意味でのコミュニティとはなにか考える一冊だった。
読了日:11月16日 著者:佐藤弘夫
限界芸術論 (ちくま学芸文庫)限界芸術論 (ちくま学芸文庫)
読了日:11月10日 著者:鶴見俊輔
vanitas: ファッションの批評誌 (No.004)vanitas: ファッションの批評誌 (No.004)
読了日:10月29日 著者:
ヤンキー人類学-突破者たちの「アート」と表現ヤンキー人類学-突破者たちの「アート」と表現
読了日:10月25日 著者:斎藤環,都築響一,椹木野衣,増田聡,飯田豊,石岡良治,卯城竜太,櫛野展正,津口在五
シルバーアート ―老人芸術シルバーアート ―老人芸術感想
ほとばしる生気、垂れ流される創造力。生きている限り私たちは、誰彼のため問わず、何かしらつくり続けているのかもしれない。つくることで関わりが生まれる、閉ざされる。内包する創造力をかきたて、表現に及ぶ過程はそれぞれだが、当たり前のように振る舞う彼らを見つめ、取り上げる力も私たちは同時に養う必要がありそうだ。
読了日:9月21日 著者:
ファッションは更新できるのか?会議  人と服と社会のプロセス・イノベーションを夢想するファッションは更新できるのか?会議 人と服と社会のプロセス・イノベーションを夢想する
読了日:9月9日 著者:水野大二郎,ファッションは更新できるのか?会議実行委員会
これからの「カッコよさ」の話をしよう (単行本)これからの「カッコよさ」の話をしよう (単行本)
読了日:9月5日 著者:浅子佳英,宇野常寛,門脇耕三
朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機感想
タイトルを見て問題指摘系の書籍かと思いきや、官民共同による課題解決の提言に注力されている。縮小する時代において、国や地方行政のみに頼ることでは生活水準を満たすことが難しいと指摘した上で、どこまでが行政でどこからが民間の発揮できるエリアかを数字ベースで展開。具体的な参画先について議論できる状況がつくられることで、建設的なまちづくりが生まれる未来が想像できる。
読了日:8月18日 著者:根本祐二
デザイン思考の教科書 欧州トップスクールが教えるイノベーションの技術デザイン思考の教科書 欧州トップスクールが教えるイノベーションの技術感想
デザイン学科3年生以上が対象かな。見開きでまとめられているので逆引きとして使用するのが望ましい。
具体的なストーリーは読み取れないが、デザインマネジメントの現在的な広がりを感じられる一冊。
読了日:8月15日 著者:アネミック・ファン・ブイエン,ヤープ・ダールハウゼン,イェレ・ザイルストラ,ロース・ファンデル・スコール
MITメディアラボ―魔法のイノベーション・パワーMITメディアラボ―魔法のイノベーション・パワー
読了日:8月12日 著者:フランクモス
サザビーズ  「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術サザビーズ 「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術
読了日:8月8日 著者:石坂泰章
芸術原論 (岩波現代文庫)芸術原論 (岩波現代文庫)
読了日:8月8日 著者:赤瀬川原平
インクルーシブシアターを目指して……「障害者差別解消法」で劇場はどうかわるか ( )インクルーシブシアターを目指して……「障害者差別解消法」で劇場はどうかわるか ( )
読了日:7月27日 著者:鈴木京子
絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える
読了日:7月24日 著者:寄藤文平
応用美術思想導入の歴史―ウィーン博参同より意匠条例制定まで応用美術思想導入の歴史―ウィーン博参同より意匠条例制定まで感想
美術史から日本国がドイツの美術工芸(Kunstgewerbe)から学んだ「デザイン」という言葉と思想の原点が分かる。ウィーン博のパンフレットに英語で'design'という言葉が入っているものの、対応する日本語は「図式」であり、明治10年以降に「図案」が定着したとされるのは興味深い。現代ではさらに広がる「デザイン」という言葉をどのように捉えるのかを考えるため、歴史を遡る。
読了日:7月24日 著者:天貝義教
冠婚葬祭 (岩波新書)冠婚葬祭 (岩波新書)
読了日:6月29日 著者:宮田登
アール・ブリュット アート 日本アール・ブリュット アート 日本感想
アウトサイダーアートという言葉に初めて触れた時、それは「障害者が製作した美術作品」を指しているのだと思っていたが、それは大きな勘違いであったことが本書を通して理解できた。アールブリュットでは、インクルーシブデザインと類する包摂の理念がそこにあるようだ。美術史への接続はキュレーターに任せるとして、デザインリサーチャーとして、彼らの行動とその周囲に立ち現れる関係性をつぶさに捉え、社会に生み出されることを受容する環境の設計に生かしていきたい。
読了日:6月25日 著者:
Made by Hand ―ポンコツDIYで自分を取り戻す (Make: Japan Books)Made by Hand ―ポンコツDIYで自分を取り戻す (Make: Japan Books)感想
生きる術と生きる糧を私たちはどれだけ手にしているだろうか。消費に没頭するあまり、生産する身体を手放してしまったのだろうかと読み進めるにつれて不安が増す。都心部の過密が進む日本国内においてどこまで本書で紹介されていることが実践できるか分からないが、日本ならではの「ものづくり」と生活が結びつく社会を創造するために小さなことからコツコツとやっていきたい。
読了日:6月24日 著者:MarkFrauenfelder
カラオケ化する世界カラオケ化する世界
読了日:6月22日 著者:ジョウシュン,フランチェスカタロッコ
村人が技術を受け入れるとき‐伝統的農業から水稲栽培農業への発展‐ (創成社新書47)村人が技術を受け入れるとき‐伝統的農業から水稲栽培農業への発展‐ (創成社新書47)感想
80年代までの技術主導型途上国支援から90年代以降の参加型持続的なアプローチの変遷に触れ、筆者がインドネシアで行った支援事業について。変遷の中で文化人類学的なアプローチによる村民の理解や村の成立を通して、開発計画の企画実施運営評価を行う。ハードの整備では生産性を重視しつつも、環境問題や社会環境と新たに浮かび上がる課題に対応し、柔軟な姿勢が求められ、教育などのソフトがそれを支えるという。社会の変容に対応して新たな価値を付与する第6次産業化が途上国での支援、ソーシャルデザインが活躍する背景について理解できる。
読了日:6月15日 著者:西村美彦
キュレーションの現在—アートが「世界」を問い直す (Next Creator Book)キュレーションの現在—アートが「世界」を問い直す (Next Creator Book)
読了日:6月11日 著者:椹木野衣,五十嵐太郎,蔵屋美香,黒瀬陽平,新藤淳,松井茂,荒川医,石崎尚,遠藤水城,大森俊克,金井直,川西由里,菊池宏子,櫛野展正,窪田研二,芹沢高志,竹久侑,土屋誠一,筒井宏樹,中村史子,成相肇,橋本梓,服部浩之,藤川哲,保坂健二朗,星野太,桝田倫広
シェルターからコックピットへ 飛び立つスキマの設計学シェルターからコックピットへ 飛び立つスキマの設計学
読了日:6月8日 著者:椿昇
テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?
読了日:5月26日 著者:ケヴィン・ケリー
アウトサイダー・アート入門 (幻冬舎新書)アウトサイダー・アート入門 (幻冬舎新書)
読了日:5月12日 著者:椹木野衣
シティ・ファーマー: 世界の都市で始まる食料自給革命シティ・ファーマー: 世界の都市で始まる食料自給革命感想
日本国内でも「半農半X」という言葉が広がりを見せるように、食料の生産と生活が近しくなっている。
どのようにXと農を成り立たせるのか。また、都心部で生活する人がどように「自分の食料を生産する時間が確保できるのでしょうか。」(P.282)が大きなテーマとして取り上げられる。
課題に対して、世界で実践される都市農家を取材し、どれも農と社会問題が循環する仕組みをつくろうとしていることが見て取れる。
半といかずとも僅かな時間を割いて農を生活に取り入れる仕組みをデザインしていきたい。
読了日:5月3日 著者:ジェニファー・コックラル=キング
建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける不動産思考術建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける不動産思考術
読了日:4月27日 著者:高橋寿太郎
インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング (プロフェッショナル&イノベーション)インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング (プロフェッショナル&イノベーション)感想
著名なSF小説やコミックの構造を5つのステップに解体する。Speculative Designのような話かと思っていたが、デザインマネジメントではなくシナリオライディングに関するものだった。英題を見てるとなぜ邦題に「インテル」が入ってきたのかわからない。
読了日:4月22日 著者:ブライアン・デイビッド・ジョンソン
人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)
読了日:4月14日 著者:松尾豊
アゲインスト・リテラシー ─グラフィティ文化論 Against Literacy: On Graffiti Cultureアゲインスト・リテラシー ─グラフィティ文化論 Against Literacy: On Graffiti Culture
読了日:3月2日 著者:大山エンリコイサム
芸術教養シリーズ21 協創の場のデザイン―ワークショップで企業と地域が変わる 私たちのデザイン5芸術教養シリーズ21 協創の場のデザイン―ワークショップで企業と地域が変わる 私たちのデザイン5感想
アカデミックな表紙とは対照的に、本文は平易な言葉でコ・クリエイション(協創/共創)について書かれているので学部生が読んでも理解しやすい。事例紹介ではサービス、プロダクト、コミュニティデザインの観点から紹介されていることからもわかるように、広義のデザインが求められている業界が対象とされている。ワークショップは理解や多様性を獲得するためのきっかけで、(目に見える・見えない)カタチを与えていく精錬の工程の必要性も垣間見える。
読了日:2月15日 著者:安斎勇樹
カスタマイズ  【特注】をビジネスにする戦略カスタマイズ 【特注】をビジネスにする戦略
読了日:2月15日 著者:アンソニー・フリン,エミリー・フリン・ヴェンキャット
福祉工学への招待: ヒトの潜在能力を生かすモノづくり (叢書・知を究める)福祉工学への招待: ヒトの潜在能力を生かすモノづくり (叢書・知を究める)
読了日:2月9日 著者:伊福部達
ようこそ ようこそ はじまりのデザインようこそ ようこそ はじまりのデザイン
読了日:2月8日 著者:graf
メンタルモデル ユーザーへの共感から生まれるUXデザイン戦略メンタルモデル ユーザーへの共感から生まれるUXデザイン戦略感想
インタビュー調査を通して人々の行動をタスクと価値観に分類し、よりスムーズなサービスのアーキテクチャを構築する調査手法。行動分析に注力するが、構造からどうデザインするかについて記されておらず片手落ちな感じ。
読了日:2月2日 著者:
デザインするテクノロジー 情報加速社会が挑発する創造性デザインするテクノロジー 情報加速社会が挑発する創造性感想
テキストを含む静止画、動画、SNSなどインタラクティブなウェブと、生み出す装置の進化とともに人が創造する情報が規定されていると説く。ジェネラティブを生成的ではなく多産的とする点は目からウロコだった。相互行為から生み出される結果はつねに平行世界上にあり、世界を超えた継承を繰り返している。オープンデザインのあり方を考える際にも参考にしたい。
読了日:1月30日 著者:池田純一
デザインのためのデザインデザインのためのデザイン
読了日:1月24日 著者:フレデリック・P・ブルックスJr.
ハイエクを読むハイエクを読む
読了日:1月14日 著者:
デザインがイノベーションを伝える -- デザインの力を活かす新しい経営戦略の模索デザインがイノベーションを伝える -- デザインの力を活かす新しい経営戦略の模索感想
デザイン論ではなくデザインマネジメント論について書かれた本書は、統計資料と経営者やデザイナーへのインタビュー、アンケートを行った研究をまとめた内容となっている。デザイン費が公費として計上されない課題や海外流通への様々な小さい障壁は、事業展開する上で考慮すべきところなのだと理解することができた。
読了日:1月7日 著者:鷲田祐一
サイファーパンク インターネットの自由と未来サイファーパンク インターネットの自由と未来感想
ウィキリークスのアサンジらが情報空間におけるオープンネスとアーキテクチャーについて議論したものを書籍化。個と群の利害を整理させること以上に個の自由さを尊重する背景への議論が多く、"やってみた"では見られない批評性を感じる。
読了日:1月7日 著者:ジュリアン・アサンジ,ジェイコブ・アッペルバウム,アンディ・ミュラー=マグーン,ジェレミー・ジマーマン
イデオロギーとしての技術と科学 (平凡社ライブラリー)イデオロギーとしての技術と科学 (平凡社ライブラリー)
読了日:1月3日 著者:ユルゲンハーバーマス,J¨urgenHabermas,長谷川宏

読書メーター

2014年に読んだ本まとめ

あけましておめでとうございます。本年も定例化され始めた「読んだ本まとめ」から始めたく思います。
今年はフリーランスとして仕事を始めたこともあり例年に比べて読書量が下がってしまいました。春先と年末にまとめて読み進めた書籍が大半を占めており、社会人が継続的に読書を行うことのハードルを感じました。(ネットへのアクセス時間を減らせば良いだけなのですが…)
論文執筆をしていた昨年に比べ、ジャンルはバラバラになりますが、大別すると「オープンデザイン/デジタルファフリケーション」「インクルージョン/サスティナビリティ」になるかなと。デザインの定義が広がる中で、メタ・デザイン=デザインするためのデザインを考えるにおいて、情報のオープンネスや自由主義的な研究活動を参考に製造業がどのような情報を提供し、デザイナーの活動を同期づけることができるのかを考えたり、自主プロジェクトにおける伝統とデジタルファフリケーションへの応用を考えていたように思います。
また、障害のある人とのものづくりプロジェクトでは、包摂された労働環境の設計に挑戦する上で、インクルーシブデザイン関連の書籍を改めて読み直すことになりました。定量評価に重きを置いた国内の持続可能性に関する議論も、コミュニティや領域横断型組織などに対する質的な研究が進み、柔軟性・継続性・継承性への議論へとシフトしてきているのではないかなと実感することになりました。

2015年の目標として、博士課程への進学も考慮して書籍だけでなく論文も読んでいこうと考えています。大学に所属していないためアクセス料金が発生してしまうのが辛いところですね…。また、積み上げられている洋書を読み進めていきたいです。長々となりましたが、本年一発目のエントリーでした。

2014年の読書メーター
読んだ本の数:34冊
読んだページ数:9134ページ
ナイス数:22ナイス

サイファーパンク インターネットの自由と未来サイファーパンク インターネットの自由と未来
読了日:12月31日 著者:ジュリアン・アサンジ,ジェイコブ・アッペルバウム,アンディ・ミュラー=マグーン,ジェレミー・ジマーマン
批判的工学主義の建築:ソーシャル・アーキテクチャをめざして批判的工学主義の建築:ソーシャル・アーキテクチャをめざして
読了日:12月27日 著者:藤村龍至
「インクルーシブデザイン」という発想  排除しないプロセスのデザイン「インクルーシブデザイン」という発想 排除しないプロセスのデザイン
読了日:12月26日 著者:ジュリア・カセム
縮小都市の挑戦 (岩波新書)縮小都市の挑戦 (岩波新書)
読了日:12月25日 著者:矢作弘
バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!感想
リバタリアニズムに則り、生物学的な実践をDIYで行なう野生の研究者たちが開く世界は、本書でも紹介されているようにアメリカ西海岸でベンチャー企業が発生していく様と共通している。技術な背景的には、機材のデスクトップ化とオンラインによる学術研究検索コスト低下が上げられている。それ以上に研究を独自に実践し、社会変革を狙うパンク精神と環境をどのように日本で構築できるかについて思考をめぐらしていた。
読了日:12月23日 著者:マーカス・ウォールセン
小豆島にみる日本の未来のつくり方: 瀬戸内国際芸術祭2013 小豆島 醤の郷+坂手港プロジェクト「観光から関係へ」ドキュメント小豆島にみる日本の未来のつくり方: 瀬戸内国際芸術祭2013 小豆島 醤の郷+坂手港プロジェクト「観光から関係へ」ドキュメント感想
地域における外部コンテンツの設置可能性ではなく、外部クリエイターと当事者との関係に着目したアートプロジェクト。地域内部にある魅力や課題、そのソリューションをもコンテンツとして成立するアーキテクチャに注目したい。
読了日:12月19日 著者:椿昇,多田智美,原田祐馬
路上観察学入門 (ちくま文庫)路上観察学入門 (ちくま文庫)感想
赤瀬川氏逝去の報を受けて手にとった一冊。既存の価値を既存の方法でリサーチする学術的研究と違い、潜在的な価値を見出す実験的な試みはデザインリサーチの社会学的な調査とも重なる。ただし、要素の抽出と状況の精細な記述に重きを置いているため、「純粋階段」のように工学的機能が無批判に取り上げられて建築要素の発生に接続されていない点が気になる。見出すことから試作へと繋げる能力が現代では必要ではないだろうか。
読了日:12月17日 著者:
人間の条件 (ちくま学芸文庫)人間の条件 (ちくま学芸文庫)
読了日:12月7日 著者:ハンナアレント
年収は「住むところ」で決まる  雇用とイノベーションの都市経済学年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学感想
コミュニティが先か、ビジネスが先かとの問いに、本書では後者を上げている。新しい価値が根付き始めた仕事(ITベンチャーなど)は、サービス拡大に連れて人を引きつける力が働き、付随して利害関係者の拡大にも繋がるとしている。地域が面白いのではなく、人が面白いという実感は、日本のまちづくりでもよく分かる。
読了日:11月21日 著者:エンリコ・モレッティ
暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)感想
暗黙知と呼ばれる行動や認知に至るまでの構造を明らかにし、その階層の上下行為を「創発」と名付けている。UI/UXやサービスデザインのフロントエンドの基礎理論として読める。
読了日:10月27日 著者:マイケルポランニー
マクルーハン理論―電子メディアの可能性 (平凡社ライブラリー)マクルーハン理論―電子メディアの可能性 (平凡社ライブラリー)
読了日:10月23日 著者:マーシャルマクルーハン,エドマンドカーペンター
サイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探るサイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る感想
いつのまにか蓄積された「当たり前」を崩し、状況の調査からデータを抽出し、洞察として提示するデザインリサーチとはどういうものか理解できる。内容として目新しさは少なく、リサーチャー希望者、クライアント向けといったところ。
読了日:9月3日 著者:ヤン・チップチェイス,サイモン・スタインハルト
スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)
読了日:8月15日 著者:F・アーンスト・シューマッハー
fashionista ファッションの批評誌fashionista ファッションの批評誌
読了日:7月21日 著者:千葉雅也蘆田裕史
vanitas No.002 | ファッションの批評誌vanitas No.002 | ファッションの批評誌
読了日:7月21日 著者:西尾美也,北山晴一,ここのがっこう,南後由和,成実弘至,津田和俊,星野太
vanitas No.003 | ファッションの批評誌vanitas No.003 | ファッションの批評誌
読了日:7月21日 著者:proef,柳田剛,松川昌平,脇田玲,平芳裕子,水野祐,趙知海,大久保美紀,キャロラインエヴァンス,nukeme,koso,久保寺恭子
柳田国男と今和次郎 (平凡社新書)柳田国男と今和次郎 (平凡社新書)
読了日:7月19日 著者:畑中章宏
新・パーソナルブランディング――独立・起業を成功させる18のステップ新・パーソナルブランディング――独立・起業を成功させる18のステップ
読了日:7月4日 著者:西澤明洋
なめらかな社会とその敵なめらかな社会とその敵
読了日:6月19日 著者:鈴木健
SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)
読了日:6月8日 著者:田中浩也
デザイン史とは何か―モノ文化の構造と生成デザイン史とは何か―モノ文化の構造と生成感想
デザイン史とあるが、単に歴史学的にプロダクトやクラフト、デザイン行為を位置付けることについて論じるわけではない。本書では、それらの背景を階層立てて構造的に論じることによって生成されることが何を意味するのかを問うている。デザイン研究者だけでなくモノを取り巻く環境を研究するものにとって入門的な一冊ではないか。
読了日:5月31日 著者:ジョンウォーカー
オープンデザイン ―参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)オープンデザイン ―参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)感想
本書の狙いは、オープンなデザインを生むことではなくデザインをオープンにすることにある。デザインをオープンにするにあたり、その物質だけでなく、道具や場所、さらに、ライセンスなどを含めて公開すること。すなわち、設計・分解・改変を実行する環境の設計が同時に求められている。デザインの対象が複雑化し、デザイナーの役割が製品を生み出すことにとどまらず、物事を整理することや調整することにまで広がり、それを実施する環境を整えて行く(メタデザイン)にまで及んでいることがよくわかる。原文webも良く出来ているので読者はチェッ
読了日:5月25日 著者:BasVanAbel,LucasEvers,RoelKlaassen,PeterTroxler
日本のヒップホップ―文化グローバリゼーションの〈現場〉日本のヒップホップ―文化グローバリゼーションの〈現場〉感想
音楽史ではなく、文化史として日本のヒップホップシーンを捉えた本書。90年〜00年代前半の<現場>を文化人類学的にリサーチをし、日本人のグローバリゼーションやダイバーシティについて記述されている。当時と今では現場・マネタイズのあり方が変わっているように感じるため、現場の再定義が求められるように思える。グローバリゼーションと日本人性についての章がとても面白い。
読了日:5月4日 著者:イアン・コンドリー
HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由感想
今年読んだ本の中でダントツに興奮した。歴史とジャンルを次々と横断し、デザインが開いてきた社会の礎を見せてくれる。クリティカルデザイン、サスティナブルデザイン、ソーシャルデザインについて記述されている章が興味深かった。400ページ超もあるが、章立てが年代とは一致しないので2章以降は興味があるところから読み進めることをお勧めする。
読了日:5月3日 著者:アリス・ローソーン
クリエイターのためのアートマネジメント―常識と法律クリエイターのためのアートマネジメント―常識と法律感想
著作権の他、契約書関係の作例が参考になる。気をつけているものの対等な関係で契約を結ぶことは若手クリエイターが難しいという現状に苦しむが、その分きちんと学び対応するしかない。
読了日:4月22日 著者:作田知樹
エコロジーをデザインするエコロジーをデザインする感想
うーん、テーマがビックスケールなものも多く消化不良感が半端ない。短な問題として感じにくいのが問題だろうか。デザインを冠しているのであれば、巨大なシステム設計だけでなくタッチポイントについても記述してもらいたかった。そのため、福祉や建築分野は理解しやすいものだった。
読了日:4月20日 著者:山田利明,河本英夫,稲垣諭
エコロジーをデザインするエコロジーをデザインする
読了日:4月20日 著者:山田利明,河本英夫,稲垣諭
失敗学―デザイン工学のパラドクス失敗学―デザイン工学のパラドクス感想
パパネックは、全ての人間はデザイナーであると記したように、本書では、選択と決定を行う全ての動作がデザインであると冒頭に触れている。成功だけでなく失敗体験もまたデザインの革新と改善に寄与しているということであり、慢心せずに失敗から学ぶことの重要性を説く。失敗はネガティブな廃棄を意味するのでなく、次への指標となる。そこで、日常品をブリコラージュし構築しているプロコンシューマーの実践を見つめるデザインリサーチは、失敗学的な試みであるだろう。
読了日:4月6日 著者:ヘンリペトロスキ,柏木博
インクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザインインクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザイン感想
社会包摂を理念に掲げるインクルーシブデザインの歴史と国内での実践が数多く収録されているだけでなく、発祥の地であるイギリスとデザインの社会関係(ロジャー/ジュリア)、デザインリサーチの範疇(水野・小島)に関する章が非常に興味深い。本書ではユニバーサルデザインとインクルーシブデザインが対比されているが、すなわち、design of〜からdesign for〜へと変容する社会におけるデザイナーとは、複雑さから規範(コンテンツ)を規定することでなく、複雑さから関係(アーキテクチャ)を設計することだと言えそうである
読了日:4月3日 著者:ジュリアカセム,平井康之,塩瀬隆之,森下静香,水野大二郎,小島清樹,荒井利春,岡崎智美,梅田亜由美,小池禎,田邊友香,木下洋二郎,家成俊勝,桑原あきら
グロースハッカーグロースハッカー感想
さっくりと読める内容。グロースハックは、サービスデザインのエンジニアよりの発想と感じる。様々なタッチポイントから予測して広告を打つのではなく、ユーザーのインタラクションによって複数から最適解を選ぶ。対象だけでなく、サービスによって方法が異なるためアーキテクチャの設計も異なると繰り返されている。
読了日:3月20日 著者:ライアン・ホリデイ
Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学感想
ほとんど自己啓発本。プロモーションという立場でMacintoshに関わった著者が、ジョブスの金言()からマッキントッシュの働き方、組織論、リーダーシップ的な要素を抽出。なんといっても目次を読めば殆どの内容が理解できるシンプルさだけは評価したい。
読了日:3月17日 著者:ケン・シーガル
ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)感想
本書で取り上げられるマイルドヤンキーの行動(地元思考、安定思考)は、高齢者の行動と共通点が多そう。両者の視点は公共性を建築・デザインやサービスが帯びて行く上で視座となり得そうだが、小さな集団を群として捉えるような仕組みとタッチポイントのデザインは避けられない。
読了日:3月17日 著者:原田曜平
消費社会の神話と構造 普及版消費社会の神話と構造 普及版
読了日:1月12日 著者:ジャンボードリヤール
だれのための仕事――労働vs余暇を超えて (講談社学術文庫)だれのための仕事――労働vs余暇を超えて (講談社学術文庫)
読了日:1月9日 著者:鷲田清一

読書メーター

2013年に読んだ本まとめ:50冊

あけましておめでとうございます。
今日で正月休みも終わりとし、明日から研究活動再開です。

さて、昨年はようやく、年間50冊読書を達成することが出来ました。毎年のように「今年は50冊読むぞ。」と意気込んでいたのですが、プロジェクトなり惰性なりでなかなか達成できませんでした。今年は修士論文を執筆していること、帰国後はお金がなかったので図書館に出入りして時間を潰していたことが功を奏して目標を達成することが出来ました。これからも継続して読書を続けていきたいですね。読みたい本はたくさんあるので時間をうまく使っていきたいところです。

昨年の上半期は「サービスデザイン」「デジタルファブリケーション」に関する書籍を読んでいました。これまでの設計論やデザイン論とどう接続して議論を続けていくことが出来るのか、これまでのデザインをどう拡張していけるのかに興味がありました。「隠喩としての建築」「設計の設計」「リバース・イノベーション」は留学中に学んだ『メタ・デザイン』を深く理解していく上で示唆に富んだものであったなと思います。

下半期は『メタ・デザイン』の視点をより修論にフォーカスした選書。社会包摂や持続可能性、そして両者の持つアーキテクチャの設計。DESIGNEASTのマネージャーとして活動し始めたので8, 9月はほとんど読書できなかったのですが、帰国直後に読んだパパネックの「生きのびるためのデザイン」とDEでのさまざまな議論を接続することができたのが良かったなと思います。また、個人的に参加している勉強会の影響で、メタボリズムや国内建築界隈における参加型デザインについて少し調べたのが暮れでした。
休憩がてらに手にとった「文化系のためのヒップホップ入門」は、アメリカの都市計画やサードプレイス関連書籍と合わせて読むとより理解が深まるでしょう。単なるサブカルチャーではなく、コミュニティ論、都市論に接続することができると思います。その上で、今のネットカルチャー世代のミュージシャンの特異性というか、超越的都市性を垣間見ることができそうです。

またしばらくは修論関係の書籍を読みつつ、2月以降は気分転換にまた違った書に出会いたいなと思うところです。



2013年の読書メーター
読んだ本の数:50冊
読んだページ数:13836ページ
ナイス数:12ナイス

ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読 (岩波現代文庫)ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読 (岩波現代文庫)
読了日:12月28日 著者:多木浩二
意味論的転回―デザインの新しい基礎理論意味論的転回―デザインの新しい基礎理論
読了日:12月23日 著者:クラウスクリッペンドルフ
経済学・哲学草稿 (光文社古典新訳文庫)経済学・哲学草稿 (光文社古典新訳文庫)
読了日:12月23日 著者:マルクス
専門家時代の幻想 (1984年) (イリイチ・ライブラリー〈4〉)専門家時代の幻想 (1984年) (イリイチ・ライブラリー〈4〉)
読了日:12月23日 著者:イバン・イリイチ
シャドウ・ワーク―生活のあり方を問う (岩波現代文庫)シャドウ・ワーク―生活のあり方を問う (岩波現代文庫)
読了日:12月23日 著者:I.イリイチ
日常的実践のポイエティーク (ポリロゴス叢書)日常的実践のポイエティーク (ポリロゴス叢書)
読了日:12月23日 著者:ミシェル・ド・セルトー
デザイン論 (1979年)デザイン論 (1979年)感想
メタボリズムを影で支えた川添氏が建築だけでなくデザインにも言及した一冊。マルクスの思想を下地に工業化社会すなわち、生活から切り離し、ものとものの関係に矮小化した工業デザインを厳しく批判し、個と全体の有機的関連性を高めるメタボリックなデザインの必要性を説く。デザインが細分化していくことを批判した時代と、複合的なデザインアプローチが求められる現代に通じる言説が多い。
読了日:12月17日 著者:川添登
ソーシャルデザイン・アトラス: 社会が輝くプロジェクトとヒントソーシャルデザイン・アトラス: 社会が輝くプロジェクトとヒント
読了日:12月16日 著者:山崎亮
現代都市理論講義現代都市理論講義感想
1960年以降(主に60-70年代)の都市計画に関する理論を広く収録している。近代都市計画以降の"計画"を乗り越えるためのさまざまな試みは、計画の主体が見えない中で何を手がかりに都市を編集していくのかに当てられているようだ。メタボリズムアーキグラムらの夢想した交換可能性や流動性、人々の行為の集合体としての都市、政治や経済が推し進める都市のオートメーション…。自走する都市を支えるアーキテクチャを考える上で、重要な視座が詰まっている一冊だと考えられる。
読了日:12月7日 著者:今村創平
つくる術について五人のデザイナーたちと語った―宮脇檀対談集 (キサデコールセミナーシリーズ 3)つくる術について五人のデザイナーたちと語った―宮脇檀対談集 (キサデコールセミナーシリーズ 3)感想
宮脇檀氏による林昌二氏と東孝光氏、両名の対談のみ読了。林パートは組織運営について議論されており、前半は林グループとその距離感と責任について、後半は設備などの日本設計内他部署との共同について触れられている。建築家ー宮脇と組織ー林の対立構造が明らかであるが、議論は凡庸。東孝光氏との対談では、東の「共同作業論」をベースに議論が進む。個を尊重し、個々の経験を統合し設計していく過程は、参加型デザインの萌芽を感じる。脚注に掲載されたメタボリズムの捉え方も興味深い。
読了日:12月2日 著者:宮脇檀
思想地図〈vol.3〉特集・アーキテクチャ (NHKブックス別巻)思想地図〈vol.3〉特集・アーキテクチャ (NHKブックス別巻)
読了日:11月19日 著者:
動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)
読了日:11月19日 著者:東浩紀
プレ・デザインの思想 (TOTO建築叢書)プレ・デザインの思想 (TOTO建築叢書)感想
建築物の設計・運営にあたりマネジメントの視点からAM、CMからPM、FMまでスケールの違いはあれど組織構成が変化している。日本ではまだ馴染みのない職能であり、立ち位置から建築設計の計画に大きく寄与してきた小野田氏の実践と論理がまとまっている。 建築・空間の概念理解に始まり、調査を通して現象学的理解によりその効果と限界を導く。その上で、プロジェクトの運用やプロセスを通じた建築計画者の職能を明らかとしている。建築や都市、まちづくりに関わる、"計画"する者たちに取って新たな道を開いて見せている一冊。
読了日:11月12日 著者:小野田泰明
インクジェット時代がきた!  液晶テレビも骨も作れる驚異の技術 (光文社新書)インクジェット時代がきた! 液晶テレビも骨も作れる驚異の技術 (光文社新書)感想
テクノロジーの発展とともにカルチャーの創出が重要だと実感する。様々なプリンティング技術もMakerやFabLabのようなコミュニティで使われているからこそ評価される。産業の中にとどまらないDIYカルチャーを再評価したい。
読了日:10月28日 著者:山口修一,山路達也
x‐DESIGN――未来をプロトタイピングするためにx‐DESIGN――未来をプロトタイピングするために感想
慶応大学SFC教授、講師らによる論考集。SFC学生だけでなく、デザインや建築を学ぶ初学者らが手にとっていい内容。それぞれが実践的研究をしていることもあり、浅く広くコンテンツを取り扱っているため参考文献を読みあさることをおすすめする。
読了日:10月17日 著者:山中俊治,脇田玲,田中浩也,坂井直樹,岩竹徹,加藤文俊,中西泰人,藤田修平,筧康明,水野大二郎
「もの」の詩学―家具、建築、都市のレトリック (岩波現代文庫)「もの」の詩学―家具、建築、都市のレトリック (岩波現代文庫)感想
家具に始まり、空間・都市などの「もの」が生まれる背景を記号論を中心に探る。身体的、空間的、政治的、神話(寓話)的なスケールまで話は広がり、イスが生まれる背景に潜む本能的行為の政治性と寓話的プロパガンダのもと形成されるナチ国家への接続にうなずかされる。
読了日:10月16日 著者:多木浩二
都市への権利 (ちくま学芸文庫)都市への権利 (ちくま学芸文庫)感想
本書は、戦後社会が工業社会から消費社会に移り変わる時代に、都市から変容する都市的なるものを捉える。全体や中心のように支配的な眼差しから都市を形容する学問を批判し、市民の部分的な活動群から都市的なる集合を形成しようと試みている。私には難解なところもあり、理解が十分ではなさそうだ。再読が必要。
読了日:10月13日 著者:アンリルフェーヴル
海賊のジレンマ  ──ユースカルチャーがいかにして新しい資本主義をつくったか海賊のジレンマ ──ユースカルチャーがいかにして新しい資本主義をつくったか感想
ゲーム理論をベースに考察するアウトロがすべて。時間がない人はアウトロを読み、興味ある章を掻い摘んで読めば十分かもしれない。ユースカルチャーを単なるカウンターカルチャーとせず、DIYカルチャーとパンク精神の混合と捉えたところが面白い。MAKER、SHARE、クラウドソーシングなどと参照事例や内容がいささか共通しているが、海賊(行為)自身が生み出すジレンマに対するアプローチを見出したところが新しい。
読了日:10月7日 著者:マット・メイソン
文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)
読了日:9月26日 著者:長谷川町蔵,大和田俊之
計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話
読了日:9月24日 著者:三島邦弘
集合知の力、衆愚の罠――人と組織にとって最もすばらしいことは何か集合知の力、衆愚の罠――人と組織にとって最もすばらしいことは何か
読了日:9月24日 著者:アランブリスキン,シェリルエリクソン,ジョンオット,トムキャラナン
デザインと犯罪デザインと犯罪
読了日:9月22日 著者:ハル・フォスター
海外で建築を仕事にする: 世界はチャンスで満たされている海外で建築を仕事にする: 世界はチャンスで満たされている感想
建築/デザインを足がかりになんらかの形で海外に出た寄稿者らのエッセイ集。一人一人の経験が言葉にされ、読んでいると背を押される気持ちになる。国ごとの差異はあるが、それ以上に共存できるプラットフォームを感じる。
読了日:8月14日 著者:前田茂樹,田根剛,松原弘典
世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア
読了日:8月14日 著者:入山章栄
吉村靖孝 | ビヘイヴィアとプロトコル (現代建築家コンセプト・シリーズ)吉村靖孝 | ビヘイヴィアとプロトコル (現代建築家コンセプト・シリーズ)
読了日:8月8日 著者:吉村靖孝
スモール イズ ビューティフル再論 (講談社学術文庫)スモール イズ ビューティフル再論 (講談社学術文庫)感想
過度なグローバリゼーションや科学信仰を批判し、動きやすく参加しやすいコミュニティの中で暮らすことを啓蒙する。コンパクトシティに通じる経済概念が読み取れる。
読了日:8月1日 著者:F・エルンスト・シューマッハー
生きのびるためのデザイン生きのびるためのデザイン感想
サスティナブルデザインの礎となる本書は、1971年にすでにエコシステムを捉えたデザインの在り方を説く。大量生産やデコレーションとしてのデザインを批判し、社会的意義のあるデザインを生み出すための組織の作り方、デザイン教育にも言及する。ネクストマーケット、リバースイノベーションと合わせて読みたい。
読了日:7月30日 著者:ヴィクター・パパネック
社会システム理論: 不透明な社会を捉える知の技法 (リアリティ・プラス)社会システム理論: 不透明な社会を捉える知の技法 (リアリティ・プラス)感想
社会はコミュニケーションの連続から生まれる、というルーマンの社会システム理論をベースに三つの対談が収録されている。コミュニケーションが情報、伝達、理解をもって行われる時、拡張するデザイン領域(IDやSD)を説明できるように思える。
読了日:7月28日 著者:井庭崇,宮台真司,熊坂賢次,公文俊平
「恋する身体」の人間学―シリーズ・人間学〈2〉 (ちくま新書)「恋する身体」の人間学―シリーズ・人間学〈2〉 (ちくま新書)感想
著者も触れているが、恋愛と身体性について論じられたものではない。哲学と思想を振り返りながら、身体と行為を結ぶ情緒について論じ、不可分な身体の限界性を乗り越えることは、他者を恋して(共同体として)乗り越えるか、自己愛(新たな自己の発見)による陶酔によって乗り越えるかとまとめる。西田の行為的直感を引き合いに出した説明が明快であった。
読了日:7月23日 著者:小浜逸郎
恋愛のアーキテクチャ恋愛のアーキテクチャ感想
一見、真逆に思えるが、ロマンチックラブ・イデオロギーがセフレ、バーチャル彼女に接続するという社会構造が明快に整理されている。原理主義に走る現代人が参加障壁を高く積み上げた結果、「未満」と設定した空間が広がり、現実性を帯びてゆくというのは恋愛以外でも同様と言えるだろう。
読了日:7月22日 著者:櫻井圭記,小川克彦,濱野智史
悲鳴をあげる身体 (PHP新書)悲鳴をあげる身体 (PHP新書)感想
身体をプロダクト化、振る舞いに影響する意識をサービスと考えると、昨今のエクスペリエンスデザインを身体論の拡張として捉えることができそうだ。
読了日:7月21日 著者:鷲田清一
世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある感想
サスティナブルデザインの理解に。リバースイノベーションやネクストマーケットとともに読みたい。しかし、「ビジネス」や「良心」だけを担保にしてはこの「活動」は続かないだろう。デザインやエンジニアを学ぶものにサスティナブルデザインの入り口を見せてくれる一冊。
読了日:7月20日 著者:シンシアスミス
ギャルとギャル男の文化人類学 (新潮新書)ギャルとギャル男の文化人類学 (新潮新書)感想
武装としてのギャル文化は、非常に民族的な構成をしていると感じる。ただし、非常に浅薄な帰属意識であるが組織への所属欲がかろうじてある現代社会そのものか。卒業してもまた別の民族衣装に身体を包み、空気の中で架空のキャラクターを演じるサバイバルを続ける社会。鷲田清一は身体を第一の衣服としたが、身体と衣服の下にあるイショウはどうやって獲得されたのか興味が湧く。
読了日:7月18日 著者:荒井悠介
昆虫食入門 (平凡社新書)昆虫食入門 (平凡社新書)感想
フードデザイン、サスティナブルデザインの理解のために。ゲテモノや異文化ではなく、過去の生活を振り返り文化継承として昆虫食を評価している。さらに未来の食料問題や食育など対象読者の幅が広い。食べて見たいと感じたが、絵面の持つ圧力に負けてしまいそうだ。。
読了日:7月18日 著者:内山昭一
リアル・アノニマスデザイン: ネットワーク時代の建築・デザイン・メディアリアル・アノニマスデザイン: ネットワーク時代の建築・デザイン・メディア感想
一番共感したのが織咲さんと水野さんと巻末対談。ニッチかアノニマスかという隔たりはもはや自明だが、ニッチとアノニマスの対立は必ずしも作家と企業の対立ではない。コ・クリエイションやメタデザインが代表するように、アノニマス化するデザインを育む方法や枠組みの捉え方が変わるよということだろう。その点において、巻末対談は(今までの)構造ではその隔たりは不変で、より加速するという話だろう。文脈に乗りながらアノニマス化したデザインが価値を持つコミュニティや方法、枠組みをプロダクトと共に提示する必要が生まれてると捉えたい。
読了日:7月12日 著者:藤村龍至(編),岡田栄造(編),西村浩,太刀川英輔,久下玄,大山顕,徳山知永,濱野智史,梅沢和木,西澤明洋,スプツニ子!,満田衛資,山崎泰寛(編),川崎和男,渋谷慶一郎,猪子寿之,羽鳥達也,織咲誠,松川昌平,阿部雅世,水野大二郎,石井すみ子,蓑原敬,清水久和,東浩紀,柳原照弘,貝島桃代,難波和彦,乾久美子,みかんぐみ,メジロスタジオ,家成俊勝
ケアの社会学――当事者主権の福祉社会へケアの社会学――当事者主権の福祉社会へ感想
学際的な知見に基づきケアの本質について迫る。官、民、協、家族というスケールにおいて当事者とは誰か、高齢者をケアする理由とはなど見落とされがちな議論を積極的に論じる。インクルーシブデザインを考える上で当事者やステークホルダーを考える時に引用できる。
読了日:6月24日 著者:上野千鶴子
CODE VERSION 2.0CODE VERSION 2.0感想
サービスデザインを考える上で。本書は、自由さを獲得するために不自由さを設計することの必要性を指摘。情報の流量を高め、質を向上させるアーキテクチャを設計することだけではなく、その参加と制定の仕組みに携わることがサービスデザインと言えるのかもしれない。
読了日:6月7日 著者:ローレンス・レッシグ
なぜ、私の歳をきくの?なぜ、私の歳をきくの?感想
年齢差別撤廃を倫理的理由だけでなく学際的な視座に立ち訴える。暦年齢だけを理由に、不当に社会参加可能性を低く評価されてしまう現状を打開すべく、欧米諸国のように経験年齢や肉体年齢による社会参加を促す。訴えには同意するところが多いが、攻撃的な記述や出典の不明な記述が目立ち信ぴょう性にかけるのが難点。
読了日:5月30日 著者:本田重道
クラウドソーシング―みんなのパワーが世界を動かす (ハヤカワ新書juice)クラウドソーシング―みんなのパワーが世界を動かす (ハヤカワ新書juice)感想
FabLife、Makersに続きクラウド・ソーシング読了。なかなかのボリュームだけどこの三冊を読むとオープン・イノベーションについての理解がかなり深まる。
読了日:5月29日 著者:ジェフハウ
Reverse Innovation: Create Far From Home, Win EverywhereReverse Innovation: Create Far From Home, Win Everywhere感想
ソーシャルデザインをビジネスマネジメントの観点で記した本書。先進国から途上国へコピー商品を展開するのでなく、途上国を起点とした包括的な戦略の必要性を解く。啓発でも単なる"ビジネス"書でもなく、今後の企業活動で当たり前に求められる教養となりうるだろう。 http://pnch.hatenablog.com/entry/2013/04/21/002626
読了日:4月21日 著者:VijayGovindarajan,ChrisTrimble
Makers: The New Industrial RevolutionMakers: The New Industrial Revolution感想
ものづくりの民主化が技術的に可能となり、プロシューマーとデザイナーの関係が曖昧になる。デスクトップ・マニュファクチャリングが、マテリアルチェーンに依らない生産を可能とする時に、第三の産業革命を引き起こす。ものをつくることと同時にコミュニティの生成が語られており、ものを作ること以上にことをつらなければいけないのだろう。(原著を読むのにはまだ時間がかかる。。)
読了日:3月26日 著者:ChrisAnderson
セヴェラルネス+(プラス)―事物連鎖と都市・建築・人間セヴェラルネス+(プラス)―事物連鎖と都市・建築・人間感想
建築・都市史を足がかりにアレグザンダー以後の動的平衡関係が生み出した社会を読み解く一冊。
読了日:3月1日 著者:中谷礼仁
定本 柄谷行人集〈2〉隠喩としての建築定本 柄谷行人集〈2〉隠喩としての建築感想
サービスデザインを考える上で読了。建築的行為を自然知の形式化としており、建築家自身によって『設計』できるものでなく多中心的な共同体のなかで生成される偶然の出来事と記述している。 サービスデザインとは、この自然知の形式化によって生まれる諸関係から境界の見えない集合を生成していくことかもしれない。ただし、主観的に描かれる現象だけでなく、物自体の経路設計や社会関係の中で生まれる仮象の存在が多中心的な諸関係の集合を生む原因となっているので、共同体の捉え方がより多様になっている。
読了日:2月20日 著者:柄谷行人
空間―機能から様相へ (岩波現代文庫)空間―機能から様相へ (岩波現代文庫)感想
サービスデザインを考える上で。本書では近代建築から現代建築への移ろいとして、機能的な空間から様相的な(現象的に立ち上がる諸関係を孕んだ)空間へ移ろうと説く。機能空間はいくら切断して生成されようが必ずその周縁に「経路」が発生し、一連の空間図式を生む。場面と場面を繋ぐその経路を積極的に回収し、設計して行くことがインタラクションデザインだと言え、その経路の発見から場面までを直接的に設計して行くことがサービスデザインかもしれない。
読了日:2月17日 著者:原広司
斜めにのびる建築―クロード・パランの建築原理斜めにのびる建築―クロード・パランの建築原理
読了日:2月5日 著者:クロード・パラン
空間の経験―身体から都市へ (ちくま学芸文庫)空間の経験―身体から都市へ (ちくま学芸文庫)感想
サービスデザインを考える上で本書を読んだ。ユーザーリサーチとは、空間に記録された経験を場所の上にマッピングしていくことなのかもしれない。そして、サービスデザインはそのマッピングされた経験を整理していくことなのかもしれない。本書で語られる神話的空間"漠然と知られている事物の領域と全く知られていない事物の領域が常に存在する. P.157"空間とは、まさに情報空間と物理空間が交錯する現代の生活空間だと言えるだろう。その生活空間を設計していく上で、場所愛を持つ者をエクストリームユーザーとして捉え、経験価値をつむぎ
読了日:2月5日 著者:イーフートゥアン
一億総ツッコミ時代 (星海社新書 24)一億総ツッコミ時代 (星海社新書 24)感想
本書を読んでいるとベタなボケに対するツッコミが実はベタなボケなんじゃないかと思ってしまい、入れ子状の思考に陥ってしまった。ベタとメタのまとまりがネタとしてパッケージされたことで、総ツッコミ時代となるほど蔓延したのかもしれない。むしろこのパッケージが気になってきた。
オードリーのANNを聞き、興味を持って購入。RGのあるあるを思わせるような一文も見受けられた。
読了日:1月16日 著者:槙田雄司
設計の設計設計の設計感想
関数の選択と変数の設定は何を持って行われるのかと考える上で、柄沢・松川氏らはコンピューテーションの究極を、藤村・田中氏らはコミュニケーションの拡大を目指しているように感じる。他者性の獲得と指導者としての主張は、民主化し成熟した社会で目を反らせないキーワードだ。
読了日:1月6日 著者:柄沢祐輔,田中浩也,藤村龍至,ドミニク・チェン,松川昌平
アーキテクト2.0 2011年以後の建築家像―藤村龍至/TEAM ROUNDABOUTインタビュー集アーキテクト2.0 2011年以後の建築家像―藤村龍至/TEAM ROUNDABOUTインタビュー集感想
部分読みだった本書をようやく完読。1995年以後と共に、インタビュー集でありながらTRAJが浮かび上がってくる構造は秀逸。幹となる両書を読み、枝葉をつけ、根を想うことが大切だろう。
読了日:1月2日 著者:藤村龍至,TEAMROUNDABOUT
アーキテクチャとクラウド―情報による空間の変容アーキテクチャとクラウド―情報による空間の変容感想
南後×大山両氏によるストリートアートを通じたメール対談では、境界で発生する歪みを映す都市のメディア性とハッカーとしての身体およびテクノロジーについて議論されており非常に刺激的であった。
読了日:1月2日 著者:原広司,池上高志,吉村靖孝,塚本由晴,藤村龍至,柄沢祐輔,掬矢吉水,森川嘉一郎,南後由和,大山エンリコイサム

読書メーター

Reverse Innovation、リバース・イノベーション読了。

http://instagram.com/p/YVMEnhqe0D/
 本書はソーシャルデザイン、インクルーシイノベーションなどの弱者と呼ばれる立場や地域から生まれるボトムアップ型イノベーションをビジネスマネジメントとして書き記したものだ。第一章では、リバースイノベーションとはなにか、なぜ求められているのか、何を実装する必要があるのかについて記述があり、次章では事例を通した解説とツールキット、リサーチで気をつけることがまとめられている。引用される事例は工業製品に限らず、ヘルスケアやパッケージデザイン、デーストレージサービス、農業製品などがある。

 特徴的なのはその事例すべてが先進国でなく途上国で生まれ、世界へと広がって行ったことにある。iPhoneがアメリカで開発され、そのコピー商品が半分以下の値段で中国で販売されるといった具合に、これまでの開発は常に先進国から途上国へと流れて行くものだったが、より新しく機能的で大量に生産されていくモノが求められる背景と途上国でのニーズは必ずしも一致せず、その溝の深みは増すばかりだ。日本人の我々がパソコンと携帯電話とダイアルアップ回線からインターネットに触れ、高速回線とタブレットを手にしてきた一連の経験は彼らと共有するのは難しい。ようやく彼らが携帯電話を、しかも安価な、手にいれた時、すでにソーシャルネットワークは生まれており、大量のデータがインターネットの中を流れていた。このギャップを想定して世界中へインパクトを与えるモノを作ることは決して簡単ではない。人口の約90%が途上国に暮らし、先進国の都市にもまた貧窮な生活を余儀されるものも多くいる。イノベーションのジレンマガラパゴス化はもうすでに企業の首を閉めている。

 意義のあるデザインを、イノベーションをとするのはソーシャルデザイン側の常套句であるが、本書ではもっとドライに、合理的に、成長が打ち止めされた状況を抜け出す手立てとしてリバース・イノベーションの事例が示されているに感じる。先進国で開発されたモノをベースに途上国で展開をする時の様々なギャップに頭を悩ますより、途上国で発見、解決されたモノをグレードアップし先進国で展開する方がコストがかからない。途上国から先進国までグラデーションのある販売計画を練ることが出来る。

 しかし、途上国で開発されたものがすべて先進国でなく展開可能なものであるとは限らない。本書では、この差分を埋めるために考慮すべき五つのギャップが取り上げられている。

(コスト)パフォーマンスー
 └ 収入や生活費が低い途上国では金銭感覚の違うためコスパの良い商品が求められる。コスパが良いものを求めるのは先進国も同じ。

インフラストラクチャー
 └ 交通基盤や電気水道ガスだけでなく情報インフラも含めて途上国は未開発。ポータビリティやアクセサビリティは両者共通の利点となる。

サスティナビリティー
 └ 安価で大量に生産されるものや環境に配慮した生産にはコストがかかる。先進国が学べるほど、早さと効率が重視される。

レギュレタリィ(規制)
 └ 様々な規制が先進国に比べ遅れているが、裏を返せば途上国が無理をしなければいけないということ。途上国と協調し、ともに守られるべき規制を構築する必要がある。

プレファレンス(好み)
 └ 文化的な背景や宗教的なものによって好みの違いが生まれる。多様なニーズを反映することは国際的な展開をする時には避けられない。適応化。

 これらのギャップフィルターを通すことで、"途上国のため"の開発になることを避ける。途上国内の起業家、経営者、研究者らとの共同や現地でのリサーチはギャップを埋める際には欠かせないし、ここで開発されたモノをポジショニングし、国内外のマーケットを同時に考える時にも欠かせない。ロジテック社が、中国のリサーチで違法ダウンロードした動画ファイルを見るためにパソコンをテレビに繋げる際に、パソコンと座席を行ったり来たりしていた行動からケーブルレスマウスを開発したという話は非常に面白い。ケーブルレスマウスが今日、私たちの生活で馴染み深いものになっているのは言うまでもないだろう。

 指標は途上国と先進国をつなぐためだけではなく、若者と高齢者、健常者と障がい者、国民と外国人といったような先進国の中に内在する様々なギャップを"ユーザー"として包摂する時にも指標となりうるものだ。『誰も』に向けた開発を考えることはデザイナーだけでなく、経営者にも求められる。それは『途上国の人を助けよう。』という啓発的なことでも、わずかばかりのお金の匂いにつられて途上国へ行くことでもない。全うな企業活動として、働き方として取り組むことになって行くのだろう。

リバース・イノベーション

リバース・イノベーション


世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある

世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある