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誰のものでもある場所を見つけに-裏輪呑み@京都

思考
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先日、京都 木屋町周辺で開催された『裏輪呑み』に参加してきた。入れ替わり立ち替わり総勢20名超が参加した野外飲み会と片付けるにはもったいない経験だったので記録しておこうと思う。
そもそも『裏輪呑み』とは、「新しい骨董」のメンバーらが「浦和」で100均のマグネットつきの棚を「裏返して」野外で呑み始めたことから始まる。

マグネットがつく素材であればどこでもバーになるこの方法。幸いにも街中のいたるところでスチールを使ったなにがしかがある。分電盤?やシャッター、工事中の壁面などに寄生し、即席的にオープンテラスのような場を作り上げることができるのが魅力の一つだ。鉄の壁面やポールを街中で積極的に探す経験を大人になった今、持ち合わせている人は少ないだろう。例外なく私たちもその1人で、「あそこにシャッターがあったよね。」「あの看板はいけそうじゃない。」「だめだ、これはアルミだ。」なんて会話をしながらぞろぞろと街中を探検していた。

日本の社会では公道を占有したり、私的利用することは法律や条令などで基本的には認められておらず、すぐに移動すること (あるいは、咎められたらすぐに逃げ出すこと)が必要なため、地に根ざさないジプシーのような呑んべえ集団である。ましてや、私有地に無断で入ることや器物破損することは許されない。こうして、他者の目から逃れるように、あるいは、注目を浴びることを楽しみながら、次の空き地を目指して20分程度したら片付けては移動を繰り返した。

移動と設置と撤収を繰り返す中で、4つの空間構成パターンを見出すことができた。
①壁面型
工事現場の壁面やシャッターなど一面にずらっと並べる方式。カウンターのようになったり、棚のようになったり。人はその壁に沿うように配置し、人が増えると膨らむように寄生していく。

②櫓〈ヤグラ〉型
A看板にセットするとその周囲をぐるりと囲むように参加者は並び、中心性が生まれる。人が増えると円が増えたり、大きくなったり。明らかに人だかりができるので、1番周囲の視線を集めていた。

③ポール型
電柱や手すりなど垂直方向に伸びる形式。櫓型に比べると向こう側が見えないので、ちょっとした切断が発生する。人数が増えてくるとこの形式で2,3人の集まりができてる場面もあった。

④周囲型
花壇など街中に周囲をゆるく囲み、侵入者を拒む小さな公共空間が存在している。あっという間に侵入を許し、ほとんど機能していない柵や手すりなどにセットする。適度な人数の滞在を迎えてくれるような感じ。中央にはカバンなどが置かれる。

***

このように4つの形式をなんとなく実施できる場所がないか街を眺めていると、イアン・ボーデンが「スケートボーディング、空間、都市ー身体と建築(新曜社)」でスケーターやパルクールなどが都市を地形的に読み替えて都市に介入する試みをしていると指摘したように、裏輪呑みもまた、都市に乱立するビルの植生図に「誰のものでもない空間」を書き加えていくことと言えるだろうか。あるいは、ブラッドリー・L・ギャレットの「「立ち入り禁止」をいく(青土社)」で都市探検家たちが『立ち入り禁止区域を、規制や保証のない完全自己責任の領域とと捉え、都市探検とは権力によって隠蔽された横たわる空間を民主化する活動だ』だと捉えていたように、裏輪呑みもまた、「誰のものでもない公共空間」に対して、「誰のものでもある公共空間」であることを示す活動として捉えられるかもしれない。
そのため裏輪呑みとは、権利的に認められたオープンテラスやベンチで飲食することや花見などでどんちゃん騒ぎをすることとは一線を画す。なぜならそこは政治的に参加を許された領域であり、主体的な利用と民主的な意義は見出せないからだ。

裏輪呑みにおける楽しみの一つに「誰のものでもない場所」を「誰のものでもある場所」に取り戻すことが挙げられるたろう。実際に前者では、私たちが招かざる(騒がしい)ものとしてその場を活用することから排除されてしまうこともあったし、後者では、どこからともなく現れた参加者(ただの酔っ払い)を迎え入れるようにも機能する。
私たちは裏輪呑みを通して、都市の幸を100均やコンビニなどからもぎ取り(購入し)、誰のものでもない、誰でも使える空間を見出し、都市に生活を染み出させることを楽しんだ。開発や計画といった権力から自分の居場所を見出す試みとして、裏輪呑みは非常に興味深い都市活用事例となるだろう。

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