2017年に読んだ本まとめ

あけましておめでとうございます。

2017年は新しい職場に参画したこともあり、ほとんどらしいブログを書くことができませんでした。

もうちょっと時間の使い方を考えないとなぁというところですね。

とはいえ、読書は続けており、今年は実務系の本や会計に関する本を多く読んでいたなと振り返って思いました。

ここに入れていない本もちらほらあったので抜けていることにいまさら気がついたり…。

特に記憶に残っている3冊は次です。

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国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由

留学をしていたフィンランドは、今も参考になる事例や思想が多いなと調べなおすことが多々あります。お祭りのように「教育」や「福祉」の事例が取り沙汰されることが多いですが、留学中もフィンランド人の友人から聞いていた冷静な負の側面が、本書はいくつかの論考としてまとめてあります。
ロー・リソースな国家であるがゆえに人的資源に目をつけたフィンランドのこれまでを理解し、どのように日本や地域行政に対応可能か考えるのに冷静な視座を得ることができます。


法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する


情熱大陸の出演などで話題に多く上がる水野祐さんによる単著。知財とクリエイティビティは相性が悪いように思われる場面に出くわすことはありますが、その中でどのように自由な領域を獲得するのか。クレイティブコモンズやこれまでの取り組みにおける法制度と可能性について論じる本書は、クリエイティブ業界に身を置く者として必読の内容であるように思えます。


未来を築くデザインの思想-ポスト人間中心デザインへ向けて読むべき24のテキスト未来を築くデザインの思想-ポスト人間中心デザインへ向けて読むべき24のテキスト

上記の書籍と関連しますが、紙媒体だけにとどまらず、メディアミクスが当たり前となった現代において、デザインの自律性は課題のひとつとしてあげられます。(マンマシーンだけでなく社会との)インタラクションのデザインを考えるにあたり、これまでの欧米を中心としたデザインに関する議論が多数収録されており、どのような視座でプロジェクトを進めていくのか、手離れした後の自律性をどこに設定するのかを考えさせてくれる重要な1冊です。

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「デザインリサーチ」は、その名の通り、(定性的な)リサーチに基づくプロジェクトの進め方を行います。しかし、プロダクトやサービスのマーケティングリサーチやユーザー調査、感性評価にとどまるものだけではありません。事業主体や受益者などを含むステークホルダーがどのようなインタラクションがあるかも重要な要素として調査を行い、タッチポイントであるデザイン、それに伴うインタラクションの変化も実験的な調査を通じて行うものです。

上記の3冊は、そうしたインタラクションの多様性を理解することを促し、見落としがちな無意識の中にある/目に見えない可能性と課題の発見を促してくれます。デザインプロセスやプロジェクトマネジメントのフレームワークからこぼれ落ちる要素をきちんと拾い上げ、複雑で意地悪な現代社会でのデザインを良いものにしてくれると実感できます。

クリエイティブ業界に身をおくものだけでなく、事業の主体者にもぜひ手に取ってもらいたいなと思います。

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その他、読んだ書籍一覧は次の通りです。

誰かの何らかの足しになれば幸いです。

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2017年の読書メーター
読んだ本の数:53
読んだページ数:14095
ナイス数:16

中世の東海道をゆく―京から鎌倉へ、旅路の風景 (中公新書)中世の東海道をゆく―京から鎌倉へ、旅路の風景 (中公新書)
読了日:12月31日 著者:榎原 雅治
国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由感想
フィンランドに交換留学していた時期のことを思い出しながら読了。僕が以前から感じていた「ローリソース)低資源)」な国家がいかにして、リソースとして人的資源に注力し、勃興し来たかがわかる良書だ。本書の論文はネガポジ両面から冷静にフィンランドのこれまでと現在を切り取り、私たち日本人の転用可能性を秘めているかを諭す。改めて親近感を感じるとともに、国内の閉塞感を打破するきっかけとしてこれからも参考にしていきたい。

読了日:12月11日 著者:古市 憲寿,トゥーッカ・トイボネン
マイパブリックとグランドレベル ─今日からはじめるまちづくりマイパブリックとグランドレベル ─今日からはじめるまちづくり
読了日:12月10日 著者:田中元子
誰がアパレルを殺すのか誰がアパレルを殺すのか
読了日:11月16日 著者:杉原 淳一,染原 睦美
アイデアソン!: アイデアを実現する最強の方法 (一般書)アイデアソン!: アイデアを実現する最強の方法 (一般書)
読了日:11月04日 著者:須藤順,原亮
スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町 (光文社新書)スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町 (光文社新書)
読了日:11月04日 著者:島村 菜津
町を住みこなす――超高齢社会の居場所づくり (岩波新書)町を住みこなす――超高齢社会の居場所づくり (岩波新書)
読了日:11月04日 著者:大月 敏雄
決定版! グリーンインフラ決定版! グリーンインフラ
読了日:10月16日 著者:
リーン・スタートアップリーン・スタートアップ
読了日:10月09日 著者:エリック・リース
21世紀の民俗学21世紀の民俗学
読了日:09月10日 著者:畑中 章宏
日本の夜の公共圏:スナック研究序説日本の夜の公共圏:スナック研究序説感想
スナックを切り口に「夜の公共圏」がいかにして立ち上がったかを、学術的に取り扱う挑戦的な一冊。法学を背景とする研究者を中心とした規制や条例、判例によってスナックやスナックによってつくられた場が浮かび上がるのが面白い。あとがきにもあるように一里塚となる本書、続編や他の研究者らによる書物を期待したい。
読了日:09月04日 著者:谷口 功一,スナック研究会
正しい家計管理正しい家計管理
読了日:09月03日 著者:林 總
法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する
読了日:09月01日 著者:水野祐
正しい家計管理・長期プラン編 老後のお金正しい家計管理・長期プラン編 老後のお金
読了日:08月14日 著者:林 總
マンガ 自営業の老後マンガ 自営業の老後
読了日:08月14日 著者:上田 惣子
新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ (幻冬舎文庫)新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ (幻冬舎文庫)
読了日:08月14日 著者:橘 玲
貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する (講談社+α文庫)貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する (講談社+α文庫)
読了日:08月14日 著者:橘 玲
大家も住人もしあわせになる賃貸住宅のつくり方大家も住人もしあわせになる賃貸住宅のつくり方
読了日:07月16日 著者:青木 純
HAPTIC ―五感の覚醒HAPTIC ―五感の覚醒
読了日:07月09日 著者:株式会社竹尾,原研哉+日本デザインセンター原デザイン研究所
触楽入門触楽入門
読了日:07月05日 著者:仲谷 正史,筧 康明,三原 聡一郎,南澤 孝太
未来を築くデザインの思想-ポスト人間中心デザインへ向けて読むべき24のテキスト未来を築くデザインの思想-ポスト人間中心デザインへ向けて読むべき24のテキスト
読了日:06月28日 著者:ヘレン・アームストロング
世界一わかりやすいプロジェクトマネジメント 第4版世界一わかりやすいプロジェクトマネジメント 第4版
読了日:06月05日 著者:G・マイケル・キャンベル
CEOからDEOへ - 「デザインするリーダー」になる方法CEOからDEOへ - 「デザインするリーダー」になる方法
読了日:06月01日 著者:マリア・ジュディース,クリストファー・アイアランド
神山プロジェクト 未来の働き方を実験する神山プロジェクト 未来の働き方を実験する
読了日:05月18日 著者:篠原 匡
お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめお金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ
読了日:05月17日 著者:橘 玲
建築・都市のプロジェクトマネジメント クリエイティブな企画と運営建築・都市のプロジェクトマネジメント クリエイティブな企画と運営
読了日:05月07日 著者:山根 格
ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのかブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか
読了日:05月03日 著者:ドン・タプスコット,アレックス・タプスコット
スタンフォード式 最高の睡眠スタンフォード式 最高の睡眠感想
クリエイティブ産業でどうしても避けることのできない課題の一つに、睡眠時間が削られるということがある。本書は科学的に解明されつつある、不思議な身体のリズムについて分かりやすく解説している。そのため、忙しいビジネスパーソンや生活のリズムが崩れがちな生活をする者に、単なる生活改善以外の方法を示していることが嬉しい。短くなるなら良質な睡眠をと手にとった一冊だったが、日常的にも、多忙な時期でも参考になる良書であった。
読了日:04月16日 著者:西野精治
PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかたPUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた
読了日:04月02日 著者:馬場 正尊,Open A,木下 斉,松本 理寿輝,古田 秘馬,小松 真実,田中 陽明,樋渡 啓祐
ほしい暮らしは自分でつくる ぼくらのリノベーションまちづくりほしい暮らしは自分でつくる ぼくらのリノベーションまちづくり
読了日:02月07日 著者:嶋田洋平
地方創生大全地方創生大全
読了日:02月06日 著者:木下 斉
エリアリノベーション:変化の構造とローカライズエリアリノベーション:変化の構造とローカライズ
読了日:02月02日 著者:馬場 正尊,Open A,嶋田 洋平,倉石 智典,明石 卓巳,豊田 雅子,小山 隆輝,加藤 寛之
20代から知っておきたいお金のルール20代から知っておきたいお金のルール感想
20代最後の年に読了。いきなり起業したので経営的な知識はあったものの、日常的な金銭感覚を見直したく購入。サラリーマンを前提としているが、掲載されているパラメータを見直せば個人事業主にも対応可能な内容。漫画との組み合わせで読みやすい。できればより詳しく知るための参考図書があると嬉しかった。
読了日:02月01日 著者:横山 光昭
ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか:質を高めるメカニズムドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか:質を高めるメカニズム
読了日:01月18日 著者:高松 平藏
ルポ 高齢者ケア: 都市の戦略、地方の再生 (ちくま新書)ルポ 高齢者ケア: 都市の戦略、地方の再生 (ちくま新書)
読了日:01月15日 著者:佐藤 幹夫
老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)
読了日:01月14日 著者:野澤 千絵
友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法感想
予防医学の観点から「つながり」と健康状態と寿命の相関を示す本書は、今から何ができるのか行動へ移す動機を生み出す。コミュニティデザインは山間離島地域だけでなく、都市型の福祉側面からも求められることが理解できる。
読了日:01月12日 著者:石川 善樹

読書メーター


関連リンク:
pnch.hatenablog.com
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人口爆発、食糧危機を迎える2050年に先駆けて昆虫食〜セミ〜を今年も食べてみた

有松美食倶楽部、通称ABCへようこそ。今夜の食材は夏の風物詩、そう「セミ (cicada)」だ。特別にオーソドックスに「アブラゼミ」、大きくて香ばしさが増す「クマゼミ」、小さくて柔らかな「ニイニイゼミ」を用意させてもらったよ。朝から昼にかけて養殖場、大高緑地公園で採れたばかりのフレッシュな食材さ。

調理方法は単純だ「煮る→割る→揚げる→味付け」という手順。昨年はセミチリとセミマヨを用意したけれど、今夜も食材の味を楽しむために「素揚げ」、新たたに柔らかい衣で包んだ「天ぷら」と食材とのハーモニーを楽しむ「かき揚げ」を用意したよ。素揚げはセミの香ばしさを引き立て、芋のようなアーモンドのような風味を感じることができる。たしかに殻の付いたエビのようでもあるね。

おっと、お嬢さんたちにはもちろん甘いものを用意したよ。素揚げしたセミに塩コショウの代わりに、シナモンシュガーを振りかけたこいつはいかがかな。スナック感覚でサクサクいけるだろう。シナモンとセミの組み合わせは、思った以上に食欲をそそるね。さらにさらに、食後に用意したのはブラックチョコレートでコーティングされたセミを乗せたバニラアイス。冷やしたことでアーモンド風味が強調され、チョコレートとアイスの組み合わせも最高だ。

どうやら皆さん、ご堪能いただけたようだね。素揚げしたときにはあまり感じなかったセミ自体の味も、調理方法や素材の組み合わせを変えたことでかなり感じられたようだ。チョココーティングとバニラアイスの組み合わせで引き立たされた、セミが持つアーモンド風味は本当に想像を遥かに超える美味しさだ。

お腹の鳴る音が聞こえたようだが、次年度の開催を待って欲しい。次はもう少し調理を楽しんで見ようと思っている。酸味と合わせた南蛮漬け、爽やかに大根おろしと合わせて、大葉とチーズの組み合わせはどうだろうか。おっと、早くも来年が待ちきれない方々ばかりのようですね。申し訳ありませんが、少々お待ちください。それでは次回まで、ごきげんよう。(画像は続きを読むから)

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料理と掃除の好きなところは、その過程

新しい環境での生活が始まり、はや2週間。寝ては起きては仕事に繰り出し、帰宅しても仕事して寝る生活。ゆっくりしているヒマがなかなか取れないのだが、今夜は久しぶりに料理をしてみることにした。
一緒に食べることはできないけど、一緒に過ごす時間を想像しながらメニューを組み立てる。スーパーで食材を買い、帰宅して少しずつ調理。野菜だった食材が具材に変わり、食事に変わっていく。野菜だったものが皮となり、皮が生ゴミとなり、廃棄物に変わっていく。これまでも美味しくご飯を食べていたけれど、僕の生活から失われていた「間の連続」が見える。
美味しく食べ、皿を片付ける。なんとなく部屋も片付ける。モノが整理されていくようて、人の輪郭をなぞっているようでもある。整然とした状態にあこがれているのでなく、生み出されていくような、壊れていくような「間の連続」を楽しんでいるんだと気がついた。
普段の仕事と同じような間隔で生活をしているのか、生活が仕事に生かされているのかわからない。なんとなくうれしい発見だった。

京都工芸繊維大学 KYOTO Design Labのパブリケーションマネージャーに就任しました

2017年4月3日より、母校である京都工芸繊維大学 KYOTO Design Labの特任職員を務めることになります。月曜日から木曜日は京都で生活を、金曜日から日曜日は名古屋で生活をする2拠点活動です。

 

本組織では海外の教育機関やクリエイターを大学に招聘し、産官学連携などさまざまなプロジェクトを実行しています。僕はパブリケーションマネージャーの肩書で活動し、広報PRやメディアの制作運営などを担当していくことになります。KYOTO Design Labの活動は、リンク先をご覧ください。 (http://www.d-lab.kit.ac.jp/)

少なくとも今年度いっぱいはこれまで同様に名古屋での仕事を行っていますが、一部制限しての活動となることをご容赦下さい。D-labのパブリケーションマネージャー、DESIGNEASTのプロジェクトマネージャー、名古屋ではデザインリサーチャー/サービスデザイナーと片仮名で殴りつける肩書き。これまで以上に怪しげに、楽しく、動き回っていきたいと思います。引き続きよろしくお願いします!

 

そして、KITの先輩後輩同級生のみなさんは就職説明会だったりで、来るときはぜひ連絡下さいね!久々の京都なのでむちゃくちゃ楽しみです。ご飯などさまざまなお誘いの連絡、お待ちしております!!

名古屋の魅力を発信、SNUG CITY NAGOYAの取り組み。 名古屋はシティプロモーションの先に何を見るのか、僕たちは何ができるのか。

snug.city.nagoya.jp

名古屋市が仕掛けるウェブプロモーション。今回はオウンドメディアを手がけているようで、芸能人だったり地元を知る人と疑似観光をするという内容。浅井健一さんのような名古屋出身で名古屋好きな人へのインタビューが続くのかな。次のインタビューは誰か少し気になります。

しかし、正直な感想は『本当なのか、これ…。コンテンツもデザインも、、』という内容です。一体誰が、どのような時に、どうやって見るのか。そして、なぜこのサイトを見るのか、が設計できているようには思えない。
でもこれって、ウェブデザインやコンテンツを制作している側の問題ではなくて、発注者側、つまり名古屋市が整理できていないからなんじゃないかな〜。

そんな否定的な印象を持ってしまったのですが、僕自身が一番関心があるのは、ページ下部にある「名古屋魅力向上・発信戦略」というPDFです。OTHERと隅に追いやられているけれど、重要な整理がされている。暴力的にまとめると、10年間で名古屋の①イメージ刷新、②愛着醸成、③発信!発信!発信!を行う計画だということです。名古屋市が市民と一緒に発信した先にどんな未来を思い描いているのだろうか。受け取った側は何ができるのだろうか。僕も未来に向けてどんな動きをできるのか考えていきたい。

例えばだけど、ベルリンは2030年までこういう戦略で進めるって方針を発表しています。 BerlinStrategy Urban Development Concept Berlin 2030 (PDF)
続いてこっちはNYCが出しているOne New York The Plan for a Strong and Just City (PDF) です。僕は当たり前だと思うのですが、きちんと目標Visionと手続きStrategyを出している。やりっぱなしじゃなくて、きちんと評価するということですね。名古屋市はたぶん、これ。名古屋市:名古屋市基本構想(市政情報)です。デザインを軸足にもっとできることはあるはずだと改めて認識しました。頑張ろう。