演習課題『東アジア圏観光客に向けた京都らしいおみやげまたは旅行中に使用する製品の企画開発』

今日はグループワークの第三中間発表。次回最後に向けたリサーチ結果のサマリーとカタチや仕様シーン、市場調査と採算性の発表を行った。まだ詰める部分はおおいにあるが教授陣の反応は概ね良かったと思える。東アジア圏から京都に来る観光客の行動観察を行ったところ、コミュニケーションの欠乏による"あきらめ"や団体観光のタイムスケジュールから非常におみやげ購入を"焦る"必要があるのだと言うことが分かりました。そこで僕たちはこうした焦りやあきらめを取り除く必要があると考えました。
そこで購買活動の中でとても重要な支払いに目をつけました。彼らは非常に短い時間の中でおみやげを購入する必要があるためか、ほとんど日本の小銭を使いません。その背景には小銭を使って時間がかかることに焦りを感じている、大きさと貨幣価値がちがう日本の小銭に使いにくさから小銭による支払いをあきらめているかもしれません。また、そこで出た小銭はポケットに入れたり、両替時に使った封筒にそのまましまっているシーンが見つかりました。これでは小銭は帰国時に空港のコンビニで消化するだけのお金になってしまいます。
そこで僕達のチームでは小銭を使いやすい、管理しやすい状況をデザインすることにしました。それを前提にプロダクトでの提案を行っています。これは観光地でお土産の購入時だけでなく、夜にバーでいっぱい飲むときの支払いに、ボーイへのチップ支払い時にと観光シーンで広く使うことが出来る状況が生まれるのではないかと考えています。京都での観光を楽しむツールとして活躍されることを望んでいます。

CG by James
上部がコインの選別、下部がコインケース。上部はバス車内に設置、観光時はコインケースのみを利用。
コインケースはカラーやマテリアルを変化させることで京都らしさを演出することが出来るのではないでしょうか。また、こうした製品をバス会社や旅行代理店に販売し、財布部分での追加の展開を見込んだ製品ができるのではないかと考えました。
教授陣からは”状況をデザインする”態度とそれから生まれる内容について評価していただいた上で、採算性試算の甘さやバス会社へのヒアリングを行うべきだという指摘がされました。この製品が実装されるところをもっとリアルに想像しなければいけないといった前向きなダメ出しが非常に嬉しくも悔しい思いです。
次回の最終プレゼンでは採算性の精度、試作品の制作、CMの制作などが待ち受けています。非常に楽しみです。

観察することから

あっという間に秋学期が始まり一ヶ月が過ぎようとしていますね、今月からまたblogをちょくちょく書き記していきたいなと思います。
 秋学期開始に伴い、大学院でグループワークが始まりました。東アジア圏の観光客増大に伴い、彼らが滞在中に使う製品またはお土産の製品開発を行動観察をもとに行いなさいというものです。前期は大地震の際に大学が出来ることをまとめなさいというものでペーパーベースの提案となっていたのですが、後期は企画開発ということでモノを作ることができるのでとても楽しみです。同期や先輩らに話を聞いてみるとインタビューのような調査はあれど"行動観察をもとに"という課題はここ数年で珍しいという話だそうです。デザイン経営工学という専攻からマーケテイング調査やエンジニアリング観点からの調査などは行うのですが文化人類学的な定性的調査を元にということはなかったようです。

 定性的研究の中で建築側からはフィールドワークというものが馴染みあるかと思います。私も学部時代のまちづくり研究室ではこのフィールドワークやワークショップを通して地域の方々の話を調査していくということがありました。まちづくりのような複雑で様々な行動や生活が絡みあう対象において、それらを紐解き結びつけていくためにKJ法やワールドカフェといったものが用いられます。別の例で言いますと、考現学の発案者である今和次郎はフィールドワークから東京の人々がどのようなモノを好んでいるのか、など眼に見えるものを徹底的に記述し考現学を提唱しました。こうした定性的な調査の背景には統計的なデータを用いる定量的な調査では利用者の心理的な要素が調査項目から抜けてしまうと記述が難しく、また複雑なネットワークに対してその結びつきを記述することが困難であるということが指摘されます。(ネットワーク分析など複雑系の解析方法があることはもちろん知っていますし、それらを否定するわけではありません。)
 この他にも様々な定量的調査がありますが、それらはともに『フィールドへ赴き→データを取得し→課題を発見し、仮説を構築する』といった共通点があります。しかし、この課題では調査にだけ焦点が当てられているわけではなくデザインを軸に企画開発が求められています。そのため、この先には『プロトタイピング→実地検証→製品の実装』が必要とされています。この後半部分に渡るために前半の定性的調査でいかにインスピレーションを得て、遠くを想像できるかが重要となってくるのです。こうした調査や開発はIDEOなどのデザインコンサルティングファームが有名です。特にIDEO前期の活動はとても創造的であったと思います。日本でもこのデザインリサーチは研究としてえだけでなくビジネスシーンにおいても注目が集まってきています。先日のガイアの夜明けでは大阪ガス行動観察研究所が取り上げられていましたし、また、東大i.schoolの田村さんがおっしゃられているビジネスエスノグラフィーなどもいい例です。全体のボトムアップを図っていた日本から多種多様な成熟期においてこのような調査はより重要となると感じています。
 ようやく、私たちが何をやり始めているか紹介します。この課題が出てからすぐに台湾からの留学生にお決まりの京都観光コースを聞いたところ、『清水寺→銀閣寺→金閣寺』ということがわかりました。そこでまずは観光客がどの様な行動をしているのかを観察することにしましたが、特定の問題意識を持って始めるのではなく観察のデータから捉えるべき課題の発見を目的として行いました。調査では観光客になりきり彼らの動向を真似て何を考えているかを想像し(実際に留学生が三人ついていたので彼らの行動をよく見ていました。)、気になる点をどんどん写真に収めていきました。その結果、アジア圏観光客の多くが手荷物が少ないことや短時間で多くの観光地を回っているため行動が早いことがわかりました。しかし、京都の観光地はパンフレットやお土産など手にモノを持つ機会が多いです。そこで次に大学にて後輩を使ってどの様に増えていく荷物を持っていくのかを調べたところ手で持つにしても様々な方法があり、そうした理由もそこには多くありました。かばんを持っている持っていないで購買活動に少なからず影響が出るのではないかということが学生への聞き取りでわかりました。

(※中央の男性はアジア圏観光客らしい。周囲の観光客と違い手荷物は少ない。)

 こうしたリサーチのためのリサーチをすることで観光客の行動をあぶり出し、徐々に問題を明確にしていきます。そうした調査と簡単な実験から、次に観光スポットからバス間の行動に着目し、シャドーイングを行うことに決まりました。また宿泊施設のポーターやツアーガイドボランティア、お土産屋さんのスタッフへの聞き取りをして荷物をどう扱っているのかについて調査していくことに決まりました。こうした気づきから次の現地調査を行い、アイディアのためのインスピレーションを増やしていきプロダクトのアイディアを膨らましていきたいと考えています。何も持っていないことがいいのか、持たせる法がいいのか。次の観察調査で見極めたいと思います。

デザイン経営工学専攻入試の勉強で用いたテキスト[デザイン・マーケティング編]


さてさて、前回に引き続き今回はデザイン・マーケティング編です。まずは前回のおさらいから……

デザイン経営工学専攻の過去問を見るとわかりますが、領域の定まりはあるもののこれといった定型的な問題がないので広く学ぶことが必要です。また、明確な答えがない問題もあり、解答を裏付けるよう論理的に書く力とそれを支える知識を身につけていけばいいと思います。そうった意味で並行してやっていくことが大切でした。

デザインっていうものはデコレーションじゃない。ユーザーと社会のため(社会創造)、企業と市場のため(企業経営)というように新たな関係性を考えていくことがデザイン経営工学の理念として上がっています。それは大きく現在のデザインの潮流を見ていても明らかです。IDEOの社長兼CEOティム・ブラウン著のデザイン思考が世界を変える、Studio-Lの山崎亮著のコミュニティデザインでも言葉ややり方は違えど根底には同様の視点が垣間見えます。広い視点や関係性を発見するためには基礎知識と新たな情報、応用の練習が必要なのは言うまでもありません。僕は経営の基礎知識やデザインと経営の関係づけを考えるために以下の本を読みました。


|デザイン経営の基礎知識


右の技術経営入門はすごくまとまっていて記述試験の練習をしているときに後引きとしてとても有効でした。

|デザインと経営の関係性


知識創造企業は必読です。学部、大学院の授業でも参照されるものです。このシリーズは分厚いので難しいけど時間があれば全部読んでいてもいいかも。

|人とデザインの関係性


誰のためのデザインも必須の考え方だと思います。人間工学的な知識の整理は必要でしょう。エンジの話にも繋がります。

|おまけ


やば経は趣味として読んだけど意外と関係性にもつながっていくな今となっては思う。


今読んだほうが良かったなという書籍を続いて。

昨年度の試験で社会起業家の例が出たように、ソーシャルデザインやコミュニティデザインもすごく注目が高いです。そして、これらは成果物だけでなくプロセスやアフターの話も重要です。基礎的な話から展開する想像力とロジカルに伝える能力が重要でした。
i.schoolもデザイン経営工学の演習課題をするうえで非常に参考になります。なんのためのデザインかそれを同実現していくのかなど学ぶ点が多いです。
これの他に経済新聞やニュース、ビジネス白書とかも目を通していました。データ>情報>知識と結びつけていく考え方は先述した話と同じでしょう。時間をうまく使って知識にまで引き上げて院試に望んでください。


|おまけ

僕は五月くらいに研究室訪問をした覚えがあります。その時は、先生にメールし、やりたいこととやれることについてお聞きしました。ポートフォリオの持参は言われませんでしたがやりたいことについてはしっかりと聞かれました。その後夏前のプロジェクト共有ゼミに参加させていただき、ゼミの雰囲気ややってることをより深く見た上で決めたことをなんとなく今思い出します。

伊根の舟屋を見学してきました。

先日、大学のTAで伊根の舟屋に見学へ行ってきた。
ここは漁村で全国初の重要伝統的建造物群保存地区だ。その時目に止まった住民の知恵が面白かったので紹介したい。

 

右の写真は紐と針金というとてもシンプルな材料で魚を干すための装置が電信柱にひっかかけてある様子。しおりにもあったように伊根の舟屋が現代化していったことは現地視察でよく分かった。(沿岸部の舗装、生活道路の整備によって舟屋と住宅が切り離されていく。)それと同時に文化である漁業の装置も現代化していった様子が予想できる。
舟屋を見ているともともと干すための装置が住宅についている、または干す場所が外にあった。生活道路の発達で舟屋と住宅が切り離されていくに連れて漁業の装置(私:舟屋)まちを繋ぐ装置(公:道路)生活の装置(私:住宅)と機能が分かれていったようである。
そこでその中間にある公共物「電信柱」を私的な干物を干すための装置と利用し、住宅↔舟屋の切断を緩やかに繋ぐ装置としてこうした利用がされているのではないか。私はこれを都市部住宅における玄関前のガーデニングと似たような風景と捉えられた。

デザイン経営工学専攻入試の勉強で用いたテキスト[ワークプレイス編]

早いものでデザイン経営工学専攻を受験しようと決心し、勉強を始めたのがちょうど一年くらい前だ。入試時期を振り返りつつ使用したテキストの紹介をしていこうと思う。

|Introduction

ワークプレイス、デザイン・マネージメント、エンジニアリングの領域に分けて書籍を紹介していこうと思います。今回は研究室を決定するまでの話とワークプレイスとデザインの書籍についてご紹介します。

受験校決定まで

 僕は外部入試扱いのため(造形→デザ経)受験勉強を始めたのは4月過ぎてからだった。まず仲先生に直接お会いし、やりたいこと・やってきたことを伝えた。その時に「○○大学の△△先生のところの方がやりたいことに近いかも。」と親身にアドバイスしていただいたのが印象的だなと今振り返って思う。しかし、話を詰めていくとデザ経の方がマッチングしていたので受験決定した。(ちなみに都市系で東工大、まちづくり系で阪大、デザイン経営でSFCで迷っていた。)それまでも現M2の先輩をtwitterでフォローしていたのでお話を聞き、自分のやりたい事を模索していたように思う。またTOEICの勉強だけは三年後記から真剣にやり始めていた。

受験校決定から夏休みまで

 四回前期は京都建築スクール(KAS)に参加し、二週間ごとにあるプレゼンテーション資料を作りながら合間に本を読み、休日に過去問を解くという日々を繰り返していた。まとまった時間が取てずかなり苦しかった。さらに、建築を学んでいたのでワークプレイスに関しては近しい知識はあったが、マーケティングやエンジニアに関しては乏しくより多くの本を読まなければいけなかったのが重要な課題であった。そのためにも最新の情報を得るために日経新聞の見出し記事をWEBで読んでいた。過去問を見るとわかりますが、領域の定まりはあるもののこれといった定型的な問題がないので広く学ぶことが必要です。また、答えがない問題もあり、解答を裏付けるよう論理的に書く力とそれを支える知識を身につけていけばいいと思います。そうった意味で並行してやっていくことが大切でした。



続いて書籍の紹介へ

|ワークプレイス読本

 専攻柄、体系だった知識と最新の技術や情報を学ぶ場所という意識が高いので常識としての知識を踏まえ新しい知識を得ることに注力したほうがいい。建築から来る場合は建築で学んだ空間や歴史をもとにワークプレイスへと領域を広げる、経営やデザインに関しても同じように。その際に僕が読んだ本はこちら。こちらは大学のシラバスからテキストとして用いられているものが多く、あとは図書館で気になったものを借りました。

そして、今大学院で学び始めてから購入した本も紹介しておきます。こちらもすごく重要でしょう。

 また、仲隆介先生の執筆分を読んだり、論文を読んだりすることも時間があれば大事だと思います。オープンコラボレーション、ノマドワーカーなどキーワードを上げればきりがないですが、これらの前身の思想と将来性について結びつけて考えていくことが必要です。先に上げたように体系的に理解し、その上で新しい知識を得つつ過去問を論理的に書く力を養っていけばいいと思います。建築学科で受験を考えている人は歴史を軽めに復習してワークプレイスの学習をすることをおすすめします。

|まとめ

  • 自分が何をしたいのかを決める
  • デザイン経営工学専攻は学際的であるため広い知識を必要とする。
  • 体系的に捉え、新しい知識を入れる
  • 論理的に書く力を養う

以上です、続いてデザイン・マネージメント編をお待ちください。