ベランダ菜園をはじめて3ヶ月で導入したこと①━アクアポニックスのシステム編
2021年初夏の自粛生活の最中、僕も兼ねてから興味のあった家庭菜園に取り組みました。特に興味のあった水耕栽培と魚の飼育を掛け合わせた「アクアポニックス - Aquaponics(水産養殖 - Acuaculture × 水耕栽培 - Hydroponics の造語)」をきっかけに、今では薄膜水耕(NFT - Nutrient Film Technique)や垂直型の水耕栽培にも手を出しています。マンションのベランダに設置しています。先日はイタリアの建築系マガジンDomusでも都市型農園としてアクアポニックスが紹介されていましたね。
ホームセンターで手に入れられる資材と3Dプリンタで自作した部品を組み合わせてつくる楽しさと、元気に泳ぐ金魚の姿にいやされています。ほとんど出ることのなかった屋上テラスに毎朝・夕に出るようになり、水量のチェックや成長を確認することがずいぶんと習慣化したことを感じます。人は新しいことをはじめるとおおよそ66日で習慣化されるそうなので、6月ごろから始めたアクアポニックスから数えてそれくらい経ちますね
農業も養殖もすぐに結果が出るものではないのですが、とりあえず3ヶ月で導入したり、つくったものを順次ご紹介します。今回の記事ではアクアポニックスのシステムから。これから始めてみたいと思っている人のなにかのきっかけになれば幸いです。
目次
導入の前に
今回紹介するものは水中ポンプを使うので電気が必要です。僕の場合は屋上に電源タップがあったのでよかったですが、場所によっては電源がない場合もあるかもしれません。その場合は太陽光発電パネル+バッテリーなどを導入すると良いかもしれません[*]。
また制作には電動工具があるとよいです。特に電動ドリルとプラスチック用のホールソーまたはステップドリルがあると捗ります。加えて塩ビパイプ用のノコギリなどもあるとよいでしょう。
必要な工具
- 電動ドリル
- ドリルピット
- ホールソー(27mm, 15mm、フリーサイズ)
- パイプソー
アクアポニックスの導入
アクアポニックスの魅力はそのシステムでしょう。金魚が糞をし、それをエサにバクテリアがアンモニアを硝酸塩に分解し、それが植物の栄養となり、きれいな水がふたたび金魚の層にかえるという循環を描いています。今のところ導入したシステムの水質汚染が原因となって金魚が死んでしまうことはありません。元気よすぎて飛び跳ねて逃げ出してしまい、干からびた状態で発見された金魚は3匹いましたが…。
我が家の構成は下に金魚層、上中段に栽培層の3層構造となっています。本当は金魚の糞から栄養の量を逆算し、野菜の栽培面積などを算出すべきですが、まずは仕組みを理解したかったので適当にやっています。はじめてわかったことですが、上下の栽培層同士が近過ぎてしまうと、育てる野菜によっては成長時に棚板にぶつかったり、整備時に邪魔となるので75cm程度は開けているほうが良さそうです。
必要なもの(2.5万円くらい)
- ハイドロボール 大粒 40L 2点
- 金魚(姉金) 5匹くらい
- 底石 1点
- 水草 1袋
- 自動餌やり機
- 100均の金魚のエサ
- プラスチックケース
- 40L程度 3点
- 金魚用には高さがある方が良い
- パイプ各種
- VP-16 1m(0.5m x 2点でも可)
- VP-13 1m
- VP-40 0.5m
- VP-100 0.5m
- TSエルボ (呼び径16)2点
- VUキャップ(呼び径40) 2点
- TS径違いソケット(呼び径16x13) 2点
- TS継手ソケット(呼び径16) 2点
- TSバルブソケット(呼び径16) 2点
- Oリング 20mm
- 水中ポンプ&ホース
- エーハイム 水中ポンプ 1000(たぶん600でも水量的によいはず) 1点
- エーハイム ホース 16/22 3m 1点
- (必要に応じて)スチールラック
総額は2.5万円くらいだろうか。意外と高いのがハイドロボールで、今思うとポンプは強力なの買いすぎたかな。パイプはホームセンターで見ながら買うとイメージもつくし、買い間違えもないのでぜひ行きましょう。金魚は姉金をドンキで購入しました。ドンキで買えるんだとびっくりしました。
作り方
基本的な構成はアクアポニックス大学の動画をみながらつくりました。全部の動画を見ることをおすすめします!
簡単な手順
- 必要に応じてスチールラックの組み立て
- プラスチックケースに穴を開ける
- 裏面を見ながらソケットを取り付けられるようにフラットな面に穴を開けること
- ケースにソケット各種を取り付ける
- Oリングをつけて水漏れを防ぐことを忘れずに
- スチールラックに設置してパイプを長さに揃えて切る
- VP-100、VP-40のパイプに水が通るように穴をあける
- VP-100は全面にたくさん穴を開ける
- VP-40は下から30mm以内に16個くらい穴を開ける
- パイプをそれぞれつなげていく
- ハイドロボールを洗浄してケースに流し込む
- ハイドロボールがパイプ内に施入するとつまりの原因になるので気をつける
- 金魚層に底石を敷き水中ポンプを取り付ける
- 水を30Lくらい流し込む
- 中段の層に流し込むと金魚層の底石を巻き上げないので良い
- パイプの電源を入れて水を循環させる
- 水漏れがないか確認をする
- 金魚を袋のまま水面に浮かべ、2時間くらいしたら放流する
- 1週間くらいは野菜など設置せずにポンプを動かし続ける
- その間に野菜の種を発芽させているとよいでしょう。6月ごろであれば小松菜やサニーレタスなど、9月ごろなら春菊などの葉物がとっつきやすくておすすめ
- 野菜を育てるベッド層に本葉がで始めた野菜をセットしていく
日々の運用
大きな手入れが必要というわけではないですが基本的に1週間でやることは以下の通りです。夏場はとにかく水がすぐ蒸発していたので、朝晩きちんと水を追加していました。
- 金魚がかわいいので毎朝のぞく
- 水が蒸発するので追加
- 週1くらいで液肥を投入
- 水中ポンプが詰まったりしていないか確認
- 金魚のエサが切れていないか確認
- 金魚がかわいいので夕方にものぞく
収穫した野菜
6ー9月で育てていたのは小松菜、サニーレタス、ミニトマト、モロヘイヤの4種類ですが、うまく育ってくれたのはサニーレタスとモロヘイヤでした。サニーレタス、モロヘイヤともに複数回の収穫ができ、サラダや天ぷらなどにして食べています。ベランダで育てているので成長したタイミングで収穫し、すぐに食卓に出すことができるのも魅力ですね。
サニーレタスはアブラムシが多くわいてしまい、金魚に影響の少ない自然由来の殺虫剤を使用しました。モロヘイヤは被害はなかったので、虫嫌いな人は防虫ネットを周りにセットしたり、早めに対策をする必要があるかもしれませんね。
失敗を振り返ると、ミニトマトと小松菜は早い段階で栽培層に投入したことと、サイフォンがうまく機能するのに時間がかかってしまったので、残念ながら根腐れをしてしまいました。バクテリアが行き渡るまでは野菜を入れることないほうが良さそうです。特に3層構造にしているので、上段中段に行き渡るまで1ヶ月くらいかかったのではないかと思います。今、改めて小松菜を投入していますが、順調に育ちつつあります。季節がすぎてしまうまでに収穫できることを期待しています。
まとめ
アクアポニックスは導入にコストや手間がかかりますが、その後は水やエサの補充くらいなものです。パイプが詰まってしまったり、小さなエラーを改善しながらできたことはとてもいい学びになりました。そしてなによりも野菜を育てて金魚を飼育することが、自粛生活の最中では癒し効果がむちゃくちゃ高いです。朝の健康的な習慣がついたこと思わぬメリットでした。始めた頃はオートメーション化することも考えたのですが、ベランダ菜園程度のスケールならその手間の方がコストになるので今のところは考えていません。むしろオフグリッド化に取り組みたいなと思っています。
次回はNFTと垂直型水耕栽培の導入と3Dプリントした部品について紹介しようと思います。
参考
- [*] DIYで手軽に作れる太陽光発電 - https://note.com/jun_soutei/n/n2d2fd4cc2136
- めちゃくちゃお世話になってる アクポニ『さかな畑』アクアポニクスの世界へようこそ
- このツイートは心強い
2020年10月に発表された論文。
— 濱田健吾 🐟アクアポニックス・デザイナー🌱 (@aquaponic_s) September 6, 2021
わずか32㎡の家庭用アクアポニックス農場で、年間352kgの野菜と62kgの魚、ハーブ、果物が生産された。4人家族の年間必要量の129%の野菜と155%の魚に相当する。https://t.co/91goN54Ily
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