Googleフォームに申込数を表示し、一定数以上の申し込みはキャンセル待ちとして表示する

コロナ以後、オンラインイベントが増え、さまざまなプラットフォームを利用したお申込み、またはイベント参加者の管理方法を試された方も多いのではないでしょうか。

支払いなどのシステムを利用しない単純な申込みであれば、Googleフォームを利用が簡単です。シンプルさゆえ、微妙なところに手が届かないこともあり、以前紹介した「上限に達したらフォームを締め切る」ようなものはプログラムを書いて対応する必要があります。

今回は「現在時点での申込数の表示」と「締め切り後はキャンセル待ちのウェイティングリスト」化するようなGoogleAppScript(GAS)を紹介します。

1. フォームを作成する

Googleドライブから「フォームを作成する」を選び、必要な項目を用意しましょう。
イベント申込みフォームなので、「お名前」「ご所属」「イベントを知ったきっかけ」などとしてみましょう。
右上の設定から「メールアドレスを収集する」も選んでおくと良いでしょう。
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2. スクリプトを作成する

2-1. スクリプトを作成する

右上の「…(3点リーダー)」をクリックして、「スクリプトの作成」を開きましょう。
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画面にある「Function …」をすべて消去し、以下のスクリプトをコピペします。

function endFormCheck() {
var LIMIT_COUNT = 5; //イベントの参加定員数
 
var form = FormApp.getActiveForm();
 
//フォームの回答行が参加定員数以上だったら、回答受付をキャンセル待ちとする
if (form.getResponses().length >= LIMIT_COUNT) {
//キャンセル待ち数は現在の回答数-参加定員数
var WaitingSeat = form.getResponses().length - LIMIT_COUNT;//フォームの説明文に【キャンセル待ちは〇席です】と表示する
var description = 'イベントの定員数上限に達しました。現在のキャンセル待ち数は'+ WaitingSeat + '席です。\n';
form.setDescription(description); 
}
//参加定員数未満だったら、フォームの説明文に残席数を表示する
else{
//残席数は最大収容人数-現在の回答数
var application = LIMIT_COUNT -form.getResponses().length;//フォームの説明文に【残り〇席です】と表示する
var description = 'イベントの申込受付は残り'+ application + '席です。\n';
form.setDescription(description); 
}
}

左上にあるスクリプトの名称を「formandwating」など適当につけて保存しておきます。

2-2. スクリプトの発動条件を指定する

左のメニューバーより「時計のアイコン」をクリックして、画面右下「トリガーの追加」をクリックし、イベントの種類を選択から「フォームの送信時」としましょう。
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Googleドライブへのアクセス許可が求められるので、「許可」をクリックしましょう。

これでフォームの申し込みが発生するたびに、申し込み数が上限に達していないか確認し、その差を残席またはキャンセル待ち数として表示することができます。

ちょっとした配慮ですが申込者の安心につながるかもしれませんね。


なお、サンプルを試した後に残席数の表示の数を直したい時は、フォームのデータを消去し、説明欄のテキストを上限数になるよう、手動で戻しましょう。

参考

ベランダ菜園をはじめて3ヶ月で導入したこと①━アクアポニックスのシステム編

2021年初夏の自粛生活の最中、僕も兼ねてから興味のあった家庭菜園に取り組みました。特に興味のあった水耕栽培と魚の飼育を掛け合わせた「アクアポニックス - Aquaponics(水産養殖 - Acuaculture × 水耕栽培 - Hydroponics の造語)」をきっかけに、今では薄膜水耕(NFT - Nutrient Film Technique)や垂直型の水耕栽培にも手を出しています。マンションのベランダに設置しています。先日はイタリアの建築系マガジンDomusでも都市型農園としてアクアポニックスが紹介されていましたね。

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ホームセンターで手に入れられる資材と3Dプリンタで自作した部品を組み合わせてつくる楽しさと、元気に泳ぐ金魚の姿にいやされています。ほとんど出ることのなかった屋上テラスに毎朝・夕に出るようになり、水量のチェックや成長を確認することがずいぶんと習慣化したことを感じます。人は新しいことをはじめるとおおよそ66日で習慣化されるそうなので、6月ごろから始めたアクアポニックスから数えてそれくらい経ちますね

農業も養殖もすぐに結果が出るものではないのですが、とりあえず3ヶ月で導入したり、つくったものを順次ご紹介します。今回の記事ではアクアポニックスのシステムから。これから始めてみたいと思っている人のなにかのきっかけになれば幸いです。

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目次

導入の前に

今回紹介するものは水中ポンプを使うので電気が必要です。僕の場合は屋上に電源タップがあったのでよかったですが、場所によっては電源がない場合もあるかもしれません。その場合は太陽光発電パネル+バッテリーなどを導入すると良いかもしれません[*]。

また制作には電動工具があるとよいです。特に電動ドリルとプラスチック用のホールソーまたはステップドリルがあると捗ります。加えて塩ビパイプ用のノコギリなどもあるとよいでしょう。

必要な工具

  • 電動ドリル
  • ドリルピット
  • ホールソー(27mm, 15mm、フリーサイズ)
  • パイプソー

アクアポニックスの導入

アクアポニックスの魅力はそのシステムでしょう。金魚が糞をし、それをエサにバクテリアアンモニアを硝酸塩に分解し、それが植物の栄養となり、きれいな水がふたたび金魚の層にかえるという循環を描いています。今のところ導入したシステムの水質汚染が原因となって金魚が死んでしまうことはありません。元気よすぎて飛び跳ねて逃げ出してしまい、干からびた状態で発見された金魚は3匹いましたが…。

我が家の構成は下に金魚層、上中段に栽培層の3層構造となっています。本当は金魚の糞から栄養の量を逆算し、野菜の栽培面積などを算出すべきですが、まずは仕組みを理解したかったので適当にやっています。はじめてわかったことですが、上下の栽培層同士が近過ぎてしまうと、育てる野菜によっては成長時に棚板にぶつかったり、整備時に邪魔となるので75cm程度は開けているほうが良さそうです。

必要なもの(2.5万円くらい)

  • ハイドロボール 大粒 40L 2点
  • 金魚(姉金) 5匹くらい
  • 底石 1点
  • 水草 1袋
  • 自動餌やり機
  • 100均の金魚のエサ
  • プラスチックケース
  • 40L程度 3点
    • 金魚用には高さがある方が良い
  • パイプ各種
    1. VP-16 1m(0.5m x 2点でも可)
    2. VP-13 1m
    3. VP-40 0.5m
    4. VP-100 0.5m
    5. TSエルボ (呼び径16)2点
    6. VUキャップ(呼び径40) 2点
    7. TS径違いソケット(呼び径16x13) 2点
    8. TS継手ソケット(呼び径16) 2点
    9. TSバルブソケット(呼び径16) 2点
  • Oリング 20mm
  • 水中ポンプ&ホース
  • (必要に応じて)スチールラック

総額は2.5万円くらいだろうか。意外と高いのがハイドロボールで、今思うとポンプは強力なの買いすぎたかな。パイプはホームセンターで見ながら買うとイメージもつくし、買い間違えもないのでぜひ行きましょう。金魚は姉金をドンキで購入しました。ドンキで買えるんだとびっくりしました。

作り方

基本的な構成はアクアポニックス大学の動画をみながらつくりました。全部の動画を見ることをおすすめします!




簡単な手順
  1. 必要に応じてスチールラックの組み立て
  2. プラスチックケースに穴を開ける
    • 裏面を見ながらソケットを取り付けられるようにフラットな面に穴を開けること
  3. ケースにソケット各種を取り付ける
    • Oリングをつけて水漏れを防ぐことを忘れずに
  4. スチールラックに設置してパイプを長さに揃えて切る
  5. VP-100、VP-40のパイプに水が通るように穴をあける
    • VP-100は全面にたくさん穴を開ける
    • VP-40は下から30mm以内に16個くらい穴を開ける
  6. パイプをそれぞれつなげていく
  7. ハイドロボールを洗浄してケースに流し込む
    • ハイドロボールがパイプ内に施入するとつまりの原因になるので気をつける
  8. 金魚層に底石を敷き水中ポンプを取り付ける
  9. 水を30Lくらい流し込む
    • 中段の層に流し込むと金魚層の底石を巻き上げないので良い
  10. パイプの電源を入れて水を循環させる
    • 水漏れがないか確認をする
  11. 金魚を袋のまま水面に浮かべ、2時間くらいしたら放流する
  12. 1週間くらいは野菜など設置せずにポンプを動かし続ける
    • その間に野菜の種を発芽させているとよいでしょう。6月ごろであれば小松菜やサニーレタスなど、9月ごろなら春菊などの葉物がとっつきやすくておすすめ
  13. 野菜を育てるベッド層に本葉がで始めた野菜をセットしていく

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日々の運用

大きな手入れが必要というわけではないですが基本的に1週間でやることは以下の通りです。夏場はとにかく水がすぐ蒸発していたので、朝晩きちんと水を追加していました。

  • 金魚がかわいいので毎朝のぞく
  • 水が蒸発するので追加
  • 週1くらいで液肥を投入
  • 水中ポンプが詰まったりしていないか確認
  • 金魚のエサが切れていないか確認
  • 金魚がかわいいので夕方にものぞく

収穫した野菜

6ー9月で育てていたのは小松菜、サニーレタス、ミニトマト、モロヘイヤの4種類ですが、うまく育ってくれたのはサニーレタスとモロヘイヤでした。サニーレタス、モロヘイヤともに複数回の収穫ができ、サラダや天ぷらなどにして食べています。ベランダで育てているので成長したタイミングで収穫し、すぐに食卓に出すことができるのも魅力ですね。

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サニーレタスはアブラムシが多くわいてしまい、金魚に影響の少ない自然由来の殺虫剤を使用しました。モロヘイヤは被害はなかったので、虫嫌いな人は防虫ネットを周りにセットしたり、早めに対策をする必要があるかもしれませんね。

失敗を振り返ると、ミニトマトと小松菜は早い段階で栽培層に投入したことと、サイフォンがうまく機能するのに時間がかかってしまったので、残念ながら根腐れをしてしまいました。バクテリアが行き渡るまでは野菜を入れることないほうが良さそうです。特に3層構造にしているので、上段中段に行き渡るまで1ヶ月くらいかかったのではないかと思います。今、改めて小松菜を投入していますが、順調に育ちつつあります。季節がすぎてしまうまでに収穫できることを期待しています。

まとめ

アクアポニックスは導入にコストや手間がかかりますが、その後は水やエサの補充くらいなものです。パイプが詰まってしまったり、小さなエラーを改善しながらできたことはとてもいい学びになりました。そしてなによりも野菜を育てて金魚を飼育することが、自粛生活の最中では癒し効果がむちゃくちゃ高いです。朝の健康的な習慣がついたこと思わぬメリットでした。始めた頃はオートメーション化することも考えたのですが、ベランダ菜園程度のスケールならその手間の方がコストになるので今のところは考えていません。むしろオフグリッド化に取り組みたいなと思っています。
次回はNFTと垂直型水耕栽培の導入と3Dプリントした部品について紹介しようと思います。

参考

関連記事
pnch.hatenablog.com

都市計画に関連する法案と事業から「ビジョン」についてのメモ

以下、自分の中での整理に向けて、Twで下書き書いていたので細切れ感がありますが、忘れないように。

 

都市計画法(1968)では将来よりも都市機能の整備が前面に出ていて、民都法(1984)で民間主導のプロジェクトが生まれ、都市計画法改定(1992)では住民参加による都市マスタープランがおこり、都市政策ビジョン(仮称)(1997)では成熟社会の都市間連携がテーマになるも計画主義な様子。

 

転換点は、都市再生措置特別法(2002)や景観法(2004)で地域の主体性がより求められるようになったことか。その上で、住生活基本法(2006)によって良好な居住環境の形成のために地域文化や環境の調和が求められるようになり、民間主体のエリアマネジメント、都市再生整備推進法人へとつながる。

 

立地適正化計画制度を踏まえた都市再生特別措置法改正(2014)、都市利便増進協定(2011)や民間まちづくり活動促進事業の普及啓発事業(2014)によって、まちづくり会社NPOなどによるワークショップや社会実験が広がり、住民主体のにぎわいづくりや将来像の共有に向けた実践がおこなわれる。

 

コロナ禍での経済活動も後押しした公共空間の利活用を踏まえて、官民連携まちなか再生推進事業(2021)では、エリアプラットフォームの構築やエリアの将来像を明確にした、「未来ビジョンの策定」が明確に位置付けられている。
>ビジュアルによる将来像の共有、将来像の実現に向けたロードマップなど

 

以上を振り返ると、「成長する都市の整備を背景としたトップダウンによる都市計画→成熟を迎えた都市の「地域らしさ」を保全する主体者に対する参加制度→縮退する都市の将来像づくりと持続可能な都市経営に向けた官民連携」となっているようようだ。

 

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「将来像」から「未来ビジョン」へと呼称が変わるのは、目標が固定化された「像」の達成という管理視点から、観察者それぞれによる抽象的な「画」の描写という創造的で多様な視点へと転換する欲望の現れだろうか。未来ビジョンで多様性を内包しようとしているのは分かるが、どのように起こりうる未来を想像するのか、社会福祉からこぼれる人をどこまで守るのかはよくわからない。きれいな絵空事とならないような仕組みが必要だろうということはなんとなくイメージが掴めた。

 

 

参考:

国土交通省都市政策のこれまでの歩み https://www.mlit.go.jp/common/000017310.pdf

第一回 新たな都市マネジメント小委員会 配布資料 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/toshi01_sg_000119.html

国土交通省、エリアマネジメント推進マニュアル https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000068.html

新たな担い手による地域管理のあり方検討委員会、新たな担い手による地域管理のあり方について(2007)https://www.mlit.go.jp/common/001206703.pdf

国土交通省、「官民連携まちなか再生推進事業」について(2021)https://www.mlit.go.jp/toshi/file/system/210630_%E6%A6%82%E8%A6%81%E8%AA%AC%E6%98%8E%E8%B3%87%E6%96%99.pdf

 

 

イシュー型の卒業設計展示または建設プロジェクト はあり得るのか

2011年に開催されたKyoto x Diploma '11の実行委員会に携わり、講評者ごとの評価軸を明確にした議論のあり方を検討してからはや10年。逆に審査員としての参加を打診される立場になりました。非常にうれしく二つ返事で快諾をしたかったのですが、考えるところがありすぐに回答することができませんでした。この10年間で社会的な状況や建築に携わる環境が変わり「大量の作品から短時間で」選ぶ現在の建築コンペ・プロポーザルや卒業設計展示について、短時間で理解できる一面的な情報に偏った議論にならざるを得ないということから批判的な立場をとっています。それは企業や行政などとの業務、あるいはまちづくりのなかで定性的な調査や未来志向のビジョンをデザインリサーチャーという職種も大きく影響しています。フィールドワークやインタビュー、ワークショップを通じた異なる利害関係者らとの対話などを通じてデザインプロセスへの介入し、よりよい未来の創造に向けた共創が主たるフィールドであることから、昨今の卒業制作展や建築コンペ・プロポーザルは異なる専門家の参加があるとはいえ、真逆のプロセスをとっているように見えるからです。

 

多様な評価の軸というキーワードを掲げておこなったDxK'11も同様の問題意識がありましたが、当時は立場や専門性の異なる建築家や研究者を講評者や翌日に開催した講演会の登壇者としてお招きするにとどまっていました。それは社会に出ていないことや、現在のように建築を通じた社会イノベーションの事例を知らない学生で運営されていたから、想像の限界がそこにあったのだと思います。しかし、現在はどうでしょうか。SDGsを筆頭にソーシャルサスティナビリティと建築の関係はより強くなり、まちづくりといった地域ビジョンの策定やJVが必須となる建築プロポーザルなど、社会課題に対して集団の創造力が必要とされ場面が増えてきているように感じます。学生とはいえ研究室のプロジェクトや見聞きするニュースからもその変化を感じられるのではないでしょうか。さらに日本独自の課題である超少子高齢化社会かつ労働生産人口の縮小を背景とした、ITやロボティクスなどデジタル領域などを中心に「建築イノベーション」の気運や、地球規模でのエネルギーの枯渇や都心部への人口集中を受け社会福祉など新たな公共を巡る議論への注目が高まっていることも後押しをしているように思います。

 

昨夜、@atu4 さんと @chaki_1680 さんとともに、twitterのスペースでおこなった「イシュー型の卒制/建設プロジェクトについて」をめぐる議論では、こうした背景をもとに離散型の卒業設計展の限界、今だ男性優位な環境が続く建築・建設業界への批判、そして建設プロジェクトにおけるチームビルディングなどに話題が広がりました。短時間での議論や短期間での検討は、共通の理解を得やすい文脈に従った議論になってしまう。すなわち、業務を担う男性とその世代の価値観に収束してしまっているということが課題に上がったのです。他者への想像力を働かす機会が失われた環境では、その文脈に則った評価がなされてしまうでしょう。すでに「当たり前」だとなっている価値観に従うだけでは、ニュー・ノーマルを構築する気概は失われてしまっています。

 

多様性を孕むデザインプロセスとして、ベストライブラリー2019で受賞をしたフィンランドに建設されたヘルシンキ中央図書館『Oodi』を紹介しました。2008年におこなわれた大規模なアンケート調査、施設スタッフらによるグループワーク、2012年以後には基本コンセプトをもとに各専門家や市民とのワークショップなどをおこない、市民の要望と図書館に求められる役割を整理しながら、国家や行政にとってどのような価値を生み出す場なのかを検討を進めたとプロジェクトを振り返っています[*1]。そこではファブスペースやプログラミング教育の提供など、スタートアップ創出を目指すフィンランドの本気度が見て取れます。一部、北極圏に位置するフィンランドでは、乏しい資源のなかで生き残るための重要な国家戦略のひとつとして、頭脳労働によって価値を生み出す「デザインやデジタル産業」などが位置付けられています[*2]。僕が留学していた当時も、教育や福祉に注力しているのは530万人程度の人口では国そのものが失われてしまうかもしれないという、強い危機意識があったからだったと記憶しています。国家レベルでのイシューをもとに公共建築のデザインプロセスを刷新し、国民の創造的な活動を支援する試みは、時間がかかりすぎているという批判もありますが先進的な事例として今後も評価されるでしょう。

 

こうした社会課題の解決を目的としたデザインのあり方は、2000年代のソーシャルデザインなどで台頭し始め、それ以後はひとつの組織や国家の取り組みだけでは解決し得ない気候変動や移民問題など地球規模の課題を前に議論が本格化しているようです。建築領域では 『Future Architecture Platform』や『Open Architecture Collaborative – Social Design for Social Justice』、デザイン領域では『WHAT DESIGN CAN DO | TOKYO』やRSAがおこなう『RSA Student Design Awards 20-21』などの取り組みがあります。日本国内でも兼ねてから社会課題とデザインによる解決を目指すissue+designや、最近ではオランダの活動に共感した日本メンバーが新たにWHAT DESIGN CAN DO | TOKYOを始動し、NOVUS FUTURE DESIGN AWARD(ノウスフューチャーデザインアワード)WHAT DESIGN CAN DO | TOKYOなど、特定の社会課題をもとにしたアワード設立などの新しい試みが始まっています。これまでの作品オリエンテッドな卒業設計展だけでなく、社会課題をもとにした卒業設計があってもよいのではないかというのが僕の提案です。イシューの理解として専門家を招いた講演会や報告書のブリーフィングを共通におこなうことで、課題解決の手法を軸とした評価のあり方をともに議論することができるだろうと期待しています。

 

安宅和人さんの『イシューからはじめよ』に提示されていた[課題の質×解決の質]ダイアグラムをもとに考えると、イシュー型は課題の質を最低限担保し、その上で解の質をもとにその案を評価することができるのではないかと考えています。そこにさまざまな専門家による批評も加わり、今までにない解決法の有り様を議論できる環境が生まれると僕は信じたいです。このプロセスを過激に進めるのが『テラフォーミング』を2020-2022年の教育プログラムに掲げるStrelka Instituteのような教育組織でしょう。彼らは100名規模の専門家を招き、地球外の資源を頼りに違う惑星での生活を支える建築を考えてみようとするのではなく、「地球がこれまでのように(またはこれまでとは異なるあり方で)生命の生存可能な惑星であり続けるために地球をテラフォーミング[*2]」するならば、どのような建築や都市があり得るのか思考実験する非常に挑戦的な試みを始めています。こうしたリサーチをもとに課題を理解し、可能性を引き出した建築のデザインやプロジェクトを立ち上げてみる「イシュー型」の建設プロジェクトは、不確実な時代だからこそ重要な取り組みであると私は彼らの実践を評価したいと思います。

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先鋭的な課題設定や専門家を交えた調査や議論は、目的や課題意識を共有する個人や組織のコンソーシアムとプロジェクト・ディレクターをしっかりと見極めることが重要だろうと考えています。ラボ・ドリブンなアプローチに思えるかもしれませんが、参加のあり方と思索する目的を位置づけなおすことで、社会実装に向けた展開も期待できるのではないでしょうか。まだその可能性を勝手に考え始めているだけなので、引き続き議論を続けていけたらと思います。まずは、テーマ設定と専門家との講演、数十名でのオンライン展覧会や講評会といった活動を小さく勝手に始められないかなと夢想しています。

 

 

21/08/18 22:51 追記

@atsu4さんが感想をツリーで投稿されていたので投稿を埋め込みました。

 

 

[*1] 詳しくはOodiのMediumにある記事「Oodi as textbook case of service design - Oodi」をご覧ください

[*2] (PDF)フィンランド経済の概要 - 在フィンランド日本国大使館経済班 https://www.fi.emb-japan.go.jp/files/100093583.pdf

[*3] 2020年度に検討されたプロジェクトは映像作品として提示されている。新しい法律や制度設計やデザイン手法も含めて提示されているのが興味深い The Terraforming 2021 Program — Research & Publications

食と持続可能性を家庭菜園から考える

ずっと興味のあった家庭菜園を今年の5月から始めています。まだほとんどまともに収穫はできていないけれど、日々成長するサニーレタスと向き合いながら天候について考えることもしばしば。本当にカンカン照りの太陽はあっという間に水を蒸発させるし、台風はあっという間に葉物をダメにしてしまう。

 

僕が始めたのはアクアポニックスと呼ばれる農法。簡単に説明をすると魚の飼育と水耕栽培を混ぜ合わせたようなものです。魚のフンが肥料となって野菜が育ち、土壌が濾過した水を水槽に返していく。環境循環型の農法として、ハワイなど世界中でその実践と研究が進んでいるそうです。僕はというと小さな水槽と数匹の金魚、そして栽培用のケースが2つという、とても小さなスペースを畑にしています。

 

食の生産にはもともと興味があったのですが、さらに興味を持つようになったのはエネルギー枯渇の問題に触れたから。すでに生態系が供給できる資源量と私たちが生活の中で消費する資源量は圧倒的に需要が多く、2021時点では日本人がこれまでの生活をおこなうならば日本7.8個分の資源がないとままならないとWWFは発表しています[*1]。スーパーで買っている農作物も生産流通の段階でさまざまなエネルギーを使用して、私たちの食卓に届いています。家庭からのエネルギー消費が15%程度とされるなかで、小さなアクションをまずは起こしてみようと思ったのです。

 

そこで始めたのが垂直栽培式のアクアポニックスです。面積は45×60cm程度で高さはスチールラック200cmほどです。狭い水槽スペースですが元気に泳ぐ金魚がかわいくて、毎日朝起きるとベランダに出るようになりました。ようやく栽培エリアにバクテリアも定着してきたのか、サニーレタスとモロヘイヤが元気に育ちつつあります。国土も住宅面積も狭い日本ではどんな取り組みが可能なのか、ベランダ菜園で自ら考えてみたいと思います。

 

 

[*1] https://www.wwf.or.jp/activities/opinion/4687.html